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SS:ぼくらの終わらない夏
(2004/7/29作)


 ぼくは今年の夏もおばあちゃんのいなかへあそびにいきました。
 おばあちゃんのいなかは山の中にあって、ちょっとあるけば川があります。
 ぼくは、きんじょの子らとまい日いっしょに川へ行ってあそびました。

 ある日のことです。
 いつものようにみんなと川に行ってあそんでいて、ふと見ると川のほとりに一人の女の子が立っていました。
 ぼくらとおなじくらいの年の子で、うすいワンピースにサンダルといった夏らしいかっこうをしているのに、はだがものすごく白くて、丸い大きな目でじっとぼくらのことを見つめていました。

 ぼくはなんとなく話しかけないといけないような気持ちになりましたが、なかなか言葉がでてきませんでした。だから、先に話しかけてきたのは女の子のほうでした。
 「…何してるの?」
 ニコリともせず、女の子は言いました。
 かわいいけど、表情がかわらない。まるで人形のようです。

 「何って…遊んでるんだよ」
 ぼくは女の子にそう答えました。言ってから、われながらヘンな答えだなと思いました。
 「みんな、川で、遊んでるの?」
 「うん。そうだよ」

 女の子はふしぎそうな目でぼくらを見ていました。
 見つめているとすいこまれそうな目でした。
 「いっしょにあそぶ?」
 ぼくは、ちょっとゆうきを出してさそってみました。ドキドキしました。
 女の子はちょっと考えたあと、コクンと小さくうなずきました。なんだかうれしかったです。


 それから、ぼくらは夕方までみんなでいっしょにあそびました。
 ぼくらは川の真ん中まで泳いでいったり、深いところにもぐったり、魚を追いかけたりしました。
 女の子は水着を持っていなかったので、川に足をひたしてすわっているだけでした。
 だけど、魚を見つけたりみんなと水をかけあいっこしたりして楽しそうにしていました。
 女の子が笑うたび、ぼくはうれしくなりました。
 もしかしたらぼくはその子のことが好きになったのかもしれません。

 そのうち日がくれて、だんだんくらくなってきたので、ぼくらは家に帰ることにしました。
 ぼくは女の子とまた会いたかったので、「明日もいっしょにあそべる?」とききました。
 すると、女の子はちょっとかんがえたあと、さびしそうなかおをして首をよこにふりました。
 「なんで?」
 がっかりして、ぼくはそうききました。
 女の子はまたちょっとかんがえたあと、言いました。

 「…あのね。ゆうれいって信じる?」

 とつぜんそんなこと言われて、ぼくらはみんなびっくりしました。
 女の子はそんなぼくらを見ながら、はなしをつづけました。

 「ゆうれいはね、死ぬまえにやりのこしたことがある人や死んだことに気づいていない人がなるの」
 「やりのこしたことがある人は、ゆうれいになってそれをやりとげることができたら成仏できるの」
 「死んだことに気づいていない人はね、死んだことに気づいたら成仏できるの」
 「成仏できないでいるのは、いくら楽しくても悲しいことなの」
 「私も今日とっても楽しかった。でもやっぱり悲しいことだから、終わりにしなくちゃいけないの」

 女の子は、うつむきながらちょっとずつそう言いました。
 ぼくらはそんな彼女のことを見ながら、何も言えませんでした。
 だけど、ただなんとなく、ああそうだったんだと思いました。
 きっと、女の子に会ったときから、ぼんやり感じていたんだと思います。

 「私、忘れない。みんなとこうやってあそんだこと。
  ずっと、ずっとおぼえてる。おぼえてるから。だから…」

 ぼくらはその時、もうかくごをきめていたと思います。
 女の子から、おわかれのことばが出るのを。
 女の子は、下を向いたまま、いっしょうけんめい涙をこらえて、それでも、さいごはわらって、ぼくらに言いました。

 「ばいばい」

 その時、ずっと夏をくりかえしていたぼくらは消えました。