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ショートコント:桃太郎?
(2009/5/21作)


桃「覚悟しろ! 鬼ども!」
鬼「なんだ貴様は!」
桃「僕は桃から生まれた桃太郎。お前たちを退治しに来た!」
鬼「小癪な小僧だ。捻り潰してくれるわ!」
桃「よーし、行くぞみんな!」

チワワ「ワン!」
ピグミーマーモセット「キー!」
スズメ「チュン!」

鬼「…………」
桃「どうした! さぁ来い!」
鬼「…いや、あの…ええと」
「さぁ! さぁ!」
鬼「なんか必死に現実から目を逸らしてない?」
桃「何のことだ! 僕は知らないぞああ知らないとも!」
鬼「そもそも一匹、明らかに定石から外れたヤツいるよね?」
「キジのことは言うな!」
鬼「わかってんじゃん」
桃「仕方なかったんだ! 人材不足というやつだ!」
鬼「人じゃないけどな」
桃「…最初はいたんだよ。まともな犬猿キジが」
鬼「そうなのか」
桃「ああ。柴犬、日本猿、日本キジだった」
鬼「それがどうして…こんなことに」
桃「…出発早々、きび団子を川に落としちゃったんだよね」
鬼「えええー」
桃「おじいさんに渡された日本一の旗に足が絡まってさ」
鬼「それはまた間抜けな話で」
桃「…だからこんな旗要らないって言ったのに…恥ずかしいし…」
鬼「そこで愚痴られても困るんですけど」
桃「だから報酬は事後決済ってことで交渉したんだけど」
鬼「決裂したわけだ。柴犬、日本猿、日本キジとは」
桃「うん」
鬼「だからって…何もこんな小さい種類ばっかり」
桃「僕だって好きで選んだわけじゃないやい!」
鬼「涙ぐむなよ。野良犬とかで適当なのいなかったのか?」
桃「野良犬怖いよ! 僕のこと見て吠えてくるもん!」
鬼「怖いからこそ鬼退治に役立つんじゃないのか。俺が言うのも何だが」
桃「いいんだよもう。僕が頑張れば済む話なんだから」
鬼「ほう。いい度胸だ。一人で俺様に楯突こうというのか」
桃「ああ、行くぞ! 覚悟しろ!」
鬼「…………」
桃「どうした! お前も構えろ!」
鬼「…いや…それ、何?」
桃「刀だ!」
鬼「旗だよね? 日本一って書かれた」
「刀だと思ってくれ!」
鬼「無理だよ。え、本物の刀は?」
桃「…不幸な…事故だったんだ…」
鬼「なんかあったのか」
桃「…鬼ヶ島に渡る時、海の底に落としちゃったんだよね」
鬼「ええー」
桃「日本一の旗が足に絡まって溺れそうになって…」
鬼「全部その旗が台無しにしてる感じだな…」
桃「…だから…ウッ、旗なんか要らないって…ひぐっ」
鬼「泣くなよ。泣きたい気持ちもわかるけど」
桃「仕方ないから…とりあえず手持ちで一番刀に近いものを…」
鬼「一番近くてその旗だったわけね」
桃「というわけで勝負だ、鬼! 日本一の旗の錆にしてくれる!」
鬼「いや、旗で錆は無理だろ」

   :

桃「ただいまです、おじいさんおばあさん!」
じ 「おお、おかえり」
ば「よく帰ったねぇ」
桃「はい。いろいろありましたが…なんとか鬼を退治できました!」
じ 「そうかいそうかい。無事で良かったよ」
ば「ところで…その後ろの台車に引いているのはなんだい…?」
桃「鬼から奪った宝物です!」
じ 「…………」
ば「…………」
桃「…すみません。海で取ってきたワカメです。台車いっぱいのワカメです」
じ 「そ、そうかい」
ば「ご、ご苦労だったねぇ」
桃「本当すみません。いや、本当に宝物を奪い取ってはきたんですけど…」
じ 「何かあったのかい」
桃「鬼ヶ島から運び出した船に日本一の旗が絡まって転覆してしまって…」
ば「あちゃあ…」
桃「せめて何かお土産になりそうなものをと探した結果が…ワカメです」
じ 「う、うん…まぁワカメは美味いしの」
ば「そ、そうですよ。桃太郎が無事帰ってきただけでも喜ばしいことです」
じ 「まったくじゃわい」
桃「すみません。ありがとうございます」
じ 「しかし…やはりその日本一の旗は良くなかったかのう」
桃「え? 何か心当たりが?」
ば「実は私が昔川へ洗濯に行った時のことだけどねぇ」
桃「はい」
ば「川上から大きな桃がどんぶらこと流れてきたんだよ」
桃「あ。それって僕が生まれた桃のことですよね」
ぱ「いやー。拾おうとしたらその日本一の旗が足に絡んでねぇ」
桃「え」
ぱ「結局拾うのに失敗して、そのまま桃は流れていってしまったんだよ」
桃「ええー!? あ、あの。じゃ僕は…?」
「山に捨てられてたのをわしが拾った」
桃「うそん!? え、僕ただの捨て子ですか…?」
じ 「そうじゃよ」
ば「桃を取り損ねたのが悔しかったんで、桃太郎って名前にしたんじゃ」
桃「えええー」

鬼「あの。犬猿キジどころか桃太郎ですらないのにやられたんでしょうか、俺」