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ショートコント:ドラクエ3 After
(2005/10/18作)



 勇者たちがギアガの大穴に消えてから数百年――悠久の時を経て、魔王バラモスが蘇った。
 バラモスはモンスターたちを全世界に派遣し、着々と世界征服を企むのであった…


「バラモス様、ただいま戻りました」
「大がらすか。待っておったぞ。して、首尾の方はどうだ」
「はぁ、それが…」
「どうした。何かトラブルでも起こったのか」
「えぇと、まずナジミの塔の件ですが」
「塔を破壊して盗賊の鍵を入手できぬようにし、勇者をアリアハンに閉じ込める作戦だったな」
「そのー、それがですね、もうあの地に塔はないようでして…」
「なんだと。ではどうやって盗賊の鍵を入手するのだ」
「それが、そもそもその盗賊の鍵というのも不要になっているようなんです」
「ではみんな最初から魔法の鍵や最後の鍵を使っているということか?」
「いえ、自宅の鍵とか自転車の鍵とかを使っています」
「そんな名前の鍵は聞いたことがない」
「他にも最近は音声認識とか顔認証などが研究されているようです」
「そ、そうか…よくわからんが文明が進んでしまったのだな。仕方ない。諦めよう」
「えー、続いてランシールにある地球のへそを埋めてしまえという指令ですが」
「なんだ、今度は地球のへそがなくなったとでも言うのか」
「えーと、陸地自体ありませんでした
「えー!」
「どうしましょう」
「…いや、まぁ、ないならないでいいんじゃない?」
「了解しました。では次に行きます」
「う、うむ。行ってくれ」
「ジパングに派遣したやまたのおろちですが」
「うむ。卑弥呼に化けてジパングを乗っ取るという指令だったな」
「先の衆議院総選挙で自民党に太刀打ちできず落選いたしました」
「いやいやいや! え、何、なんで選挙で戦ってんの!?」
「現在のジパングは戦争を放棄しておりますので」
「いや、別に向こうの都合に合わせることもないじゃん」
「下手にジパングと戦うのは得策ではないと」
「そ、そう…で、やまたのおろちは今どうしてるの?」
「それが、隣近所の国からチクチク突き上げを食らう首相になんてなりたくないと言い出しまして」
「はぁ」
「現在はカルト宗教の教祖を務めています。なんでもこれが一番楽で儲かるからだそうで」
「…ま、まぁ指令としては強ち間違いでもないかな」
「続きまして、サマンオサに派遣したボストロールの件ですが」
「うむ。うまくサマンオサ王に化けることが出来たか?」
「ええと、とりあえずルーラ大統領に化けてみました」
「なんかどっかの町に飛んでいきそうな名前だな。ふむ、ということはそちらは成功か」
「はい。年金、税制改革などで、安定した政権基盤を確立しているようです」
「えー。なんで普通に順調な政治してんのー」
「サマンオサ…現在のブラジルは連邦共和制ですので」
「じゃああれは。レイアムランド制圧の件。ラーミアの復活を阻止できれば…」
「ええと、残念ながら…」
「えっ、何、ダメだったの?」
「いえ、ラーミアなんてなくても、飛行機やヘリコプターで自由に空を飛べる時代なんです」
「ラーミア意味ないじゃん!」
「そうなります。それから、申し上げにくいことなのですが…」
「な、なに? まだなんかあんの?」
「はぁ。スーの村がこのバラモス城を攻撃しようとしているという情報が」
「ハッ。馬鹿な人間どもだ。スーの村ごときが我々に叶うとでも」
「それが…昔スーの村があった地域は現在アメリカという世界最大規模の国家になっておりまして」
「え、うそ。あのちっぽけなスーの村が?」
「はい。エジンベアなどから移民してきた人間が多いようですけど」
「ええー。いやいや、ありえない」
「本当ですってば。こないだもアッサラームあたりに軍隊を派遣して完全に制圧したそうです」
「まじで?」
「まじです」
「ま、まぁでもあれだ、人間がどんなに抵抗しようが、我々モンスターの敵では…」
「ええと…それが、もう既にかなりの数が人間の手にかかってしまい…」
「な、なにっ!? 殺されたのか!?」
「いえ、希少動物として保護されています」
「ええええー」
「スライムに至ってはペットとして広く普及している模様」
「ぬ、ぬう…なんてことだ。まぁスライムではいてもあんまり戦力にならんけど」
「いかが致しましょう」
「ふん、人間など恐るるに足らぬ。やつらが攻めてくれば、私のイオナズンで黒焦げにしてやる」
「お言葉ですがバラモス様」
「なんだ」
「最近では、白兵戦は時代遅れです」
「なんだと」
「今の時代、ボタンひとつでミサイルが飛んできます」
「み…ミサイル?」
「はい。遠隔操作で遠い国から爆弾…いわゆる魔法の玉を送り込むシステムなのです」
「…ま、魔法の玉って、いざないの洞窟で壁を吹っ飛ばすための道具だよね…?」
「現代の魔法の玉は、数発でこの地球を丸ごと滅ぼすほどの威力を持っていたりします」
「うっわ、それシャレになってねーって」
「いかが致しましょう」
「むぅ…もはやこれまでか。仕方ない、モンスターの誇りにかけて、意地でも最後の最後まで戦おう!」
「そうですか。では私はこれから普通のカラスとして生きますのでこれで」
「おいコラちょっと待て」