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ショートコント:アビリティーズ
(2007/05/22作)


「見つけたっ!」
「うわっ。びっくりした。何だお前」
「はいっ、私は見てのとおりの妖精です。フェアリーです」
「いや、見てのとおりだとどう見ても納豆お化けなんだけど」
「こっちに出てきたらたまたま納豆の中だったんです…」
「そりゃ災難だったな」
「そんなことより、見つけた、見つけました! あなたですっ」
「こら、あんまり寄ってくるな。納豆臭いから」
「あなたこそ私が捜し求めていた運命の人です!」
「俺は納豆レディと結婚する趣味はない」
「いえいえっ、そういう意味じゃありません。私にだって選ぶ権利が」
「引き割り納豆にするぞコラ」
「っとと、そうではなく。あなたはこの地球を救う運命の人なのです」
「は?」
「あなたは隠された特別な能力でもって世界を救うのです!」
「いや、もう何言ってんだか」
「あ、そうですねっ。順を追って話さないと解りませんよね」
「はぁ」
「愚民の知能では」
「目に醤油垂らしてほしいのかお前は」
「すみません、口が滑りました。つい本音が」
「明るいキャラを装っているが腹黒い奴だということはわかった」
「コホン。では最初からお話しましょう」
「俺、晩飯の続き食ってていい?」
「はいっ、どうぞ。食べながらお聞きください」
「どうも」
「そう…それは遥か昔…」
「えらく雰囲気たっぷりな語りだしだな」
「まだビッグバンが起こる前…」
「そこまで戻るんだ」
「そこには一本の木が生えた不思議な星がありました」
「ふうん」
「それから約137億年後、その星は妖精星になっていました」
「わざわざビッグバン以前まで遡った意図が解らない」
「しかし妖精星は今ピンチに陥っています」
「はぁ」
「凶悪な堕天使ベルゼブルが地獄の軍団を率いて侵略して来たのです」
「へぇ」
「ショッカーです」
「違うよな」
「はい、すみません。調子に乗りました」
「うん」
「ベルゼブルの力はとてつもなく強大です。身長は40m、体重はなんと35000t」
「それはウルトラマンだ」
「とにかく、私たち妖精にとっては超ピンチなのです。ピンチDEデートです」
「意味のないボケを挟むな。しかも元ネタが古すぎる」
「そこで私たちは力を合わせてある作戦を決行しました」
「作戦?」
「名づけて、他の物に興味を逸らさせようプロジェクト!」
「うわー、なんてこすい作戦」
「でも作戦は大成功だったんですよ」
「そうなんだ。割りとそのベルなんとかも単純な奴だな」
「はい、なんとか苦心の末ベルゼブルの興味を地球に向けさせることに成功しました!」
「待て」
「はいっ」
「いや、そんな無邪気な笑顔で答えんなよ。悪いと思えよ」
「いやー。まぁどうせ死ぬのは人間だしいっかー、みたいな?」
「みたいなじゃねぇ。お前らで責任持って引き取れ」
「いえいえ、私たちもただ丸投げしたわけじゃありませんってば」
「あん?」
「実は人間の中には、私たち妖精とシンクロできる特殊な人がいるのです」
「ほう」
「私たち妖精の力は微々たる物ですが、人間を介せばもっと大きな力が出ます」
「そうなのか」
「はい! そうやって増幅させた力を使えばベルゼブルも倒せるのではないかと」
「なるほど」
「そこで、村のオババ様に占ってもらったのです。私たちの運命を」
「…妖精のばーさんってなんか想像つかんな」
「あ、いえ、名前がオババなだけで別に老人というわけでは」
「なんて紛らわしい…」
「それで、私を含む数人の妖精が選ばれ、地球に派遣されたのです」
「ああ、それでお前が地球に来たわけだ」
「はいっ。全く迷惑な話です」
「そうか。かなりネガティブな感情で地球に来たんだな」
「まぁ、誰も好き好んでこんな薄汚い星に来てまで命張りたくないですしー」
「極上の笑顔で血も涙もないことを言うなよ」
「でも、地球が征服されちゃうとまたベルゼブルが妖精星に戻ってきちゃいますし、仕方ないかなって」
「自分本位だな」
「で、私とシンクロできる人があなただったというわけです」
「なるほど…大体事情は把握した」
「ありがとうございますっ」
「つまり俺は、そのオババって妖精の占いで選ばれた人間なわけだ」
「そういうことです。人間のくせに物分りが良くて助かりますっ」
「人間を代表して殴っていいか」
「で、協力していただけますか?」
「そりゃまあ、地球がヤバイんだったらやらなきゃ仕方ないだろ」
「ありがとうございます!」
「で、お前の力っていうのはどんなんなんだ」
「はいっ。爪が早く伸びる能力です!」
「…………」
「…………」
「…え? それだけ?」
「はいっ」
「えっと。早くってどんなスピード?」
「んー、そうですねー。一日で1mmくらいかな」
「役に立たねぇー!」
「あ、だ、大丈夫ですよ。どうせベルゼブルも能力は一つしか持ってないし」
「そ、そうなの?」
「はいっ」
「ちなみにどんな能力?」
「指先から気弾を飛ばして核爆弾級の爆発を起こす能力です」
「無理! 絶対無理! 勝てっこないから!」
「で、でも、あなたとシンクロすることで私の能力は大幅に増幅されますし」
「爪が伸びる能力が強化されただけで核爆弾に勝てるかっ!」
「一日に2mmは伸びますよ」
「しかもしょぼっ!」
「ご安心ください。先ほども申し上げましたが、派遣された妖精は私以外にもいます」
「そういえばそんなこと言ってたな」
「一人で戦うのは無茶です。全員で力を合わせてベルゼブルに立ち向かうのです!」
「なるほど、お約束だな。全部で何人いるんだ」
「はいっ、3人です」
「無理だろ、やっぱり」
「ええー、そんなことないですよ! 1+1 は 2 じゃないんですよ!」
「いや、2 だよ」
「そんな夢のないことでどうするんですかっ」
「夢でベルなんとかを倒せるなら苦労はしない」
「ちっちっちっ。甘いですね」
「なんだよ」
「戦いは数ではありません。能力の質で勝負です」
「その質が爪が伸びる程度だから問題なんじゃないのか」
「残り二人の能力と組み合わせれば、きっと道が開けますっ」
「そうなのか。ちなみにそいつらはどんな能力を持ってるんだ?」
「すごいですよっ。一人はごはんですよの蓋を軽々開ける能力!」
「何、そのお父さんが唯一威厳を示しました、みたいな能力は」
「もう一人は、いくら食べても太らない能力です!」
「全く役に立たねぇー!」
「あんたが言うなよ」
「お前だー!」