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ショートコント:ふしぎちゃんとポエム
(2007/07/14作)

「れーじくん」
「はいなんでしょう」
「あたしはポエムに目覚めました」
「また突然だね。いつものことだから驚かないけども」
「天才ポエマー、ふしぎちゃんの作品を耳にして感動するがいいよ」
「詩人の英語はポエマーじゃなくて poet ね」
「あれ、そうなんだ」
「そうなんです」
「勉強になったよ」
「それはどうも」
「じゃ聞いてくれる? あたしのポエム」
「うん。いいよ」
「ではいきます。えへん」
「……」
「『ゴマダレを 集めて早し 最上川』」
「……」
「……」
「…何それ」
「ある日ね、ピーンと思いついたの! 自分でもなんだかよくわかんないけど。すごくない?」
「そう。…あのね」
「うん?」
「ふしぎちゃんに残念なお知らせが三つあります」
「えっ、三つも」
「一つ目。これはふしぎちゃんのオリジナルではありません」
「ええーっ」
「多分記憶の隅に残っていたフレーズがぽっと出てきたのを、自分で思いついたように錯覚したんだと思う」
「うーん。道理で何の脈絡もなく思いついたと思ったよ」
「二つ目。『ゴマダレ』じゃなくて『さみだれ』です」
「えっ。それどんな味?」
「いや、タレじゃないんだ。五月の雨と書いて『さみだれ』って読むんだ」
「へーっ、そうなんだ」
「そうなんです」
「勉強になったよ」
「三つ目。これはポエムじゃなくて俳句です」
「ほえ?」
「確かに英語では『Haiku poem』って呼ばれるけど、日本で一般的にポエムって言ったら散文詩のことだよ」
「そうかな。うーん。別に何でもいいような気がするけど」
「いや、まぁ厳密に決まりがあるわけじゃないけどさ」
「うん。良いではないか良いではないか」
「はぁ」
「じゃ、次のポエムに行きます」
「はい」
「『スリランカ スリジャヤワルダナ プラコッテ』」
「…はい?」
「えへん。これはね、スリランカの首都がスリジャヤワルダナプラコッテだって言う」
「いや、それは知ってるけど。ポエム?」
「ポエムだよ。ちゃんと五・七・五になってるでしょ。いわゆる俳句なのです」
「いや、季語すら入ってないからそれは川柳だよ」
「聞こえません」
「聞いてよ」
「では、次のポエムに行きます」
「はぁ」
「『モト冬樹 今の名前は 何だろう』」
「…は?」
「いや、だって『元・冬樹』なんでしょ。じゃあ今は何なんだろうって」
「今もモト冬樹だよ。というかそのモトは『元』じゃない」
「えっ、そうなの!?」
「本心から驚いてるふしぎちゃんに僕が本心から驚いた」
「うーん。世の中はふしぎに満ちているね」
「ふしぎちゃんにそれを言われると苦笑いするしかないんだけど…」
「では次のポエム行きます」
「はぁ」
「『石橋を叩いて渡る』」
「…いや、それことわざ…」
「『…木梨』」
「じゃなかった!」
「これはね、とんねるずの二人が道を渡る前に軽くボケとツッコミをしたんだよ」
「何その後付で考えたかのような適当なシチュエーション」
「コントとかあまりやらなくなった今となっては貴重なカットだよね」
「いや、貴重っていうか、もうポエム関係ないし」
「むぅ。れーじくん、注文が多いよ。あたしは一体どうすればいいの」
「いや、どうせ考えるのなら、もっとまともなポエム考えてよ」
「まともなポエムって何?」
「えっと…こう、人生観を表現したものとか、細かな心理を描写した叙情詩とか、綺麗な叙事詩とか、さ」
「あ、それならあたしが用意した最後のポエムはばっちりだよ」
「そうなの?」
「うん。人生観ありーの、叙事詩ありーの、トツギーノだよ」
「今関係ないの混ざったね」
「今度は俳句じゃなくて散文詩だし、きっとれーじくんにも気に入ってもらえると思うよ」
「へー」
「それでは参ります!」
「はい」
「『結婚は人生の墓場である』」
「それもまたオリジナルじゃないじゃない。めちゃくちゃ有名なフレーズだよ」
「ちょっと待って。あたしのはまだ続きがあるの」
「え。あ、そう。わかった、ごめん」
「コホン。では気を取り直しまして」
「はい」
「『結婚は人生の墓場である』」
「……」
「『血痕は犯行の現場にある』」
「ただの駄洒落じゃん」