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ショートコント:ふしぎちゃんと三木さん
(2007/11/17作)

「ふしぎちゃん」
「はい」
「そこに座って」
「ええと。三角座りでいいですか」
「正座です」
「正座ですか。空気椅子じゃダメですか」
「別にいいけど、そっちの方が辛いよ?」
「正座でお願いします」
「どうぞ」
「ええと…れーじくん、怒ってる? それとも保護ってる?」
「怒ってます」
「…ボケに対するツッコミがないよ。これは本当に怒ってるよ」
「何で怒ってるか、わかってるよね?」
「えっと…あれかな?」
「言ってみて」
「れーじくんが寝てる間におでこに『米』って書いた」
「…あれ、やっぱりふしぎちゃんだったんだね…」
「え!? そのことじゃないの?」
「気づかないで学校行って友達に笑われたよ。『なんでよりによってテリーマンなんだよ』って」
「お。元ネタが解るなんて、そのお友達も通だね!」
「……」
「…ごめんなさい」
「うん」
「えー、それじゃないんだとすると…あ、あれかな。れーじくんのおやつのプリンに蟹カマ入れたこと」
「…あんな意味不明なことするの、ふしぎちゃんくらいだと思ってたけどやっばりか」
「えっ、これも違った? あわわ。ヤバイ。あたし口滑りすぎ」
「そうだね」
「口が直滑降だよ」
「……」
「…ごめんなさい」
「うん」
「えーと……えへへ。な、なんでしょうー?」
「ヒント。キーボード」
「えっ。あ、あれれ。もしかして…?」
「うん。なんで僕のパソコンのキーボードがぐちゃぐちゃになってるのかな?」
「あっれー。ちゃんと修理したと思ったんだけどなぁ」
「全然出来てないよ! そもそもどうやったらテンキーの部分にマウスがはまるんだよ!」
「んー。なんかできちゃったんだよね」
「なんかじゃないでしょ。キーの配列もぐちゃぐちゃだし…」
「えっ、ぐちゃぐちゃじゃないよ。ちゃんと見てよ」
「え?」
「ほら、一段目を左から順番に…」

[う][え][か][ら][の][ら][い][ぬ][お][と][し][た][ら]
 [き][よ][う][れ][つ][な][い][き][お][い][て][゛]
  [き][ー][か][゛][と][ひ][゛][ち][り][ま][し][た]
  [こ][゛][め][ん][ね][れ][い][し][゛][く][ん]

「何やってんの!」
「頑張った!」

「頑張らなくていいよこんなこと! しかもなんで野良犬落としたの!?」
「うーんと…話せば長くなるよ」
「いいよ。最後まできちんと聞く」
「わかった… あのね。あたし、クロスワードパズルやってたの」
「うん」
「それでね。どうしてもわからない問題があってね。ほら、これこれ」
「ん? …『インターネットのウェブページを表示させるソフトウェア』」
「そうそう。それを調べようと思ってれーじくんのパソコンをつけてブラウザ開いたのね」
「言ってるよ! 今答え言ったよ!」
「でもね。おかしいんだよ。『あ』のキー押しても『3』しか出ないんだよ」
「…ローマ字打ちの発想がなかったんだね。使い慣れないパソコンを急に使おうとするから…」
「うん。やっぱり機械は苦手だよ」
「それでムシャクシャして野良犬を?」
「ううん。それはもう諦めて電源切ったんだよ」
「そうなんだ」
「電源ボタン押しても切れなかったから、電源コードの方で切っちゃったけど」
「…まぁありがちだよね。次からはやめてね。それやるとパソコンにダメージ来るから」
「うん。わかった。鉈は封印しておくよ」
「…ちょっと待って。鉈?」
「うん。鉈」
「うわああ! 電源コードがばっさり切られてるー!」
「良い子のみんなはまねしちゃダメだよ。感電するから」
「しないよ! 悪い子だってこんなアホなことしないよ! せめてコンセント抜く程度にしとこうよ!」
「その発想はなかったよ」
「もう機械音痴とかそういうレベルじゃないよね…」
「えへへ。照れるなぁ」
「褒めてないから。それで?」
「ふと見ると、野良犬が歩いてたんだよね」
「ああ、表の道を?」
「ううん。部屋の中
「また状況がわからなくなってきた。なんで野良犬が僕の部屋の中を普通に闊歩してるんだ」
「あたしが連れてきたんだよ」
「だったらその辺を偶然歩いてたみたいに言わないでくれるかな…」
「で、その野良犬をパソコンの上に落としたの」
「いや、そこが一番解らないんだけど。なんで落とそうと思ったのか」
「だって犬がいたんだよ。そしてパソコンもあったんだよ」
「そんな『そこに山があるから』みたいなこと言われても理解できない」
「あたしにも理解できない」
「じゃあ言わないでよ」
「落としたわけじゃないんだよ。落ちたんだよ。あたしの手から」
「それを世間一般では『落とした』って言うんだよ。覚えておいてね」
「うん、わかった。勉強になったよ」
「で、なんで落としたわけ?」
「んとね。その、なんかね。パソコン触りたそうな顔をしてたんだよね。三木さん」
「三木さん?」
「あ、野良犬の名前。さっきあたしがつけた」
「なんでそんな全く脈絡のない名前を…」
「でね、三木さんをパソコンの前まで連れてきたらね、なんか突然物凄く暴れだしたの」
「また変なことしたんじゃないの?」
「しないよ。引きこもりのニートみたいに何もしないよ」
「またそういう余計な修飾語を…」
「耳を掴んだあたしの手を振りほどいてそのままどっかへ逃げて行っちゃったよ」
「耳なんか掴んでるからだよ! そりゃ嫌がるよ!」
「あれ? 犬って耳掴むんじゃなかったっけ?」
「それはウサギ!」
「あ、そっか。勘違いしちゃったよ。犬はエラのとこ持つんだったっけ」
「エラのある犬が居たら是非連れて来てください」
「まぁ、とりあえずそんなわけでキーボードの上に激しく落ちちゃったんだよね」
「…はぁ。まぁ納得はしてないけど、とりあえず経緯は解ったよ」
「それは良かった」
「ただ、あともう一点、気になることがある」
「何かな?」
「この文章になってるキーボードのキーだけど」
「うん」
「なんで[ら]とか[き]とか、二個以上あるのかな?」
「あー。…えっとね、そっちの押入れになんかキーボードが落ちてたのね」
「落ちてない! それは予備として置いてあるの! うわああ、本当に予備キーボードのキー抜かれてる!」
「頑張った!」
「頑張らなくていいよこんなこと!」
「むう」
「もう、前から言ってるでしょ。ふしぎちゃんは僕のパソコンに触っちゃダメだって!」
「ぶー。けちんぼ」
「このパソコンでもう五代目だよ? 全部ふしぎちゃんに壊されてるんだから」
「うう。ごめんなさい」
「…まぁ今回は電源ケーブルとキーボードさえ取り替えれば済むからまだマシだけど… うわぁ!?」
「え。何、どうしたの」
「い、いや。何か今、パソコンが動いた!」
「電源入ったの?」
「いや、電源ケーブル切れてるし、例え電源入ってもこんな物理的にガタガタ動かない…」

『ワン!』

「鳴いたーーー!?」
「あ、三木さん、こんなとこにいたんだ」
「なんで!? 本体ケースの中になんで入ってんの!? え、マザーボードとかはどこ!?」
「六代目、決定だね」
「ふしぎちゃんがそれ言っちゃダメだよ…」