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ショートコント:ふしぎちゃんと怪談話
(2007/08/08作)

「その日は風が生ぬるくて気持ちの悪い夜だったんだよ」
「うん」
「唐突にからあげクンが食べたくなったあたしは、某コンビニへ行ったの」
「某、というかあからさまにローソンだね」
「夜道を歩いていると、背後からもう一つの足音が聞こえてきたんだ」
「……」
「…ぽにょん、ぽにょん」
「予想に反してえらく可愛い足音だ」
「意を決したあたしは勢いよく振り返ったんだけど、そこには誰もいない…」
「ああ、それは怖い…」
「…ような気がした」
「いるんじゃん。誰かいるんじゃん」
「あたしの目の前には一人の男の人が立っていたの」
「うん」
「全裸で」
「変態じゃん。確かにある意味怖いけど」
「だからあたしは叫んだよ」
「ああ、正しい判断だね」
「ポマード! ポマード!」
「それは間違えてるからね。叫ぶ相手を」
「そしたら出てきたんだよ。画面から貞子が」
「え?」
「だから、画面から貞子が出てきたの」
「画面? コンビニに行く夜道を歩いていたんだよね?」
「うん」
「どこの画面?」
「テレビの画面だよ。決まってるじゃない」
「いや、だから一体どこにテレビが」
「リビング」
「え、いや、でも…」
「武田さんちの」
「誰!?」
「武田さんだよ。笑顔の可愛いおじいちゃんだよ。最近高血圧気味の」
「全然手がかりにならない手がかりばっかりありがとう。もういいや。で、貞子が出てきて?」
「なんと体が犬で顔だけ人間なの!」
「貞子でもなくなった」
「で、とりあえずコンビニに着いたんだけど」
「しかもスルーした!」
「からあげクンと一緒に何か飲み物を買おうかなぁと思ってジュースの棚を眺めていると…」
「…ごくり」
「なんとベッドの下に斧を持った男が…!」
「なんでコンビニにベッドがあるんだよ!」
「売り物」
「すごいね、そのローソン!」

「男がベッドの下から這い出してきながら言うんだ。赤いちゃんちゃんこ着せましょかー
「また何か別のが混ざったし」
「1200円だよー」
「店員じゃん! 何やってんの店員!」
「その時、あたしの携帯が突然鳴った…!」
「や、まぁ電話っていうのは普通突然鳴るもんだ」
「ちなみに着うたは『青い山脈/藤山一郎』だよ」
「相変わらず選曲が古いよね、ふしぎちゃん…」
「電話に出ると、なぜかすごいノイズ音がザザーって耳をつきました」
「うん」
「そのノイズ音に紛れて、微かに女性がすすり泣く声が…」
「うわ、それは怖いかも」
「…エイトビートで…」
「どんな泣き声だよ。ノリノリじゃないか」
「やがてその子が、あたしに話しかけてきたんだ。『私リカちゃん。今、あなたの家の前にいるの…』」
「わぁ…」
「『ごめんなさい、今留守にしてます』って答えた」
「だよね。コンビニに来てるんだもんね」
「そしたら『落ちちゃえば良かったのに』って言って電話が切れました」
「会話が噛み合ってない。一体何が落ちるんだ」
「帰り道、からあげクンを一個落としたよ」
「何そのしょぼい呪い!」
「その後、相変わらず生ぬるい風が吹く夜道を歩いて帰宅して、テレビをつけたんだよね」
「うん」
「そしたらそこに、一仕事終えて休憩している貞子の姿が」
「うわぁ、台無し」
「だからあたし、言ってやったんだ」
「なんて?」
「お前の後ろだよ!!」
「意味がわからないよ…」

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「あれ、ふしぎちゃん? 誰と話してるの?」
「え、れーじくんにはこの人見えない?」
「…え?」