マット・ヘルム・シリーズ第4作 沈黙部隊 本文へジャンプ
The Silencers (1962)
ハヤカワ・ポケット・ミステリ 896 (1965/7/31刊) ハヤカワ・ポケット・ミステリ 896 (映画フォト・カバー版) ハヤカワ・ミステリ文庫 HM63-3 (1981/3/31刊) Gold Medal版
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あらすじ
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読みどころ
時は1962年。007が始めて映画化され、それまで一介のベストセラー小説の主人公に過ぎなかったジェームズ・ボンドの名が20世紀の伝説と化した年です。
この「沈黙部隊」では電波障害によるミサイルの迷走を事件の背景にマット・ヘルムの活躍が描かれていますが、これはやはり「ドクター・ノオ」を素材としてハミルトン流に調理したものと考えたほうがよさそうです。

イアン・フレミングの方は、南国の孤島を舞台に、ライダー・ハガード(「ソロモン王の洞窟」等の著者)等の英国伝統の冒険小説の延長線に並ぶような作風でハラハラさせていたのに対し、ハミルトンはあくまで西部劇の流儀で体がカッカと火照るような作風です。
加えて核の地下実験を結びつけることにより、舞台となる大西部とスパイの世界との関わりをうまく必然性のあるものにしていると思います。また、道中を共にする女性のゲイルに対して徹底的に嫌な奴を演じ、生々しい味わいを残します。

名言集・箴言集・声に出して読みたい日本語
新人が人を殺すときはたいていそうだが、ガンサー(敵)も、自分の仕事からすぐに目を離すことができなかった。ひとりを撃って、ふりむきざまに次の目標を狙うといった真似ができず、ガンサーは最初の男が倒れるのを、じっと見ていなければならなかったのだ。自分の腕にそれほど自身が持てなかったのだろう。それとも、相手が倒れるのをみて楽しんでいたのかもしれない。私がかまえる時間はたっぷりあった。(P179)

「はっきり言うけど、ひとりの男が、その男だけでこれほど悪くなれるなんて、とても考えられないわ」
「熟練だね。けんめいに進歩させたのさ。みとめてもらってうれしいよ」私の言葉がどれだけほんとうのことに近いか、ゲイルにはわからないほうがいいのだがと、私は考えていた。(P109)

3人かと、私は考えた。塔のうえにライフルを持ったやつがひとりと、それにウェグマン-----これで5人だ。
指令にしたがって、私は自分を餌にした。餌をくう相手が多すぎるといって、文句をいうわけにもいかない。(P158)

タイトルの由来について
なんだ?こりは?
という摩訶不思議なタイトルですが、シリーズ一連の原題を眺めれば、「なるほど」と合点がいくことでしょう。
だからといってまるっきり別な邦題を与えず、慣例に従って「沈黙部隊」としているのは強引というか無茶に思うのですが。人目を惹きつける奇策なのか、あるいは冗談なのか、それともマット・ヘルムに倣って感情に惑わされることなく訳者が職務を忠実にこなしただけなのか。関連諸氏の話を伺ってみたいものです。

参考データ
■旅の道程はこちらを参照
  http://www-personal.umich.edu/~pdmce/mattmaps002.htm


上司から指令を受け、任務を遂行し、報告で物語を終えるのがシークレット・エージェント型スパイ小説に共通した一般的な様式ですが、シリーズとしてのそうした様式も本作に至ってようやく固まりました。
本作ではゲイルにやたら辛く当たり、嫌な男の役回りが強すぎて、中にはまだマット・ヘルムの魅力がわからない向きがあるかもしれません。でも「非情なスパイ戦争を生々しく描いて圧倒的な評判を」呼んでいた当時の空気は理解頂けたことと思います
ここまで目をとおして、「未だ良さがわからない、だけれど未だ何か気にかかる」という方がいましたら、次のもう1冊まではぜひお付き合いください。シリーズ中いちばん洗練された形で典型性を備えており、それだけにシリーズの魅力が最もストレートに現れた一作だからです。


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