マット・ヘルム・シリーズ第1作 誘拐部隊 本文へジャンプ
Dath of a Citizen (1960)
早川ポケット・ミステリ 863 (1964/11/15刊) ハヤカワ・ミステリ文庫 HM63-1 (1979/6/15刊) Gold Medal版 Gold Medal版

あらすじ
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読みどころ
全てはここから始まります。
そして、いろんな意味でシリーズ全ての基準・水準になります。
愛妻家でよき父親で、至って普通な生活を過ごしているマット・ヘルム。サンタ・フェでウエスタン作家として生計を立てているのですが、15年前の同僚が訪問してきたことをきっかけに事件に巻き込まれ、子供が誘拐されてしまいます。
以降の作品でマットが過酷で非情に振る舞うほど、「かつてはよき父親だったのになあ」と嘆息しながらも、まさしく的確に任務を遂行するその姿に「よくぞそこまでやった!」と感嘆してしまうのですが、それはこの1冊で良識と節度を備えたマット・ヘルムの姿を見ていればこそと思います。
したがって、ここではその凡庸な部分と、平和な生活が壊れていく過程をじっくり味わいましょう。
カクテル・パーティーでかつての同僚と再会するところから物語ははじまります。彼らから合図を送られ、握手をとおして握り具合でメッセージが伝えられる描写にゾクリときたらしめたもの、きっとあなたはこの作品に捕まることになるでしょう。

名言集・箴言集・声に出して読みたい日本語
■銃をつきつけられた場面で
「とってもおじょうずです。しかし、弾丸をこめた拳銃を、ぼくがわたしたと本気でおもいました?」(中略)
ほんの一瞬だが、マックは、手にもった拳銃に目をおとした。こういう反応はいけない。弾丸ははいってないぜ、といわれたときには、やることはただひとつ。ほら、だれかうしろに――といわれた場合とおんなじで、かまわずに引き金をひけばいい。ほんとに弾丸がはいっていなければ、床にたおされ、それでおしまいだが、相手がウソをついているなら、まだ生きていられる。

ウラ話
文庫版の解説にも記されているのですが、シリーズの翻訳にあたり、複数の翻訳家たちが分担して訳出することになったものの、この物語は主人公の一人称で語られていて、これをどう訳すかが問題となり、1作目を担当した田中小実昌は「おれ」にこだわっていたらしく、最終的には「私」で決定されたため、この「誘拐部隊」だけは「おれ」も「私」も使わないで訳出することにしたのだそうです。
何も知らずに初めてこの本を手にした方は、こうした試みに違和感があるかもしれません。でもやはりどうにもならない部分があったということなのでしょう、ところどころで「自分」と訳して逃げちゃっているところがあります。

ちなみに、これはミステリ界の翻訳史上、ちょっとした事件として記憶されている出来事です。

参考データ
■旅の道程はこちらを参照
  http://www-personal.umich.edu/~pdmce/mattmaps002.htm


 かつての同僚が訪れたことがきっかけで平和で幸せだった生活も終わり、最愛の妻ベスとも離婚してしまいますが、次作からは正規の工作員として活躍します。

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