全てはここから始まります。
そして、いろんな意味でシリーズ全ての基準・水準になります。
愛妻家でよき父親で、至って普通な生活を過ごしているマット・ヘルム。サンタ・フェでウエスタン作家として生計を立てているのですが、15年前の同僚が訪問してきたことをきっかけに事件に巻き込まれ、子供が誘拐されてしまいます。
以降の作品でマットが過酷で非情に振る舞うほど、「かつてはよき父親だったのになあ」と嘆息しながらも、まさしく的確に任務を遂行するその姿に「よくぞそこまでやった!」と感嘆してしまうのですが、それはこの1冊で良識と節度を備えたマット・ヘルムの姿を見ていればこそと思います。
したがって、ここではその凡庸な部分と、平和な生活が壊れていく過程をじっくり味わいましょう。
カクテル・パーティーでかつての同僚と再会するところから物語ははじまります。彼らから合図を送られ、握手をとおして握り具合でメッセージが伝えられる描写にゾクリときたらしめたもの、きっとあなたはこの作品に捕まることになるでしょう。 |