セラピードッグについて

 

 

                                    

 

 

 

 

                                                            

ハンドラー 森田優子

 始めに、私とセラピードッグのベイリーについてご説明します。

私はNPO法人タイラー基金に所属しています。

タイラー基金は、白血病で息子を亡くしたアメリカ人夫婦によって、

小児癌のこどもとその家族を支援するために設立されました。

現在、東京・茨城・大阪、そしてここ静岡の病院でこども達のために様々なプログラムを実施しています。

私達は全面的にタイラー基金の資金で活動しており、病院からは一切お金はいただいていません。

 

 次に、セラピードッグのベイリーについてお話します。

日本では、セラピードッグと聞くと、よく躾られたペットが飼い主とともに

施設や病院に月1-2回訪問するという活動を思い起こされる方が多いと思います。

しかし、ベイリーはペットではありません。

ベイリーはオーストラリアの信頼あるブリーダーの元に産まれ、

働く犬として問題がないか、5代前まで遡ってチェックされています。

そして6ヶ月でハワイの補助犬(盲導犬・介助犬などの働く犬)を育てるトレーニングセンターに入りました。

子犬の頃にセラピードッグとしての適正を見出され、2歳まで専門的にトレーニングを受けてきました。

アメリカでは、盲導犬等と同様に国に登録されているため、

飛行機や電車にも乗れるプロのセラピードッグです。

とても大人しく、よく「疲れているのではないか」と言われますが、それはベイリーの性質です。

病院という場にはこのように落ち着いた犬でないと適しません。

また、こども好きで忍耐力があり、

どんな事をされても決して怒ることはありません。

実際、尻尾を車椅子で踏まれたり、目をつつかれたりすることもありますが、

微動だにしませんでした。

 

 では実際にベイリーが行っている活動についてお伝えします。

セラピードッグが行う活動には、大きく分けてAAAAATがあります。

AAAとは、動物介在活動のことで、AATは動物介在療法のことです。(資料参照)

AAAは、例えばプレイルームでベイリーと触れ合って楽しんでもらうことです。

触って楽しんだり、ベイリーがする芸を見て楽しんだりします。

AATは、何が違うかと言うと療法(治療)ですので、毎回の訪問に対し、目標を立てます。

この目標というのは、患者さん本人や家族、医療スタッフと情報を共有して立てます。

そして毎回の訪問後には記録を書きます。患者さんのことを評価するため、

資格を持った医療スタッフがハンドラーであることが求められます。

わたし自身、もと小児科の看護師です。海外では、医師や看護師、

OT/PTがハンドラーをしていることが多いです。

 

 現在の日本は、AAAであるのにも関わらず、セラピーと呼んでいます。

患者が癒されればセラピーというわけではありません。

セラピー(AAT)と呼ぶには、資格を持つハンドラーが医療スタッフとともに毎回目標を立てて介入し、

その後には評価する必要があることを覚えておいていただければと思います。

ただ、AAAAATどちらが優れているとうことではありません。

AAAでも十分に患者さんが喜ぶのは事実です。

すべての患者にAATが必要なわけではありません。

必要と判断した患者には、AATを行っていきます。

また、ここでは詳細は述べませんが、詳しく言うとベイリーはファシリティードッグです。

資料を参照してください。

 

 では、実際、セラピードッグにはどのような効果があるのでしょうか。

まず、身体的効果。血圧の低下・心拍数の低下など生理学的な効果があることは様々な研究で実証されています。

次に、感情面、セラピードッグがいることで、不安の軽減につながります。

普段点滴の注射をするのにパニックになってしまう子が、ベイリーが横にいることで泣く事なく終了したことがありました。

また、こどもにとって恐怖の場である手術室に向かう時、

もう1本リードをつけてこどもに持たせ、一緒に入り口まで行くこともできます。

 

 次に、心理面では、自己評価の向上が期待できます。

犬は、こどもの見かけは全く気にしません。

髪の毛がなくても、腕がなくても、顔に奇形があっても、

どんなしゃべり方をしても、その子のことを愛してくれます。

そのため、コンプレックスを持っている子どもに自身を持たせることができます。

 

 次に、社会面の向上があります。例えば、見ず知らずの人と狭い部屋で2人きりになった時、

その場に犬がいるのといないとでは、場の雰囲気や会話の数はぜんぜん違ってくることは

容易に想像できると思います。それは病院の場でも同じです。

初めて入院してきた子と医療スタッフとの話題作りのきっかけになったり、

子ども同士が友達になるきっかけを作ったりします。

人と人との潤滑油的な役割ができます。実際、普段他の子とコミュニケーションを取らない子が、

ベイリーの訪問により他の子たちの輪の中に入ってきてコミュニケーションを取っていたこともあります。

 

 その他、ベイリーを触ろうと動かない腕を動かしたり、

手術後歩くことを嫌がる子にもう1本のリードを持たせ、

歩行を促すなどの役割もできます。

その他、患者さんだけでなくこどもの入院により大きなストレスを感じている家族にも癒しを与えたり、

毎日忙しい勤務をする医療スタッフのモチベーションをあげる役割もしています。

 

これらのことは、月に数回の訪問だけで、毎回犬が変わるような、

従来の日本の「アニマルセラピー」と呼ばれる活動では難しいです。

ベイリーのように毎日同じ犬が来ることによって、患者さんのニーズに柔軟に対応できたり、

ベイリーと子どもたち・家族との信頼関係が強くなり、治療のプログラムに組み込むことができます。

ここに、訪問型の活動と、常勤の活動との大きな違いがあります。

 ベイリーのように、常勤のセラピードッグは日本で唯一です。わたしたちもまだ活動を始めて間もなく、

理想の活動には至っていません。私達の夢は、ベイリーのようなセラピードッグを日本中に広めることです。

そのため、皆様に今日ベイリーのことを知っていただく機会があったことは大変嬉しいことです。

 

なお、もし興味のある方がいらっしゃいましたら是非ベイリーに触って行ってください。

ただ、2つお願いがあります。ベイリーは少人数でじっくり関わるトレーニングを受けているため、

大人数で触られるのは慣れていません。あまり囲みすぎないようお願いします。

また、ベイリーが病気を持っていることはありませんが、ベイリーを媒介としてこども達に病気を移すことを防ぐため、

ベイリーに触る前にはアルコール消毒をお願いいたします。   

 

ご清聴ありがとうございました。             2010.6.28