運命の名を冠する国
 
 誰もが知っていて
 
誰もが知らない場所


 石畳に足を踏み入れたのなら
 さあ、先に進むといい
 
 今宵も貴方を誘いましょう。
 
 とろけるような夢の中へ

 遙かなる深淵へ
 
 光の届かぬ闇の中へ

 出口の見えない迷宮へ

 道を踏み外してみたいのならば
 その扉を叩くといい

 極上のお持て成しと、笑顔を、貴方に

 錬金術師がお迎えしましょう……



















第一章 『まるち』の店主

 錬金術師、アルティオ・トーディロスは客である女性に対して優しく微笑みかける。
 流れるような黒の長髪、
 切れ長の瞳、
 女性を魅了する甘いマスク、
 透き通るような、美しい声、
 よろず屋『まるち』の店主であるアルティオはただ美しくそこに存在した。
 「それで、貴方のご依頼は?」
 しびれるような甘い声で、女性客に問いかける。
 「あ……あの……」
 女性がうっとりとした顔でアルティオを見る。
 「そのように黙っていては分かりませんよ?」
 くいっと、顔を近づけて、女性の顎を軽く上げる。
 「はう……えっと、どうしても、振り向かせたい人がいて……その、惚れ薬を作ってもらいたかったんですけどぉ……」
 「けど……?」
 「もう、いいですぅ……」
 女性はアルティオにメロメロ状態で抱きついた。
 アルティオはフッとキザに笑って、女性の肩を抱く。
 「恋……それは、突然襲いかかる病のようなもの……」
 「私……病気なんですか……?」
 「大丈夫、俺が治してあげるよ……」
 アルティオは流れるような仕草で女性の唇を奪おうとする。
 が……
 「治してあげるよ……ぢゃねーだろオイ……」
 ぱこん、と丸めた新聞で頭をはたかれるアルティオ。
 「……なんだよ。帰ってたのかよディート。いい所なんだから邪魔するなよ」
 アルティオはディートをしっしっ、と追い払いながら女性の服の中に手を入れようとするが、
 「来る客来る客片っ端からたらしこんでんじゃねーよ」
 ディートが呆れたように腕を組んでアルティオを睨む。
 「……ってオイ!続けんのかよ!!?」
 人目も憚らず女性をソファーに押し倒すアルティオにディートはキレかける。
 「…………」
 もはや俺の言葉では止まるまい。
 仕方がない、こういう時の為に仕込んでおいた爆弾を使うか。
 「あー、コホン。そこのお嬢さん?いっとくけどそいつはただの女ったらしで、本気になるだけ無駄だぜ?いつも同じ手口で女誑かしてんだから」
 「え……?」
 女性の目に不審の光が宿る。
 アルティオを不安そうに見上げる。
 「いやだなぁ。俺がそんないい加減な男に見えるのかい?」
 顔色一つ変えずに虚言を吐くロクデナシ。
 この上なく誠実に言っているつもりなのだろう。
 が、胸を揉みながら言っても説得力がない。
 
 ディートが更に追い打ちをかける。
 「嘘だと思うならそこのシーツめくってみな?前の女の忘れ物のヘアピンが転がってるはずだから」
 「げっ……」
 あからさまにアルティオが狼狽える。
 女性はそんなアルティオを見て、そろーっとシーツをめくってみると……
 「…………」
 そこにはディートの言ったとおり、女性用と思われるヘアピンが転がっていた。
 「ふーん……」
 女性の目が一気に冷ややかなものになる。
 「う゛……あー……いや、これは……その……元カノ!元カノのなんだって!!……って言ったら、信じる?」
 さっきまでのクールヴォイスは何処?
 狼狽えた情けない姿に一変した。
 「ついでに言うと、そのヘアピン先週片付けたときに見つけたんだけど、こういうときに役に立つ妥当と思ってワザとそのままにしておいたんだ」
 フフン、とディートが得意げに話す。
 「ディート!てめっ!!」
 「自業自得」
 逆ギレしかけるアルティオにも慣れたもので、ディートは飄々としたものである。
 「ふーん……」
 「う……」
 まあ、この後の結果は簡単に想像が付くと思われ。


 「てめぇ俺に何の恨みがあるんだよ!?」
 ひりひりとする左頬を涙目でさすりながら、相棒に文句を垂れるロクデナシ。
 さっきの女性からは情け容赦のないビンタを食らった左頬はまだ痛みを訴えていた。
 「恨みならば腐るほどに。人の食事に毒を持ったり、こんな調子で客を逃がして売上が減ったり……」
 ディート・ラグディレル。
 『まるち』の店員。
 役割は店番、アルティオの補佐。
 新薬の実験体。
 非道の主のお陰で何度も生死を彷徨っている。
 「……なんだよ。まだこの前のこと根に持ってんのかよ?ちゃんと解毒剤打ってやったろ?」 
 「そおゆう問題かぁー!!」
 がぁーっと怒り狂うディート少年。
 五日前、
 アルティオは新しい毒薬を完成させた。
 完成したはいいが試してみないことには効果が分からない。
 そこで、ディートで試してみようと考えたのだが、
 『新しい毒薬できたんだけど、お前飲んでみてくれよ』
 などと言ったところで当然首を縦に振る訳がない。
 よし、それならば食事に混ぜてみよう、と服毒を成功させた。
 それから三日間、ディートは生死をさまようことになる。
 しかもその間しっかりと経過観察や血液サンプルを採取したアルティオはようやく三日目にしてディートに解毒剤を投与した。
 それからディートは食事の度にびくびくすることになる。
 変な臭い、味はしないか、とか。
 しかし、アルティオはそんな事既にお見通しで、混ぜる薬は常に無味無臭ときている。
 「一般人で実験したらさすがに問題だろう?」
 「俺は問題無いのかよ!?」
 「ない」
 「…………」
 言い切りやがったぞこのロクデナシ……
 「自分でやれよ」
 「嫌だね。自分でやったら細かい経過観察が出来ないじゃないか」
 「そっちかよ!?」
 問題はもっと別のところにあるだろう!?と普通は思うのだが、良くも悪くもこの男には普通という常識は通用しないらしい。
 「とにかく、店はホテルじゃないんだからあんまり変なことに使うなよ」
 「そんなの俺の勝手だろう?ここは俺の店だ」
 『まるち』の店主はアルティオで、ディートはただの助手兼店員。
 決定権はアルティオにある、と言いたいのだろうが……
 「…………」
 血管が切れそうになるのを何とか抑えながらアルティオの胸倉を掴む。
 「お・ま・え・が・!!来る客来る客たらしこむもんだから全っ然売上にならないんだろうが!!どうするんだよ今月!金なんて残ってないぞ!?このまま客足が遠のいたら間違いなく俺たち餓死するぞ!!」
 「…………」
 店として機能している以上は売上を伸ばさないことには経営できない。
 生活にだって困る。
 ディートの意見は実に正しいのだが、
 「フン」
 この歪んだ天才にはそんなまっとうな理論は通用しなかった。
 アルティオは外に出て適当に何個か石ころを持ってくる。
 「……おい、まさか」
 どっから見てもただの石。
 どこにでも転がっている路傍の石。
 アルティオは引き出しから青い、綺麗な石を取り出す。
 「Ingenium Variatio」
 さっきまでただの路傍の石だったものが見事な金塊へと変化した。
 いや、間違いなく金。
 金ですよ奥さん!

 金塊へと化したモノをディートに投げ渡す。
 「ほれ。これ換金して来い。当面の俺達の生活費としては十分だろう?」
 などとのたまうた。
 「…………」
 ぐぐぐ……
 金塊を握りしめて、震えるディート。
 「それは犯罪だぁー!馬鹿者ー!!」
 と、怒鳴りつけた。
 「人聞きの悪い。その金塊は成分分析にかけたところで絶対に偽物なんて判定は出ないぞ?」
 ふふん、とふんぞり返るアルティオ。
 「馬鹿ー!こんなの偽造紙幣と何が違うんだよー!!」
 「製造過程はどうあれ正真正銘本物だってあたりかな」
 腐っても錬金術師。
 今使った青い石は世間様が『賢者の石』と呼んでいる代物である。
 石を金に変え、不老不死をもたらすと言われている伝説の聖石。
 錬金術師の最終到達点。
 「こんな不正は許さーん!まっとうに働けー!稼げー!!」
 一応正義を志すディートは金塊を突っ返してアルティオを責める。
 「……難儀な奴」
 金塊を受け取ってため息をつくアルティオ。
 不正なんてばれなければ問題ないし、賢者の石で作られた物質はすでに本物の物理領域に入っているので実際には不正とは言わない。
 「せっかく俺が気を遣ってやったのに。もういいさ」
 アルティオは金塊を懐にしまう。
 「アルティオ……まっとうに働く気になったのか?」
 ディートのぬか喜びもつかの間、アルティオは冷たく言い捨てる。
 「俺が自分で換えてくる。そんなに汗水流したいんなら一人で頑張んな」
 「……え?」
 「ディートはまっとうな金じゃないと嫌なんだろう?」
 アルティオが意地悪く笑う。
 「今月はもう食糧は底をついてたなぁ。俺はこの金でいいものを食うけど、ディート君は汚い金は使いたくないからパンの耳でもかじってるんだなー」
 「う……ぐ……うぅ……」
 こ……このやろう……!絶対楽しんでやがる……
 「ま、俺は別に構わねえけどさ。ディートが侘しくパンの耳を食べている横で特上サーロインステーキを食っても俺はちっとも心は痛まないし?」
 痛めろよ!少しぐらい!!
 アルティオの精神攻撃は続く。
 「で?どうする?」
 アルティオは再び金塊をちらつかせる。
 「換金、行く?」
 「……行く」
 くっ、と悔しそうに拳を握って金塊を受け取るディート。
 正義でありたい。
 しかし、背に腹は代えられない残酷な現実が人生には存在するのだ。
 そして、少年は現実の前に敗れ去った。
 「まったく。しょーもない正義感なんて腹の足しにもなりゃしないのに……」
 悔しそうな背中に追い打ちがかけられる。
 「この……!ロクデナシ!!」
 負け犬の遠吠えのような捨て台詞だけを残して、ディートは店を出た。
 「ったく。どうしょーもねぇな。あのロクデナシは」
 ずんずんと乱暴な足取りで街を歩くディート少年。
 「そりゃあ、あいつのお陰でいろいろと助かってるけどさ……」
 『まるち』は一応よろず屋ということになっている。
 分かりやすくいえばまあ、何でも売りますって店だ。
 主に陳列されているのは薬関係だが、医者でもさじを投げる病をたちどころに治す詐欺のような特効薬や、どんな解毒剤も効かないような悪魔のような毒薬まで、少し路線を変更すると媚薬や惚れ薬まで置いてある。
 場合によって爆薬の調合や、武器の強化、魔法具の精製まで引き受けている。
 戦闘から日常まで節操無しに何でも取り扱っている。
 それらの商品は全てアルティオのお手製である。
 ほかの場所では存在しない。
 彼だけのオリジナル。
 彼だけの知識が『まるち』の中には詰まっている。
 実際、錬金術師という職業はあっても、本物の錬金術師連はアルティオ以外見たことがなかった。
 アルティオ曰く、錬金術師は『カガクと魔法のエキスパート』らしい。
 一般論では、錬金術師とは考古学者に近いらしい。
 失われた文明、力。
 前文明の失われた技術の探求者。
 カガクを求めるものだと聞いた。
 前文明は、魔法の記録はないものの、それ以外の分野で高い技術を持っていたという。
 その失われし力を、カガクを再現しようとするのが錬金術師というものらしい。
 魔法師が、魔法分野に対する探求者だとすれば、錬金術師は古代に対する探求者。
 「……でもなぁ、あいつ探求者って感じじゃないよなぁ」
 何かを調べてる、なんて姿は想像がつかないし、ディートから見れば女ったらしのロクデナシにしか見えない。
 それに、アルティオは前文明について既に色々な事を知っているような気がする。
 「…………」
 ディートは換金したお金の入った袋を見る。
 「賢者の石…か……」
 錬金術師の最終到達点とされている超物質。
 万能の石、とも言われて、この石を手にしたものは出来ない事はない、とまで言われている。
 「それがこんな所帯じみた使い方をされているんだもんなぁ……」
 その辺の石を拾ってきて、金塊に変えて、生活の足しにする。
 世の中の錬金術師が聞いたら卒倒するぞ?
 アルティオにとってはこんなもの錬金術でも何でもないらしいけど……
 「二年間、一緒にいるけど未だに謎が多いんだよなあいつ……」
 アルティオが『錬金術』と定義しているものは通常の錬金術とは違うらしい。
 カガクの再現ではなく、
 『カガクと魔法の融合。これが本当の錬金術だ』
 「ってよく言ってたっけ?」
 カガクは前文明の基本技術。
 魔法は現代の基本技術。
 この二つの融合こそ、錬金術の名に相応しい。
 賢者の石はその試作品らしい。
 本人は『お財布二号』とか実にふざけた名前を命名していた。
 確かにあれは第二の財布って感じだけどさ……
 しかし店の名前といい、あのネーミングセンスはもう少しどうにかならないものか。
 なんか、響きが間抜けなんだよなぁ……
 店の名前について、とにかくその間の抜けた名前はどうにかならないものか、と尋ねたところ、
 『何を言う!前文明で多くの男を虜にした由緒正しきスーパー美少女の名前なんだぞ!!』
 などと力説されたが……
 「知るかよそんなもん……」
 といった感じである。
 アルティオはとにかく前文明に詳しい。
 前文明の頃から生きている、なんていうのはまあ有り得ないとして、前文明の記憶を引き継いでいる、位の無茶なら有り得そうな奴である。
 彼は時々、その時代を生きてきたかのように、懐かしそうに前文明の事を話すから。
 「ま、細かい詮索をする気はないけど」
 そんなことディートにとってはどうでもいいことだった。
 どんなに女ったらしで、どんなにロクデナシで非道なバカでも、謎だらけでも、ディート・ラグディレルにとって、アルティオ・トーディロスはかけがえのない存在だから。
 「よし。金も入ったし、今日は少し奮発しよう!」
 ディートは食料品を物色するべく、市へと繰り出した。


 冷たい、雨の夜だった。
 気がついたら、ただそこに居た。
 随分と長いこと雨に打たれていたのか、全身びしょぬれだったような気がする。
 冷たい雨に打たれて、体が冷えきって、心が麻痺して、すべてが真っ白になりそうな頃、声が聞こえた。
 「生きたいか?」
 こんな雨の中でもよく通る、綺麗な声だった。
 動かない体を、動かそうとしたけれど、やっぱり動かせなくて、仕方なく目だけでも動かしてみて、声の主を見ようとした。
 「…………」
 綺麗な、整った顔をした黒髪の青年が立っていた。
 「なぁ、答えろよ。お前、そんなになってもまだ、生きたいか?」
 同じように、雨に打たれながら青年は聞いてくる。
 「…………ぁ……」
 そんなになっても、とは一体どんなふうなのだろう。
 自分の状態がよく分からない。
 それでも、言いたい事だけははっきりしていた。

 『生きたい』

 「い…………」
 生きる為に、生まれてきた。
 何も、何もない記憶の中で、そんな言葉だけが唯一残っていた。
 最後まで諦めない。
 命がある間は、最後まで生きていたい。
 人間なら、誰だってそう願う。
 だから、生きたい……
 そう、言いたかった。
 「……き…………」
 声が、出ない。
 でも、言わなきゃ。
 生きたいって……
 たとえ、このまま死んでしまっても、この、今の気持ちを覚えていてもらえるように……
 「…………」
 青年は、じっとまっていた。
 長い時間を費やして、一つずつ言葉を紡ぐ。
 「…………た………」
 声を出す度に、のどが焼けるように痛い。
 それでも、諦めたくなかった。
 この、たった一言を……
 「……い……」
 どれだけの時間をかけて、その一言を紡げたのかは分からない。
 それでも青年は、ずっと待っていてくれた。
 声にならないほどの小さな声。
 それ以上に吐き出した気持ち。
 「強い子だ。その願いは俺が聞いてやるよ」
 抱きしめられたぬくもり。
 差し伸べられた手。
 このとき、ディート・ラグディレルの名と共に、アルティオ・トーディロスに命を貰った。
 それが、ディートとアルティオの出会いでもある。
 それからは何となくアルティオのところに居候する形になっている。
 せめて何か恩返しがしたいと思って、『まるち』を手伝ってはいるんだけど……
 「まさか毒薬の実験体にされるとは思っても見なかったよ……」
 助けた命をまた殺す気かよ……
 いや、ちゃんと生きてはいるけどさ。
 命を助けてくれて、こうやって今まで面倒も見てくれて、本当に、感謝しきれないぐらい感謝している。
 「…………」
 ただ、それでもやっぱり思ってしまうのだ。
 「あの性格だけはもう少し何とかならないものかなぁ……」
 切実に願ってはいるのだがその願いがかなう日は永遠に来ない気がする。
 「気長にやっていくしかないかな」
 どんなに非道のロクデナシであろうとも、アルティオが大切な恩人である事は変わらないし、それでもディートはアルティオが好きだから。
 だから、こんな馬鹿言い合う生活はまだまだ続くのだろう。
 でも、それも悪くないと思っている。
 腹立つ事も多いけど、それでも楽しいって思えるから。
 「とりあえず……」
 今日はアルティオの好物でも作るとしよう。
 ディートは食料の入った紙袋を持って、店へと足を速めた。

 過去の記憶はないけど、今が大切だって思えるからそれでいいと思う。
 取り戻せないものはあるけど、これから掴んでいけるものも確かにあるから。
 「ただい…ま……」
 ぼとっ……
 何の音かと聞かれれば、それはディートが紙袋を落とした音だと答えよう。
 店の中にはアルティオと、また見知らぬ女性の姿が……
 しかもソファーに押し倒して真っ最中……
 半裸のアルティオに……
 「って何でまた新しい女連れ込んでんだよ!!?」
 すっこーん、とじゃがいもを投げつける。
 見事後頭部にクリーンヒット!
 無惨に砕けた。
 食べ物を粗末にしてはいけない。
 「や…やぁ、ディート。あははは……」
 気まずそうに笑うアルティオ。
 しかしやめる気配は一切無し。
 「…………」
 あれから三時間も経ってないぞ!?
 節操無いにも程があるだろー!!
 っていうかそこのお嬢さん!頼むから服を着てくれー!!
 目のやり場に非常に困るから!
 「ディート。お子様はあっち」
 アルティオは邪魔、とでも言うように奥の部屋の扉を指さす。
 「…………」
 確かにこのままここにい続ける気はないけど……
 でも……
 あーやっぱりこいつ腹立つ!!
 軽く笑いながらしっしっ、と追い払う仕草に……キレた。
 「こんの……!!ロクデナシ!!」
 ディートは紙袋ごとディートに投げつけた。
 ばたん、と乱暴に閉められる扉。
 「あーあ。怒っちゃったよ」
 やれやれ、と何事も無かったかのように続きに戻るアルティオ。
 こんな、にぎやかな生活が続くのだろう。
 『まるち』の住人は今日も騒がしく罵り合いましたとさ。