実は、私は大切な宝物があります。
 ある夏の日、その日は特に暑い日でした。滴り落ちる汗を拭いながら、森を歩いていました。その時「キラリ」と何かが光ったのです。
 今まで騒がしく鳴いていた蝉たちが、一瞬黙った瞬間でした。楽しそうにお喋りしていた小鳥たちが、耳を澄ました瞬間でした。
 私は「キラリ」と光った物が気になり、足を止めました。
 その時、森は全ての音を消して、ザワザワざわめく木々たちも葉すれの音を止めました。みんなそれが気になったのです。私が拾い上げるのを息を止めて見つめていました。「キラリ」と光ったように見えたのに、拾い上げてみるとただの石ころでした。誰も見向きもしないような石ころでした。石が大好きな子供でも蹴飛ばすくらいの石ころでした。
 ところが、私はその一瞬「キラリ」と光った石ころが、とても好きになったのです。
 手の中にそーっと包み込みたくなったのです。
 ボコボコのザラザラのとても醜い石ころなんです。
 誰も見向きもしない石ころが、私にとってとても個性を感じるのです。
 素朴な優しさを感じるのです。
 石ころのプライドを感じるのです。
 とても愛しく感じるのです。
 だから私はその石ころがとても好きになったのです。
 もちろん連れて帰りました。
 大切な宝を入れる宝石箱にふわふわの真綿に包んで入れました。
 石ころは嬉しそうに私に笑いかけました。
 そして一粒の涙を零しました。
 昔の昔の大昔から、何故かその石ころはそこにあったそうです。
 恐竜の足に踏まれ、原始人の子供に蹴飛ばされ、それでも石ころは我慢していたそうです。
 いつの日か、優しい人の手の中で包んでもらえる日が来るんだと、いつもそれを夢見て過ごしていたそうです。
 そして人が来ると「キラリ」と光ってみせたそうです。
 でも、誰も気づかずに通り過ぎるだけでした。
 その度に森の仲間たちは、息を止めていたのです。
 みんな石ころが幸せになる日が来ることを祈っていたのです。
 石ころは、宝石箱の仲間のサファイヤやルビーたちと並んで入れています。
 ギザギザでボコボコの醜い石ころが、私にとって一番の宝石なのです。

 〜これはここだけの私の内緒話なんです〜