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2002年も今月で終わりを迎える--------1年というのは、長いように
見えて、あまりにもあっという間で、やり遂げたこと、やり残したことが走馬
灯のように須美子の頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。
外は、凍えるように寒い。西ヶ原のどこか懐かしい古い街並も、震えている
ようだった。強い風に枯れ葉が舞う……、そんな少し侘びしげな日常の風景。
ただ、メインストリートにはクリスマスへ向けて、葉をまとっていない木立に
美しいイルミネーションが飾られ、それが何よりも救いかもしれない。
--------クリスマス、か。
須美子は小さく呟く。冴えない顔に、かじかんだ両手を口元にやり、ため息
まじりの白いものを吐いた。たとえマフラーや手袋をしても、防寒の足しにも
ならないし、この時期は……、須美子にとって、ちょっと辛いのである。
幼い頃、年も30を超えると「おばさん」だと本気で思っていたし、未だ、
27歳になっても、結婚の見込みはなかった。実家から、「一度、お見合いを
してみなさい」とか、「誰か、いい人いないの?」とか口煩く言われてしまう。
別に女が独りでいてもいいじゃないのよ、そんなこと、今の時代、珍しくも
ないし。
そう、私は開き直ってるのよ。浅見家のみなさんがやさしくして下さるし、
それに……、
私にだって好きな人ぐらい、ちゃんといるもの。
須美子はひとり立ち止まり、そう心の中で何度も何度も呟いた。
その脇を突風が吹き抜けていき、乱れた長い髪にも、手をやらずに。
--------絶対に好きになってはいけない人。
--------もっと、素直になれれば、いいのにね。
--------遠くから見てるだけでいい、ただ、それだけで……。
--------でも、それだけで……、想いは伝わるものかしら?
「どうしたんだい、須美ちゃん。ボーッと立ち止まっちゃったりしちゃってさ」
いきなり、前方から暖かみのある心地よいバリトンが聴こえて、須美子は我
に返った。
「はっ……、」
言葉にもならなかった。須美子の目の前には寒そうだが、やさしいいつもの
笑顔で語りかける浅見光彦の姿があったからだ。吸引力のある鳶色の澄んだ瞳
が須美子の体の中に熱い炎でたぎらせる。
「買い物帰りかい? それにしても、そんなところでずっと居るとさ、風邪を
ひいちゃうよ。ほら、平塚亭で団子を買ってきたんだよ。このクリスマスシー
ズンに団子を食べるってことも、なかなかオツじゃないかな?」
「光彦坊っちゃま」が少年のような輝いた顔で、須美子にふっと笑いかける。
須美子は頬を赤く染めながらも、怒ったように、
「もうっ、坊っちゃまったらっ! ほらほら、早く家へ帰りますよ。お団子は
冷めないうちに頂きましょう」
「はいはい、分かりました。ほんとにいつも君には敵わないな」
坊っちゃまの頼りない言葉を聴いて、須美子は己の迷いを捨て、吹っ切れる
ように、また心の中で「いいクリスマスであるように……」と小さく呟いた。
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