
おもな登場人物
●中禅寺秋彦−古書店『京極堂』の主人。武蔵晴明社の神主で陰陽師
●関口巽−小説家
●榎木津礼二郎−『薔薇十字探偵社』の探偵。榎木津ビルヂングのオーナー
●木場修太郎−東京警視庁の刑事
●柚木陽子−元銀幕女優、柚木加菜子の姉であり実の母
感想
「この世には、不思議なことなど何もないのだよ、関口君」
またまた好きなのだよ、京極堂のこのセリフ(*^−^*)。
さておき、これは京極夏彦の『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』です。
私が京極夏彦を知ったのは、アサミストであるヨシさんのHPを訪れたのが
きっかけなのですが、『姑獲鳥の夏』を読んで、とても続きが読みたくなって
しまいました。あの世界観--------、と言っても言葉ではうまく説明はでき
ませんけれど、こう、己の中にいる憑物が落とされたみたいでしょうか★
何せこの作品、箱だらけ!! もう箱だけで落とされた!!(爆)。
だって、文庫版の表紙をめくると、モノクロオム(モノクロームじゃなくて、
モノクロオムと書くと、いかにも京極っぽいのだv(^−^)の「美馬坂近代
医学研究所」が見られますもの。しかも、また文庫版の表紙が妖しい。箱の中
に入った少女を「魍魎」が……、どこかおぞましいけれど、美しくて...
荒井良の創った妖怪のオプジェが、京極夏彦の世界をさらに広げています。
さて、『魍魎の匣』のあらすじは、柚木加菜子という女学生が武蔵小金井駅
のプラットホームから落下した--------。偶然、東京警視庁の刑事・木場修
太郎がその場に居合わせ、加菜子の同級生・楠本頼子と駅前の派出所の巡査・
福本と共に、重体の加菜子が収容された病院へ。いかにもいわくがありそうな、
加菜子を囲む人々。その中のひとり、“姉”の柚木陽子は木場が憧れていた元
銀幕女優だった。
柚木加菜子転落事件が人々に波紋を呼んだ。楠本頼子の母は“穢封じ御筥”
という箱に“魍魎”を封じ込める霊能者にすがりついたり、箱詰めされた少女
たちの四肢が見つかり、武蔵野で連続バラバラ殺人事件が発生する。そして、
立方体の謎めいた建物--------。箱に魅入られた人たちの事件...
とにかく話はもやもやと、それこそ“魍魎”がそこにいるような、なかなか
“実体”が掴めない、読み出すと続きが気になってたまりません。
事件そのものが深く、そして“心の闇”に、“魍魎”に取り憑かれた人たち
が起こす、とどめのない悲劇はきっと読者は震えるでしょう。
とは言っても時節、榎さんとか鳥口くんあたりがとんでもないギャグをかま
してくれるので面白いです、めちゃくちゃ笑えますよう!!(⌒▽⌒)。
京極堂のおなじみのウンチクも、『魍魎〜』はけっこうさらりと読める内容
でした。京極夏彦って、つくづく引き出しが多いなあと実感しました。
本当に知識が豊富ですよねえ(^−^)。まるで、京極堂みたいv
この作品で印象深かったのは、作中に取り込まれている、ある小説家の小説
です。その内容は言えませんけれど、だんだんとエスカレートしていって正直、
読んでいて怖かったです。その小説が作品を引き立てていて、身も凍るような
演出でした。
他にも、「こんなところに伏線が!!」という要素があって、京極作品って
ページ数が多くても無駄がない。さすがだと思います。
印象に残ったセリフ
●柚木加菜子/「1」より引用
「楠本君。せいぜい月の光を浴びるがいいよ」
●鳥口守彦/「2」より引用
「そこはそれ、下心あれば親心」
●関口巽/「2」より引用
「それは社長に対するべんちゃらだ、うう」
●柚木陽子/「7」より引用
「--------木場さんは、外見が人を変えてしまうことがあると、お思いにな
りませんか?」
「母は美しい、心の優しい人でした。でも、死の床の母は醜かった。容貌では
ありません。心が、魂が鬼のようになっていた。そんな人とは暮らせません。
家族なら、夫婦なら心を癒せと、そう仰る向きもございましょうが、そんな綺
麗ごとで、日日の暮らしは成り立つものではございません。医者だった父は、
心が癒せないのなら体だけでも--------と、思ったはいたようです。たぶん
あの人は、医者としてしか母と接する術(すべ)を持てなかった。そして----
----結局治療は出来なかったのです」
●榎木津礼二郎/「10」より引用
「やあ関(セキ)君鳥(トリ)ちゃん。三日振りだねえ! そらもたもたして
ると京極に祟られるぞ」
「力のない車は廃車だ!」
●美馬坂幸四郎/「10」より引用
「馬鹿者! 人間は五体満足でないといけないとでも云うのか? 身体のどこ
が欠損しようと、命ある限り人間は人間だ! 生命の尊さに変わりはない。加
菜子は、痛んだ部分を除去しただけだ! 仮令(たとえ)一分一秒だって延命
するのが医学者の務めだ」
●中禅寺秋彦(京極堂)/「10」より引用
「一瞬でも信用してしまったら、美馬坂さん、あなたの負けだ。これが呪いと
云う、あなた方の分野では扱えない僕の唯一の武器だ」