華の下にて
著者・内田康夫(出版元・幻冬舎(著者敬称略)


カバー
下の項目をクリックすると、ジャンプします
●おもな登場人物●章タイトル●感想●印象に残ったセリフ


おもな登場人物(カッコ内は年齢です)
●浅見光彦(33)−フリーのルポライター
●丹野奈緒(15)−京都N女学院高等部1年


章タイトル
●プロローグ
●第1章 丹正流華道宗家家元
●第2章 国際生花シンポジウム
●第3章 叡山電鉄
●第4章 祇園の娘
●第5章 六条御息所
●第6章 女たちの反逆
●第7章 嵐山吉兆亭
●第8章 鬼の棲家
●エピローグ


感想
 内田康夫ミステリーの第100冊目--------『華の下にて』です!!

 昭和55年に内田康夫が『死者の木霊』を自費出版して早15年、浅見光彦
シリーズが人気になりベストセラー作家へ...

 そして、とうとう内田康夫は第100冊目の小説を出した--------。

 私はこの『華の下にて』が出版される時、まだ中学3年生でした。浅見光彦
倶楽部に入ったのも中学3年生の春、そういえば平成7年(=1995年)は
私にとっても、内田康夫にとっても思い出になった年でもあります。
 この年の12月8日には、フジテレビ系列の「金曜エンタテイメント」で、
榎木孝明さん演じる浅見光彦シリーズがスタート!! アサミストにとっては
「やったー!!」という感じでした\(^▽^)/。


 それで、浅見ジャーナル(浅見光彦倶楽部の会報誌。浅見光彦倶楽部は内田
康夫公認の浅見光彦のファンクラブです)がうちに来た時はもう--------、

 私は言葉を失いました。嬉しくて嬉しくて、この気持ちをどう表せればいい
か分からないくらい嬉しかったです……。

 ジャーナルのトップページには、「内田作品100冊突破記念号 『華の下
にて』刊行!」と、内田康夫のコラム「101冊目へのステップ」があります。

 そして--------、そして--------、ウラには!!

「季節は移ろい、時は流れ、美しく咲きほこった桜は
 はかなく散ってゆく。
 心の奥底で秘められた情念は、やがて絢爛たる殺意に変わる。
 巨大権力と化した華道の宗家をめぐり
 殺人事件は起きた--------。
 花咲き乱れる古都が覆い隠す謎に、浅見光彦が果敢に挑む」


「浅見光彦、京都へ」

 私は「すごい!!」の一言でした(^−^)。


 さて『華の下にて』のあらすじは、台風17号が伊勢湾を北上中の日、岐阜・
荘川村のダム工事現場の監視小屋で牧原という青年が、「六条」と名乗る若く
美しい女と出会い、ふたりはなりゆきから一夜を共にすることに。翌朝、女は
牧原の前から姿を消した代わりに、崖下で男が死んだことを知る。
 そして時は流れ、京都では華道の丹正流(たんせいりゅう)宗家家元の孫娘・
丹野奈緒(たんのなお)は高校の入学式の日、父・博之が読んでいた新聞に、
「東山で殺人/東京の雑誌記者」という記事の被害者の写真を見て、その顔に
見覚えがあった。

 一方、華道の世界ではハイオニアである「日生会」の牧原良毅(よしき)は、
茨城県土浦市真鍋小学校の「お花見集会」で、マスコミのなか講演を行った。
 その時、牧原は「旅と歴史」の取材で、フリーのルポライター・浅見光彦の
インタビューを受ける。

 浅見は浅見で、「旅と歴史」の編集長・藤田に京都へ取材に行くように言わ
れた。藤田から「国際生花シンポジウム京都大会」の取材をしようとしていた
記者が東山で殺されたという話を聞いて、浅見は取材と、記者の事件の捜査に
乗り出す--------。


 『華の下にて』のポイントは、やはりプロローグ。牧原と「六条」と名乗る
女のエピソードがあるからこそ、のちの事件に繋がっていって、ラストへ行く
ところがすごいです。内田康夫はプロット(あらすじ、物語の流れ)なしで、
そのままワープロのキーボートを叩いて物語を作るのだから、本当にすごい!!

 私が『華の下にて』を読んで、きっと……共感というのでしょう、ヒロイン
の丹野奈緒とその同級生の鷹取美鈴にすごく感情移入してしまいました。ちょ
うど私が中学3年生の15歳で、奈緒たちは高校1年生の15歳と言うことで
彼女たちの気持ちがすごく分かって、ふたりとも今でも好きです。


 『華の下にて』は華道を通し、男と女、親と子、それぞれの関係がぶつかり
ます。喜び、怒り、悲しみ、そして愛が私の胸に深い感動を刻みました。


印象に残ったセリフ
●丹野奈緒/「第1章 丹正流華道家元」より引用
「もう十分成長してるって。どうぞご心配なく。子どもは親が思ってるほど
 子どもじゃないのよ。それより、親の元から早く巣立つって、
 大切なことだわ」

「パパはママの言いなりだもの、だめよ」


●丹野真実子/「第1章 丹正流華道家元」より引用
「そんなことを言っているから、あなたたちは大成しないの。
 伝統を後生大事に受け継いでいるだけではだめ。つねに殻を破って、
 制約や約束ごとに縛られない、新しいものを創っていかなくてはね。中略」


●浅見光彦/「第1章 丹正流華道家元」より引用
「それは分かりますよ。生け花の究極は形ではなく、心なのでしょう?」

「そんなことありませんよ。お母さんの生け花はじつにいいと思うな。
 自由奔放にのびのびとしている」


●浅見光彦/「第2章 国際生花シンポジウム」より引用
「それでしたら、女性が家元になってもおかしくないのじゃないでしょうか。
 どこの世界でも、優れた資質を持つことが、唯一、後継者の条件で
 あっていいと思いますが」


●牧原良毅/「第2章 国際生花シンポジウム」より引用
「芸術とは一人一代かぎりのものです。伝承しようとした瞬間から、
 それは芸術としての価値を失うのではないでしょうか。
 私の作品には伝承性はまったくありません。中略」

「そうだといいが、常識や既成観念を打破するのは、なかなか難しい」


●鷹鳥美鈴/「第4章 祇園の娘」
「うちはお父さんのほんまの子とちがうんよ」

「奈緒ちゃんは幸せなひとやもんね。
 少なくとも、信じていられるだけ、幸せいうことやわ」

「ほうら、奈緒ちゃんは逃げるやろ、聞きたくない、見たくない言うて、
 うちは逃げられへんもの。逃げるんやったら、死ぬしかないもの」


●丹野奈緒/「第6章 女たちの反逆」より引用
「薄汚くなんかありません。それは、常識からはみ出しているけど、
 作品の迫力や美しさはすごいと思います。
 丹正流の生け花にはない魅力がありますよ」


●浅見光彦と丹野奈緒/「第6章 女たちの反逆」より引用
「訊かないと、失礼かな?」
「そうじゃありませんけど……でも、つまらない」

「どうするか、分かりません。分からないから家出をしたんです」
「つまり、逃げたんだ」

「逃げても、現実は何も変わらないよ。よくなるどころか、
 かえって悪いほうへどんどん進んでしまう」
「悪くなったって、そんなの、私のせいじゃありません」

「それって?」
「きみがいま『私のせい』と言った。その『せい』が大切なんじゃないかな。
 これからはきみの『せい』で何かが動くようになる。
 きみの『せい』で物事を変えてゆくことができるようになる。
 『せい』という言葉は責任と権利の代名詞だ。丹野奈緒の『せい』で、
 きみの周囲が、それに丹正流のすべてが変わるかもしれない。
 そのことを考えてみたら?」


●丹野奈緒/「第6章 女たちの反逆」より引用
「私、帰らないと……」


内田康夫ミステリーの感想と紹介のページへ戻る
トップページへ戻る