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静かなる暗殺機械
(人獣戦記・1)


 本作の出自は「【異形化】人外への変身スレ第四話【蟲化】」の81様、381様、382様=NQ64vG8i様らが設定を練り上げ、399様(〜401)によるSSも登場した学園ものにあります。具体的には、スレ上で示されたNQ64vG8i様の案になる下記設定の一部がmaledictのツボを刺激してしまい、SSになったという経緯です。関連箇所を引用しておきます(改行は成形してあります)。
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394 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2009/09/17(木) 11:37:16 ID:NQ64vG8i
>>391だが
物語の序盤の設定は、
 世界には知られていないが獣人の存在は昔からいた。獣人達は人間より高度な知能と強靭な獣の肉体を持っている。『愚かな人類は我等獣人に管理されるべきだ』という思想が獣人達に広まる。
 そして現代、人類との戦争が勃発。戦争中期には高度な知能と優れた肉体を持っていた獣人も、数に押され始める。しかし、獣人達は人間を獣人にする技術を開発。支配地域の人間・捕虜を獣人化。この頃に獣人同士の子供である純血種と、人間から獣人になった雑種という差別化が起こる。戦争後期、純血の獣人と比べると能力の低いが数の多い雑種獣人により人類敗北。というのが本編始まるまでの設定。〔*以下省略させて頂きます、引用者〕
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 投稿時の表題は「獣人vsレジスタンスscene2」。senene2とあったのは、同時並行して書き始めた(本作up時にもまだ書けていない)scene1よりもこちらが先に仕上がったからです。また、上記設定によると人類軍がレジスタンス化する=敗北するのはもっと後であるのに、投稿時には人類軍を「レジスタンス」と表記しており、幾分の不整合がありました。以下はその不整合を(やや不十分ながらも)正し、内容にも多少のリライトを加えたものです。

 ――古来より存在した、人類より高い知能と強靱な獣の肉体を備えた種族、獣人。彼らの間に「愚かな人類の獣人による支配」という思想が広まったとき、獣人と人類との間に戦争状態が勃発した。
 獣人の人類制圧は当初一方的なペースで進み、獣人によるこの惑星の支配もほぼ間近と思われた。だが、集団としての人類の底力は獣人たちの予想をしのぐものだった。獣人と人との戦闘によって荒廃した廃墟に、あるいは、獣人の支配する都市の内部で密かに、人類の抵抗勢力はゆるやかな共同戦線「統一人類軍」を再結成し、ゲリラ的な反撃を開始した。高い知能と強靱な肉体を誇る獣人軍にも、数の上での圧倒的不利を補う術だけはなく、人類軍の反攻は着実に進みつつあった。
 しかし獣人軍は、この状況を一挙に覆す切り札を投入した。
 ――人類の獣人化の技術である。
 この新たな戦術によって獣人と人類のパワーバランスに新たな不均衡が生じ、戦況の行方は再び混沌とし始めた。ここに述べるのはそのような時期の一つの記録である。

 獣人軍の要塞都市、シャークシティ。街全体の入り口である巨大な門の前に、コート姿の女が立つ。女が誰であるかを認めた守備兵たちは、さっと青ざめ、一斉に銃を構え、女に向ける。
 突きつけられた銃にひるむ様子もなく、女が淡々と言う。
「銃は下ろしていいわ。抵抗する気はないの。ほら」
 女はそう言ってコートのボタンを外し、ぱさりと脱ぎ捨てる。
 その下から現れた肉体は、何の衣類もまとっていない。
 すらりとした、それでいて豊満な、そして、鍛え上げられ、あちこちに傷のある裸身をさらした女は、両手を上に挙げて言う。
「あなた方の軍門に下るわ。わたしを獣人に改造して」

 ネズミの獣人である守備兵たちは警戒を解かず、女に銃をつきつけ、通用口の前のゲートを顎で指示する。獣人の一人は詰め所の中の通信機に向かい、内部の上司に連絡を取る。
 女が素直にゲートの中に入ると、通信機から女性の声が響いてくる。
「ふん。爆弾の類を体内に隠し持っているわけではなさそうね。だけど、たちの悪い細菌兵器の類を隠していたり、あるいは本人が感染している可能性もあるわ。検査車両を回すから、そのままそこに留め置きなさい」
 やがて検査車両が到着し、女を収容する。血液検査、胃洗浄、浣腸、膣洗浄。さらに、体中の傷のうち、比較的新しいものにメスが次々に当てられ、危険なものを埋め込んだ手術痕でないかどうか、確認がされる。そんな屈辱的で残酷な扱いを受けながらも、女は終始無言で、冷静な表情を崩さない。
 数時間の検査が終了し、担当者が通信機に向かう。連絡を受けた担当者は運転者に指示を出し、検査車両は女を乗せたまま発車する。

 後ろ手を縛られた先ほどの女が、鮫の獣人の座る玉座の前に引き出されている。獣人は女を見下ろし、愉快そうに言う。
「獣人になりに来た、という言葉に嘘はないのね?『人類軍のジャンヌダルク』と言われたあなたが、どういう風の吹き回しかしら?」
 全裸の女、通称ジャンヌは静かに答える。
「戦いの中で、人間であることの弱さ、醜さにようやく目覚めたの。 わたしは人間である前に一人の戦士。そして戦士の美徳は強さ。より大きな 強さを手に入れるには、獣人になるしかない。それに気付いたのよ」
 鮫の獣人はくっくっくと笑って言う。
「そらぞらしいわね。顔に嘘だと書いてあるわ。何をたくらんでいるのかしら?……でもいいわ。お望み通り、あなたを獣人にしてあげる。お気に入りの動物があれば言いなさい。意向は極力尊重してあげるわ」
「ならば、猫に」
「猫?……ううん、豹か虎ではだめかしら?」
「いえ、どうしても猫に。……昔、ミーニという名の猫を飼っていた。だけど不幸な事故で死んでしまった。獣人に生まれ変わるなら、あの子と同じ種族になりたいの」
 考え込んでいた鮫女は、猫族の長らしい獣人に声をかける。
「何とかならない?この女はそこらの人間とは違う。第一級の戦士なのよ。意向は尊重してやりたい。それに、知ってのとおり、愛する種族への獣化は、精神の獣化を促進させるわ」
 考え込んでいた猫族の長は渋々という口調で言う。
「昨日、敵前逃亡の罪で投獄されたオスがいます。彼に、刑を免除する代わりに『獣化役』を委ねるお許しを頂ければ」
「いいわ。許可します。連れて来なさい」
 やがて刑吏に捕縛されたオス猫の獣人が連れられてくる。獣人は怯えきった顔をしている。
「堪忍して下さい!『獣化役』なんてごめんです。何でもしますから」
「黙れ。我らが主直々のご命令だ。おとなしく従うのだ」
 猫族の長にそう怒鳴りつけられ、オス猫の獣人はうつむくしかない。
 鮫女が言う。
「我らがこの戦に勝つためには、優秀な人間たちをもっともっと同族に取り込んでいかねばならない。意識改革が必要だ。いいわ、今後もし鮫の獣人を希望する男の人間が現れたら、わたしが獣化役を引き受けましょう」
 一同は唖然として鮫女を見つめる。猫男もそれを聞いて覚悟を決めたようだ。
「その女を獣化させればいいんですね。わかりました。薬を」
 手渡されたフラスコの中の緑色の液体を、猫男は目をつむり一気に飲み干した。猫男はたちまち苦しそうな顔になり、ひざをつき、腹を抱えながらうずくまる。
「……うう、うう……ぐわああああああ……」
 猫男の全身から緑色の粘液のようなものが染み出してくる。そしてそれに押し流されるように、猫男の全身の毛が抜け落ち、粘液と共にどろどろと床につたい落ちる。猫男は仰向けになり手足をばたばたさせる。
「ぐわああ!ぐわあああ!」
 やがて痙攣のような発作がやみ、同時に猫男の股間のものが固くそそり立つ。今や一本の毛もなく、緑色の粘液に覆われた奇怪な猫男が、仰向けのまま深呼吸をしている。
「準備ができたようね。始められるかしら」
「お任せを」
 むっくりと立ち上がった猫男は、後ろ手を縛られ床に座らされているジャンヌに近づく。ジャンヌの表情はさすがに固くなる。猫男は彼女の後ろに立ち、無造作にその尻を持ち上げ、後背位の姿勢でいきなり陰茎を挿入する。
 くっ、という声がジャンヌから漏れる。猫男は腰を動かすことはせず、背中から彼女にしがみつき、その胸を両手でわし掴みにする。そして自分の全身から流れ出ている粘液を抱きすくめた女の体に塗りつける。
 ぬちゃ、ぬちゃ、という音と共にジャンヌの体もまた緑色の粘液に覆われていく。ジャンヌは眉間にしわを寄せ、襲い来るただならぬ感覚を必死でこらえている。やがて彼女の顔から足先まで完全に粘液が塗られると、猫男はようやく腰を前後に動かし始める。その顔に、ここに連れられてきたときの嫌悪の表情はもはやない。今や猫男は薬物の与える歪んだ衝動の虜となり、快楽に陶酔しきった顔で、夢中に腰を動かしている。
「おお!おお!おおお!うほぉおっ!!!」
 猫男が絶頂に達する。同時にジャンヌも堪えきれない様子で悲鳴をあげる。
「ああ!あああ!何か!何か入ってくる!!入ってくるぅぅ!」
 陰茎が引き抜かれ、全身から糸のように粘液を引きながら、男が離れる。その前にいる、陰部から緑色の液体をしたたらせたジャンヌが苦しみ始める。うつぶせのまま、体を丸め、とどめようもなく生じ始めた急激な変化に抗しようと無駄なあがきをする。全身から黒い毛が生え、耳はとがり、瞳孔の形が変形する。口からは鋭い犬歯が生え、触毛がのび、指からは鋭い爪が生える。
「ああああああ、があああ、がああああ、ぐああ、ぎゃああ…んぎゃああ、んゃああああ…にゃああああああああああああああ」
 猫そのものの鳴き声をあげたとき、ジャンヌの変形は完了する。床に座る生まれたばかりの獣人が、ぜえぜえと荒い息をあげながら、うつろな目で自分の手足を見つめている。数人の召使いが粘液を洗い落とし、タオルと送風機で乾かすと、そこに現れたのは真っ黒でつややかな毛を持つ美しいメスの猫獣人である。
 そんな彼女に玉座の上から声がかかる。
「さて、これであなたも晴れて獣人になったわけだけど、ご承知の通り、獣化は人間の思想を変えることはできない。もちろん、あなたが本当に獣人になりたくてここに来たなら、何の問題もない。だけど、何かよからぬ計画を腹に抱えてきていたとしたら、そのよからぬ計画は消えずにその腹に残り続けている。だから、わたしたちとしては、しばらくの間あなたから目を離すわけにはいかない。あなたが本当に心までわたしたちの同族になったと確信できるまでは、不自由な思いをしてもらうわ」
 獣化の衝撃から早くも立ち直り、先ほどの冷静さをとりもどしていたジャンヌは、平然と答える。
「にゃあ。労働力の無駄使いよ。言ったでしょ。わたしは獣人に憧れてここに来たの。こうなれて心からうれしいし、仲間たちと一緒に人間を狩りたくて、この新しい体を早く使ってみたくて、うずうずしてるわ」
 顔を歪めて笑いながら鮫女が言う。
「その冷静な口調が怪しいのよ。油断のならない女。とりあえず、まる三日間、『特別メニュー』を用意するわ。その後にちょっとしたテストをする。それで判断することにするわ」
 そう言ってから部下たちに向き直り、命令を発する。
「『特別室』にこの女を連れて行きなさい。それから『導き手』に例の四人組を向かわせて。……考えてみると、あの女が猫を選んだのはとても好都合だったわね」
 鮫女は次に、所在なげに立ったままの猫男に目を向ける。男は薬の効果が切れてきたらしく、人間の女と交わるという、不自然でおぞましい行為への不快感が蘇ってきた様子だった。そんな様子を気の毒そうに見ながら、鮫女が声をかける。
「ごくろうだった。賓客用の個室を用意しておいたから、毛が生えそろうまでゆっくりと休むがよい。いずれ帰宅も許そう。なに、心配せずとも、お前の新たな任務については家族にも同僚にも他言無用との箝口令が張られているはずだ。それと、お前がよければだが、あの猫女の『導き手』に加わる気はないか?お前はあのメスにとって特別な存在だからな」
 猫男は感きわまりない、という顔で主を顔を見る。
「手厚いご配慮。ありがたきことにございます。ただ、『導き手』の件は、恐縮ながら辞退させて頂きます。不快だからではありません。全く逆です。あの人間は、とびぬけて美しい猫女に生まれ変わりました。これ以上彼女と関われば、私は彼女が忘れられなくなるでしょう。でもそれは困るのです。私には妻も子供もいます。私は家庭を壊したくはないのです」
 そう言って猫男は去っていった。

 後ろ手を縛られたまま、ジャンヌは「特別室」に放り込まれた。特大のベッドのある、高級ホテルの一室を思わせる部屋である。やがて四人の、猫族の基準で言うと飛び抜けた美男子と言うべき、上品な毛並みの男たちが入ってきた。
 一人が代表して、優雅に一礼してからジャンヌに声をかける。
「やあお嬢さん。君の『導き手』に選ばれたメンバーだ。よろしくお見知りおきを」
 それから「導き」が始まった。四人の猫男は、上品に、しかし激しく、淫猥に、それぞれの仕方で猫族の性の手ほどきをジャンヌに加えた。その傍ら、猫族であることの喜び、誇り、それに彼女が猫族のメスとしてどれほど美しいか、他方で人間とはいかに惨めで卑小で下らない生き物であるか、そういった言葉を巧みに、新生した猫女に吹き込んでいった。
 ジャンヌは戸惑い、ためらい、怯えながらも、着実に猫族のメスとしての性に目覚め、やがて恥じらいもかなぐり捨てて美しいオスたちの性技に溺れ、同時に猫族としての誇りに目覚めていった。――少なくとも、そんな変化が彼女に生じている、としか思えない反応を彼女は一貫して呈していた。
 
 三日間の「導き」を終え、優雅な男たちとの別れの朝が来た。
「今はさよならだ。だけど、近いうちにまた会おう。今度は仕事じゃなく、一人のオスとして君に会いに来る。そのときは、僕たちはみなライバルさ。勝つのは僕だろうが、他の三人も同じことを考えているのは否定しないよ」
 その言葉に他の三人がぷっと吹き出す。ジャンヌもくすっと笑みを漏らし、それから名残惜しそうに手を振り、四人のオスを見送った。
 オスたちと入れ替わりに、ものものしい装備に身を固めた警備兵が入り、ジャンヌを再び拘束すると、地下に設けられた広間のような部屋に連行した。
 部屋にいた人物を見て、冷静だったジャンヌの表情にほんの数ミリ秒、驚愕の表情が浮かぶ。
「……タエコ!」
 タエコと呼ばれた犬女が、片手に鞭を携えながら、冷たい笑みを浮かべ、ジャンヌに声をかける。
「お久しぶり、ジャンヌ。正直言って、ちょっと驚いているわ。あなたがこんなに賢い人物だったなんてね」
 犬女の足下には、全裸のひ弱そうな男が、両手を縛られ、全身にあざと傷をまといながら、ぐったりとうずくまっている。男はジャンヌの顔を見て、驚きと悲しみの顔を浮かべて言う。
「ああ!ジャンヌさん!話は本当だったのか?何で……どうして……」
 犬女タエコは男に一発蹴りを入れてから言う。
「テストというのはこの人間。この人間をあなたがみごとに殺せたら、あなたの監視を解くわ。そういう通達なの」
 ジャンヌの表情は動かない。タエコの言葉の意味をじっくりと反芻している様子である。

 タエコは、ジャンヌとは別のゲリラグループの幹部だった女性である。ジャンヌたちのグループとは何度か共闘をしていた。
 そのタエコのグループが作戦に失敗し、敗走中のタエコが獣人たちに拉致されたのは一ヶ月前のことだ。泣き叫びながら連れ去られていくタエコの姿を目撃した、ごくわずかの瀕死の生残兵の証言は、近隣グループに大きな衝撃を与えた。――人間の獣人化、という恐ろしい新戦術を獣人側が採用した、という事実がようやく確認され知れ渡った時期である。殺害ではなく拉致、という敵の行動が、タエコの獣人化を狙ったものであることはほぼ明白だった。
 果たしてそれから二週間後、主要幹部しか知り得ない極秘情報を押さえているとしか思えない攻撃が始まり、人類軍の敗色は一気に濃厚になった。戦場でタエコらしい獣人を見かけたとの証言も入り始めていた。――そのタエコが、やはり予想された通り、身も心も獣人化してジャンヌの前に立っているのである。
 タエコの足下の青年も、ジャンヌには見覚えがあった。半年ほど前、タエコのグループに入った新入りである。正義感は人一倍あるが、体力が追いつかず、足手まといになりかねない兵員だったという記憶がジャンヌにはあった。
 タエコが青年を足で転がしながら言う。
「獣人化する価値もない男よ。どう?殺れるかしら?」
 愉快そうな顔で聞いてくるタエコに、ジャンヌは固い表情を崩さず、静かに答える。
「この人間を殺せば、わたしが本当に心から獣人のために戦うつもりだと、信じてもらえるのね?」
 タエコは答える。
「言っておくけど、ただ殺せば合格というわけでもないわ。あなたのためらいや動揺、そういったものも含めてこちらは判断させてもらう」
「面倒なのね。いいわ。さっさと済ませる」
 そう言ってジャンヌは青年に近づく。青年は怯えてジャンヌに訴える。
「やめてくれ!あんたは人類の希望だったじゃないか!そんなあんたが、こんなに簡単に、心まで獣人になっちまうなんて!……いやだ!死にたくない!死にたくない!しに……ぐはっ」
 ジャンヌの鋭い爪が青年の喉元を切り裂いた。首から噴水のように血を噴出させ、青年は絶命した。
 タエコが目を丸くして言う。
「お……お見事!自分で心まで獣人になったつもりでいても、なかなかこうは思い切れない。何ヶ月かは無意識のためらいが生じるものよ。……あんた、本当に、人類を裏切る気満々なのね」
 ジャンヌは冷静な口調を崩さずに言う。
「わたしは昔も今も自分の強さだけを目指してきた。人類軍で戦うことも、獣人になることも、わたしにとってはそのための選択肢でしかない。それだけよ」

 程なくしてジャンヌの監視は解かれ、ジャンヌは高級な個室を与えられた。しばらくは一兵卒として働かねばならないが、ある程度実績を積めばすぐに指揮官の地位を与える、という約束ももらっていた。
 三日後、早速ジャンヌは小規模な戦闘に参加し、ただ一人で人間の兵士十人殺害、三人を拉致、という驚異的な戦績をあげた。

 その翌日の夜。鋭敏な獣人族の感覚をかいくぐるようにして要塞都市内を駆け抜ける一つの影があった。
 ジャンヌである。
 ジャンヌは行き先は、その晩六件目の訪問先である市内中央図書館であった。衛兵のトカゲ獣人がジャンヌに気付き、うれしそうな驚きの表情を浮かべ、問いかける。
「ジャンヌさんじゃないですか!お久しぶりです!でも、一体、こんな時間になにをうぐ…」
 人間時代顔見知りだった衛兵二人を瞬殺したジャンヌは、カギを奪い図書館に入る。目当ては地下にある情報アーカイブ倉庫と、極秘地下通路の入り口である。
 監視が解かれてわずか五日足らずで、ジャンヌは隠密行動と驚異的なハッキング技術で、この要塞都市の急所となるべきいくつかの地点や施設の目星をつけていた。その情報を元に今夜、半ば見切り発車で行動を起こしたのだ。もうあまり時間がない。そんな焦りがジャンヌを行動に駆り立てた。
 元々もっていた高い戦闘能力に、生来の暗殺者である猫の能力が加わったジャンヌは、まさに静かなる殺人マシーンだった。地下の衛兵を殺害し、軍事機密をハードディスクごと奪うと、赤外線監視装置をすり抜け地下通路に入り、要塞都市の外に脱出する。
 要塞都市の近くの森に、ジャンヌは小型バイクと、「糸電話」と呼ばれる、傍受の危険がほぼ皆無の原始的な機構のアナログホットラインを隠していた。バイクに乗りながら「糸電話」を操作したジャンヌは、早速通信先の人物に報告を始めた。
「ミツコ?わたしよ。いくつか犠牲も払ってしまったけど、肝心の作戦は上首尾よ。あと五分たらずで、弾薬庫が大爆発を起こすはず。情報インフラも一昼夜は麻痺するように仕組んできた。それから、例の地下通路の全容と、その他最重要機密のいくつかも奪えたわ。これで要塞都市は丸裸と言ってもいい。今なら、残りの戦力で十分に陥落できるはず。あとは、手はず通り……」
 ジャンヌは言葉を濁した。その「手はず」とは、ジャンヌにも、ミツコにも、決して手放しで歓迎できるような計画ではなかったからだ。
「……いいえ。計画を変えるつもりはないわ。……都市の中で、タエコに会った。わたしのように面従腹背ではなく、噂通り、完全に心まで獣人になっていた。……ううん。わたしには分かるの。だって、わたしだって、多分一ヶ月、いえ、あと一週間もしたら、自分がどうなっているか責任がもてない。……獣人になる、というのはそういうことなのよ。もうあまり時間がないの。でも、今ならまだ大丈夫。わたしはまだ十分わたしのままでいる。そして今なら、手はず通りにことを進めて、力を結集すれば、人類にはまだまだ勝機はある」
 自ら獣人を志願し、内部から要塞都市を陥落する。そんな一か八かの賭が、ジャンヌとその同志が選んだ起死回生の作戦だった。敵を欺くにはまず味方からの原則で、ごくわずかのメンバーにしか真相は知らされていない。
 そして、作戦の最後の、決して外せない仕上げは、ジャンヌの死をもって完結する手はずだった。それが当初からの大前提だった。さもなければ、この捨て身の作戦が、裏目に出る危険性が常にあったからだ。
 すなわち、ジャンヌが意志を貫けず、心まで獣人に屈してしまう危険性である。
 そうなってしまったジャンヌは、「重要機密」と称して人間どもを陥れる危険な罠を差し出してくるかも知れない。だからこそ、ジャンヌはその情報の真実性を証明するために、自らミツコの手にかかり死んで見せなければならない――ジャンヌが何度も何度もミツコに言い聞かせた、作戦の仕上げである。
「わたしがこのまま、心の底まで人類を脅かす危険な存在になってしまう前に、わたしはこの世から去らなければならない。それにわたしはもう、作戦のためとはいえ、何人も何人も大切な同志をこの手にかけてしまった。罪を償うという意味でも、わたしは死ななければならないのよ」
 ジャンヌは自分自身に言い聞かせるようにミツコにそう言い聞かせた。
「いい?わたしが敵のスパイかも知れないという可能性は忘れずにいて。間違っても新しいアジトにわたしを連れて行ってはだめ。待ち合わせた場所でわたしからディスクやその他の情報を受け取ったら、その場でわたしを殺すのよ。いいわね」
 そう言ってジャンヌは回線を切った。以前から決めていた場所はもう目前だった。

 落ち合う予定の場所である廃ビルにジャンヌは入っていった。月のない曇り空の下、ビルの中は夜行性の獣の視力をもってしても容易に見通せない暗闇である。その中を記憶通り、指定した部屋に進む。やがて闇の中に、生き物の気配と臭いをジャンヌは感じとる。だが……
「誰?ミツコじゃない?というよりも、生身の人間じゃない!?」
 漆黒の闇の中に、夜行性動物用のほの暗いライトが灯される。そこに浮かんだ顔を見たジャンヌは愕然とする。
「タエコ!?どうして……どうしてここが……」
「詳しい説明はあとでたっぷりしてあげる。とりあえずそこを動かないことね。わたしはあなたの大事なお仲間に銃を突きつけている。動いたら彼女を殺すわ」
 ――ミツコを殺させるわけにはいかない。ミツコは自分の身の潔白を証明するための大事な証人だ。無論、それだけではない。大事な戦友であり、そして……――
 観念したジャンヌは両手をあげる。やがて、一分と経たない内、どこに潜んでいたのか、数人の獣人がジャンヌに超合金製の手錠をかけ、拘束する。
 犬女タエコは、ふうと一息つき、あきれた、という口調で話し始める。
「あなたがただの直情戦争女であるだけじゃなく、心理戦にもこんなに長けていたとはね。やっぱり見直さざるを得ないわ。でも、作戦の要となるはずの爆弾は全部撤去させてもらった。情報網の混乱の方はすぐには復旧できないけど、心配しなくとも、要塞都市に攻め込むだけの兵力は、もうこの辺の人類軍には残っていない。あなたがしたことは結局、要塞都市の中の新参者のもと人間の兵士三十一人を殺しただけ。これから、いくらでも補充が効くようになる兵力をね」
 激しい絶望と無力感がジャンヌの表情に一瞬浮かぶ。だが強い意志の力がそれをねじ伏せ、いつもの冷静な表情を作り出す。
「おやおや。見上げた根性ね。素直にほめてあげるわ。あなたのトリックと一緒にね」
 タエコは意味ありげな笑みを浮かべて、話し出した。
「色々と聞かせてもらったわ。あなたが飼っていたミーニって、猫ではなくてハムスターだったそうね。そして、そのミーニを惨殺したのは野良猫。以降、あなたは猫を何にも増して憎悪するようになった。あなたが一番なりたくない動物こそが猫だった。我らが主は、あなたの猫好きということばにまんまとはめられてしまったのね。
 それから、あなた、男性を愛せない女性だったのね。どおりで、そこにいる色男たちに籠絡されなかったわけだわ。あたしなんか、種族が違うのに十分どきどきしちゃう、とびっきりのいい男なのにねえ」
 目をこらしてみると、自分を捕縛しているのが例の四人組だということがジャンヌにはわかった。
「やあ、お早い再会だったね。にしてもあれが全部演技だったなんてね。ちょっとだけ自信喪失しちゃうなあ」
 自信満々の口調で猫男はそんなことを言う。それを聞いたタエコが苦笑しながら先を続ける。
「心の獣人化を促進させるのは、何より獣人への肯定的な感情。愛する者が獣人になれば、愛する者への愛はすぐに獣人全体への愛に転移する。この心の仕組みは止めようがない。理性も意志もねじ曲げて、獣人への愛が心を占め、二度と消すことはできなくなる。……だからね、わたしたちはあなたに、こんなプレゼントを用意したの」
 その言葉と共に小型発電機が動き出し、、廃墟の部屋に人間でも目もくらむような照明が点灯する。それに照らされた、タエコの背後でうずくまっている人影は……
「ミツコ!ミツコなの!?……獣化……させられて……しまったの?」
 そこにいたのは、ハムスターの獣人に改造されてしまったミツコだった。そのうしろには、他の数人のメンバーがやはり獣化された上に手足を縛られ、暗い顔で座り込んでいる。
 勝ち誇ったようにタエコが言う。
「どう?この生まれ変わったミツコさんを、愛さずにいられるかしら?あなたの最愛の女性を。そして、あなたが何よりも愛した動物の種族を!!」
 そんな言葉を聞くまでもなく、ジャンヌの仮面はひび割れ、砕けていた。その頬は上気し、心臓は早鐘の如くに鳴り響く。「目がハート型になる」というのは恐らくこのような表情を指すのだろう――ああ、なにこれ!ぷりちー!ぷりちー!!なにそのしっぽ!なにその耳!!ああ、しかもそのお顔はちゃんとみっちのまんまじゃん!! かわいい!!抱きしめたい!!きゅうううん!!きゅううううん!ああ、 まるでミーニが帰ってきたみたいだよ!!ミーニが人間になって生まれ変わってきたんだね!わたしのだい、だい、だーいすきなみっちになって!!!……――
 戦闘マシンとなり、すべての感情を押し殺してきた通称「ジャンヌダルク」の心に、暴力的なまでの「愛」が注ぎ込まれ、まさにその主導権を握ろうとしていた。
 その感情に追い打ちをかけるように、ミツコは悲しそうな顔でジャンヌに告げる。
「ジャンヌ、もうおしまいだよ。これからは獣人として生きていこうよ。一緒なら、わたしはいやじゃない。ジャンヌだって、すぐにいやじゃなくなるはずだよ」
 ジャンヌの心に疑問が浮かぶ。いくら何でも、心のの変化が早過ぎはしないか?一体、ミツコに何が起きたのか?
 その疑問を見抜いたように、ミツコは立ち上がり、部屋の奥に置いてあるディスプレイのスイッチを入れながらジャンヌに言う。
「ねえジャンヌ、聞いて。もう、人間界にあなたの居場所はないの。わたしたちの一か八かの賭は、完全な失敗に終わったのよ」
 ディスプレイに映った映像は衝撃的なものだった。
「な……いつのまに、いったい、どこにカメラなんか……」
 うろたえるジャンヌの前に繰り広げられていた映像は、あの地下広間でジャンヌがひ弱な青年を眉一つ動かさずに殺戮するシーンだった。さらに、その後の戦闘でのジャンヌの残忍な戦いぶりも、逐一記録されていた。
 ミツコが悲しそうに言う。
「この映像が、全世界に何十回と放映されたわ。人類の最後の希望、ジャンヌダルク堕つ!というテロップと共にね。この衝撃は人類軍の士気と戦意を削ぎ、大量の脱落者を生んだわ」
 くっくっくと笑いながらタエコが注釈を加える。
「わたしのアイデアなの。隠し撮りなんて全然気付かなかったでしょ?こういう陰湿な作戦は、純血種には思いつかないらしいのね。わたし自身にも絵になりそうないいシーンはたくさんあったんだけど、一つも映像が残っていないの。まあ、あったとしても、あなたほどのインパクトはなかったでしょうけどね」
 暗い声でミツコがそのあとを続ける。
「あなたがあてにしていた人類軍の『十分な戦力』なんて、もうどこにも残ってはいない。要するに、わたしたちは負けたの。象徴であるあなたの降伏によってね。……人類のだれも、あなたほど強くはなかった。それがあなたの誤算。わたしたちのアジトもすぐに突き止められ、あなたを送り込む作戦もあっさりばれたわ。あなたは泳がされていただけだったのよ。
 そしてまた、残りの人類の誰も、決してあなたが人類の味方だなんて思ってくれないわ。わたしたちの作戦を知る者はほんの数人。ここにいる、獣化されてしまったメンバーだけ。だからもう、あなたを受け入れる人間はどこにもいないの。あなたとわたしが帰るべき場所は、獣人の世界だけなのよ!
 ねえジャンヌ。みんなで獣人として生きようよ。みんな一緒なら、前とはそんなに変わらないはずだよ。これからこの世界は獣人の世界になる。それだけのことだよ」
 いいながらミツコはジャンヌに接近し、後ろ手に拘束され、床にうずくまるジャンヌの頬に手を当てた。
「獣人への愛がまだ足りないなら、わたしが手伝ってあげる。もっともっとわたしを愛して!わたしを愛せば、あなたの心は獣人の本能を受け入れる。わたしが、あなたの本当の『導き手』になってあげる」
 ミツコから出た「導き手」という言葉が、ジャンヌを後ろのオスたちの方へと振り向かせた。
「あんたらね!?あんたらがミツコを洗脳したのね!?種族が違うのに…」
 犬人タエコの言葉を思い出しながらミツコはいった。
「ご名答!……『洗脳』はひどい言い方だと思うけどね。まあじっさい、種の壁なんて僕らにはないに等しいんだ。それに、その子、君に惚れているのは事実だけど、君ほどの男嫌いでもないみたいだよ。丸一日の『導き』が終わる頃には、それはもう痛ましくなるくらいに激しく、僕たちの愛撫を待ち望むようになったよ」
 ミツコはそれを聞いて何を思い出したのか、うっとりした顔になってジャンヌに言う。
「あんなに幸せな時間はなかったわ。だから今度は、わたしがあなたに、その時間を与えてあげるの。それも、一日でおしまいなんていう寂しいのじゃなくて、一生続く喜びの時間だよ!」
 ミツコの指がジャンヌの胸をまさぐり、別の指が下半身に伸びる。唇が唇に重ねられる。そしてぬるぬるした尻尾が、まるで別の生き物のようにジャンヌの肛門にまといつく。
「ああ、はあ、はああ、はあああ、はう、うっく……にゃああああ、にゃああああ……」
 ジャンヌの中の獣の本能に火がつき始める。抵抗をあきらめたらしいジャンヌは、襲い来る快楽と、四人組にたたき込まれたらしいミツコの超ハイテク性技に、その身と心を委ねる。
「ううん……ううん……もっとぉぉぉぉぉ……もっとぉぉぉぉぉ……みっちい……みーにぃぃ……好きだよう……大好きだよう……あああん、もっともっと好きになっちゃうよう、好きになっちゃうよう……やだよう……人間がきらいになっちゃうよう……ああん、でも、もっと、もっと、もっとおおおおおおおおおおお」
 ジャンヌのリクエストに応え、ミツコの責めは激しさを増す。それはあまりに淫猥で、人類軍の同志も、四人組も、タエコも、明らかな性的興奮に刺激され、どぎまぎしはじめる。
「もっとぉぉぉぉ、もっとつよくうぅぅぅぅぅ」
 言われるまま愛撫の激しさを増すミツコに、ジャンヌは身をよじる。
「ああああああああああ、いっっちゃううぅぅぅぅぅぅぅ!いっちゃぅぅぅぅぅぅ!!だめ!!いっちゃったら心までけだものになっちゃう! やだ!いきたくない!いっちゃだめだあたし!いっちゃだめだ!!いっちゃ………らめええ」
 「だめ」は性的興奮においては禁断の言葉である。だめだだめだという言葉は、さらなる興奮をあおり立てる火種にしかならない。ジャンヌは全身を紅潮させ、強烈に身をよじりながら迫り来る絶頂を受けとめようとする。
「らめ、らめ、らめえええええええええええええええええ……んぐふ」
 激しい痙攣と共に、ジャンヌの背中でビシっという音がする。同時にミツコも達したらしく、びくんという痙攣と共にぐったりとジャンヌの上にしなだれかかる。
 ぐったりしたジャンヌはそんなミツコを温かな、しかしどこか悲しげな目で見ている。
「ミツコ……ありがとう。今楽にしてあげる」
 言葉と同時に、ジャンヌの鋭い爪がミツコの首の両側に突き刺さる。両手を引き抜いたジャンヌの上で、ミツコが血を吹き出しながら絶命する。
 ただならぬ事態に四人組とタエコが愕然としたとき、すでにジャンヌの姿は消えていた。きょろきょろとあたりを見回す四人組の背後に回ったジャンヌが、ほとんど一瞬で四人の頸椎をへし折る。それから、哀れにも捕縛されたままの獣化したかつての同志を、ジャンヌは順に殺していく。
 一瞬のうちに、部屋の中で生きているのはタエコとジャンヌだけになる。タエコは武器を持つ間もなく、ジャンヌに組み伏せられ、喉元に鋭い爪を突きつけられている。
 タエコがあきれて言う。
「まさか超合金の手錠を引きちぎるなんてね。よほどの力なのか、それとも」
 いやらしい笑いをうかべて、続ける。
「よほど性感が強力なのか。どっちなのかしらね」
 ジャンヌはそれを無視し、いつもの低い声で言う。
「何か言い残すことはない?せっかくだから聞いてあげるわ」
 タエコは言う。
「言い残すことね?……まず、聞いておくわ。どうして獣人への愛を拒むことができたの?」
 ジャンヌが答える。
「わたしの中の猫の本能が愛するミツコを殺させた。そんなおぞましい本能、多分一生かけても肯定なんてできない。わたしは一生自分の体を呪いながら生きていくでしょうね」
 タエコは首をふる。
「問題のすり替えよ。第一、猫獣人がただのネズミに殺意や食欲を覚えることはあっても、ネズミ獣人に殺意やら食欲やらを覚えることなんてありえない。獣人同士は種族の違いを越えて愛し合うものなのよ」
 ジャンヌは淡々と答える。
「それはお前らが獣人同士平和的にやっていくためのタテマエの理屈だ。都合のいい法則をでっち上げ、皆でいっせいに自己暗示をかけあっているだけだ。獣人が獣人同士うまくやっていくなど、多分できない。いずれネズミは猫と、猫は犬と、知力を駆使し死力を賭けた殺し合いを始めるだろう。わたしにはわかる」
 タエコはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「遠い未来のことは肯定も否定もしない。だけど今のところ獣人は互いに互いを尊重して生きている。それは事実よ。でもあなたはその絆を自ら拒んだ。あなたは自らの心から獣人への愛を根絶してしまったの。もうあなたが獣人を受け入れることはないし、あなたを受け入れる獣人もいない。もちろん、人間たちもあなたを拒み、殺そうとする。いずれそう遠くない将来、あなたの中の人間の心が完全になくなれば、あなたは生あるものを殺すことしか頭にない魔獣になるわ」
 淡々とジャンヌは答える。
「魔獣か。それもいいわ。そんなのが多分、わたしにはお似合い。そしてきっと、わたしのような存在は自然界に必要なのよ。獣人すら脅かすような、天敵の存在がね。……さよなら」
 ジャンヌの爪でタエコは絶命した。
 やがて、何もかも失った美しい獣は、すべてを飲み込む漆黒の闇の中、どこへともなく姿を消した。
<了>
(2009/9/25「【異形化】人外への変身スレ第四話【蟲化】」に「獣人vsレジスタンスscene2」として投稿後、改題および一部改稿)

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