■ ニューサイエンス

◆『進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線』池谷 裕二(朝日出版社、2004年)
◆『フィールド 響き合う生命・意識・宇宙』リン・マクタガート(インターシフト、2004年)
◆『脳内現象』茂木健一郎(NHKライブラリー、2004年)
『バイブレーショナル・メディスン』   リチャード・ガーバー (日本教文社、2000年)
◆『魂の記憶・宇宙はあなたのすべてを覚えている』 喰代栄一  (日本教文社、2003年)
◆『心を生みだす脳のシステム』 茂木健一郎 (NHKブックス、2001年)
◆『意識は科学で解き明かせるか』天外伺朗、茂木健一郎(講談社、2000年)
◆『水は答えを知っている』  ☆江本勝 (サンマーク出版、2001年)

◆『地球は心をもっている』  ☆喰代栄一(日本教文社) 2000年




◆『進化しすぎた脳 (ブル-バックス) 』池谷 裕二(朝日出版社、2004年)

たいへん分かりやすく、しかも興味深く大脳生理学を学ぶことのできる素晴らしい入門書だ。8人の中高生に対する講義、それも一方的なものではなく、質問や応答をふんだんに交えた形で進められていく。しかもレベルは落とされていない。最先端の研究 や脳と心とに関係する哲学的な問題にまで踏み込んで語られており、ひょっとしたら先 に紹介した『脳の中の幽霊』より、読みやすさ、面白さという点ではこちらの方が上かな、 と思う。

『脳の中の幽霊』と共通の話題もいつか取り上げられており、しかもごく初歩的 な知識に触れながら語っている。 私自身が、まだ大脳生理学についての基本的な知識が欠けているので、こちらを先に読んでいれば『脳の中の幽霊』がもっと読みやすかっただろう。最近の脳科学の成果 をも含めた脳の入門書として、第一にすすめるべき本かもしれない。

最初から「ネズミをラジコンにしてしまった」という興味深い話題が出てくる。元になって いるのは2002年に『ネイチャー』誌に載った科学論文であり、最先端の研究だ。生き たネズミの脳に電極を刺して、脳を電気刺激することで行動をコントロールした実験であ る。具体的には、ヒゲを感じる脳部位に刺激を与える。右脳のヒゲの場所を刺激すると 左のヒゲが触られたと感じる(脳の右半球は身体の左を制御しているから)。左のヒゲ を触られたと感じたネズミが左に動くと、「報酬系」が刺激されるようなリモコンを作っておく。 「報酬系」という脳の部位は、電流が流れて刺激されると強い快感を感じる系である。 自分でその系に電流を流すレバーを押すことを学習したネズミは、水も飲まず餌も食べず死ぬまでレバーを押し続けるという。ヒゲが触られたと感じた方向に移動すると 「報酬系」が刺激されて快楽を感じることを知ってしまったネズミは、「ラジコン」で左右 のヒゲに対応する脳の部位を刺激される毎にそちらの方向へ移動する。ネズミにとって どんなに危険な場所へでも動いていくという。

そこで問題は、このネズミ・ロボットの実験が原理的に人間にも可能であり、同じような装置で自分の脳が脳科学者にコントロールされ、自分の意志とは関係なく体が動いたら、それは自分なのか、というこどだ。。こういう刺激的な話題が随所に散りばめられていながら、脳科学の基本を確認しつつ読みすすめることができる。

初心者の私にとって圧巻だったのは、「しびれるくらい美しいメカニズム」と言われる、 神経細胞の精緻な相互活動の法則(ヘブの法則)とその前後の説明だった。神経やシナプスという最小ユニットの基礎的なメカニズムの話題も詳しくわかりやすいが、さらにその「相互作用」の重要性、互いに連絡を取り合うときの、そのつながりや強度、神経 ネットワークの「形」というファクター、さらにその相互の結びつきを誘導する分子メカニ ズムの研究という話題にまで及ぶ。もう一度しっかり読んでノートしておきたい部分だっ た。

この本が刺激に満ちている背景には、「‥‥脳を理解しようなんて、そもそも傲慢でおこ がましいチャレンジだと僕は感じ始めている。‥‥人間ってこんなにも素敵な存在なん だから、人間の脳がそんなに簡単にわかってたまるかってね」という著者の謙虚さが横たわっているような気がする。(05/11)


◆『フィールド 響き合う生命・意識・宇宙 』リン・マクタガート(インターシフト、2004年)

本書は、2001年に欧米で発売されるやいなや、大きな反響を巻き起こしたという。これ までばらばらに進んでいた科学上の研究を、整合性のある全体にまとめることで、神秘主義、代替医療、ニューエイジなどで語られてきた世界観に科学的な妥当性を与える試 みだとのことだ。著者は、リン・マクタガートという医療関係のジャーナリストだ。

この本の価値は、「ゼロ・ポイント・フィールド ZPF」という量子物理学のキー・ ワードを縦糸にして様々な分野での業績が結び付けられ、解明されていくことにある。 量子物理学のいくつかの方程式で、つねに差し引きゼロとして無視されてきた項、それ はゼロ・ポイント・フィールドと呼ばれ、モノとモノのあいだの空間における微妙な振動の海であった。もし、物質のもっとも基本的な性質に、このゼロ・ポイント・フィー ルドを含めて考えるならば、私たちの宇宙の奥底に存在するのは、エネルギーに満ちた海、巨大な量子場だと理解した科学者たちがいた。

人間をはじめとするあらゆる生き物 は、ほかのあらゆる存在と結びついた、エネルギー・フィールド(場)の中のエネルギ ー集合体である。このエネルギー・フィールドこそ、私たちのからだと意識の中心的な 動力源なのだ。 彼らが提供した証拠は、私たちすべてが、その存在の基盤において、相互に、そして世界とも結びついていることを示していた。彼らは科学的な実験を通して、宇宙全体を流 れる生命力のようなもの(集合意識のような)が存在する可能性を示した。

ゼロ・ポイント・フィールドの考え方を著者自身の言葉で紹介しておこう。

「量子物理学者ならだれでも、ゼロ・ポイント・フィールドについて十分承知している。 不確定性原理によれば、いかなる粒子もまったくの静止状態に止まることはなく、あら ゆる原子内物質と相互作用をしつづける基底状態のエネルギー場(フィールド)によっ て、つねに運動状態にあることが示唆される。このことは、宇宙の基本的な構造が、既知の物理法則によっても消すことのできない、量子場の海であることを意味している。」

「ゼロ・ポイント・フィールドの存在は、宇宙のあらゆる物質が波動によって相互に結 びついており、その波動は時間と空間を超えて無限の彼方にまで広がり、宇宙のある部分をそれ以外のすべての部分と結びつけていることを暗示していた。ゼロ・ポイント・ フィールドはもしかすると、中国で古代からエネルギー場に似たものとして記述される 生命の力、すなわち「気」などを、科学的に説明しているだけなのかもしれない。」

もし「ゼロ・ポイント・フィールド」の考え方によって意識の非局在性や、空間を超え た相互作用や、癒しの能力などが説明できるとすれば、これほど魅力的な新理論はない であろう。しかし、「ゼロ・ポイント・フィールド」の概念によって様々な現象を読み解くという意図が、どれだけの妥当性をもっているかは、量子物理学についての高い見識がないと、適確な判断はできないと感じた。

私にとってとくに興味深かったのは、第4章でホメオパシーを扱い、第5章で脳とホログ ラフィー理論をテーマにした部分であった。とくにホメオパシーを扱ったところは読み物としても面白く夢中で読んだ。アレルギー研究で一流の業績を挙げ、国立保健医学研 究所の主任研究者も勤めていたバンヴェニストというフランス人科学者が、偶然のきっ かけからホメオパシーとそっくりの実験結果を得てしまう。科学者として可能な限り厳密な実験と、海外の複数の研究室での実験結果の再現とを行い、その共同研究を、権威 ある雑誌『ネイチャー』に掲載した。

興味深いのは、その後のネイチャー誌と、保守的な科学者たちの対応が、いかに頑迷で、 偏見に満ちたものであるかが、詳細に語られていることだ。既存の科学の牙城を揺るが すような実験結果を発表することで、これほど執拗な抵抗に出会うとは。実験の結果を 客観的に公平に見るよりも、従来の科学への信仰を、様々な理屈をつけて守ろうとする姿勢には驚く。まさにパラダイムが変化していこうとする生々しい現場を見る思いだ。

前半に比べると後半、とくに第2部「拡大するこころ」以降は、厳密な科学的な手続き によって行われた、遠隔透視など最先端の超心理学的な実験の数々を紹介しており、興深く読むことができた。遠隔透視だけでなく、水の記憶、様々なヒーリングなど、複 数の分野で別個に行われた多くの実験は、どれも可能な限り厳密な方法的な手続きにしたがって行われており、懐疑派もあら探しにこまるのではないかと思われる。この点に おいてだけでも、この本を読む価値はあるであろう。 (05/11)


◆『脳内現象 (NHKブックス) 』茂木健一郎(NHKライブラリー、2004年)

本書は、同著者の『心を生み出す脳のシステム』(2001年)よりも鮮明に、新しい科 学のパラダイムをまさぐるという方向を打ち出しているように見える。近代科学の方法に内包される限界がもっとも先鋭的に浮かび上がるのが、脳と意識の関係問題 においてだろう。近代科学が近代科学であろうとするかぎり、乗り越え不可能と思われ るような限界がそこにはある。だからこそ、科学の方法そのものが問われてしまう。 それが心−脳問題だ。

茂木は、この問題に誠実にとどまり続け、そこにどれほど巨大で困難な問題が隠さ れているかを明らかにしようとする。しかも、脳の研究の最先端の成果を踏まえた上で、意識問題を前にしてのその行き詰まりを語っているのだ。私はそこに強い知的興奮を覚える。

〈私〉が、あるクオリア(質感)を感じている時、そこで起こっていることは、〈私〉 と仮に名づける何らかのプロセスが、そのクオリアを生み出す神経細胞の活動の関係性を見渡している、ということだ。クオリアを感じる主体的体験のありようを素直に脳にあてはめれば、脳の各領域を観察するホムンクルス(こびと)を想定することは、自然な発想である。実際に私たちは、ホムンクルスがいるかのごとき意識の体験をしていることは否定できない。

もちろん、今日、脳のどこにもホムンクルスが隠れていると信じるものはいない。 脳の中に特別な領域があって、そこが他の領域の活動をモニターしているわけでは ない。では、どのようにして、様々なクオリアを同時並列的に感じている〈私〉と いう意識が生まれるか。ホムンクルスがいるかのごとき意識体験は、いかに生じるのか。 〈私〉は、神経細胞の活動を自ら見渡す「小さな神の視点」として成立している。 それを一体「誰が」、「どのような主体が」見渡すのか。

この「小さな神の視点」 がどのように成立するのかは、とてつもない難問題であり、もちろん現時点では未 解明であると、茂木は言う。しかし、意識を生み出すのは、脳内の神経細胞の関係性以外にありえない。1000億の神経細胞の相互関係から、あたかもホムンクルスが「小さな神の視点」をもって脳内を見渡しているかのような意識が生み出される、そのメカニズムを解き明かすことが、脳のシステム論の究極の目的であるという。

神経細胞の活動の間の関係性が主観性の枠組み(ホムンクルス)をつくり、ホムンクルスを生み出す神経細胞の活動とクオリアの前段階になるものを生み出す神経細胞の活動が相互作用することによって、「〈私〉が感じるクオリア」」が生み出される。このような、関係と関係の間の相互作用を通して生まれるさらなる関係性が、人間の意識をささえ、人間の意識のあらゆるところに現われるメタ認知を支えている、という。 以上のように、茂木はあくまでも神経細胞の相互作用から〈私〉という意識が生み出されるメカニズムを解き明かすという野心を捨てていない。

しかし、神経細胞の関係性は、いくら精緻に関係性のネットワークを解明したにせよ、所詮はニューロ ン相互の物質的な過程にすぎない。そこから〈私〉の主体的な体験を説明するには、 どこかで原理的な飛躍をする必要がある。 〈私〉=主観性は、科学が科学として自立するためにこそ、故意に忘れ去ったものである。だからこそ、それを問うためには、科学そのものの前提を再検討しなければならない。物質還元主義という近代科学そのもののパラダイムが問い直されなければならない。

もちろん常識的な物心二元論も問題の解決にはならないだろう。両者を包 み込むような新しい世界観でないかりぎ、この問題を説明することは困難であろう。 あくまでも脳研究の最新の成果を踏まえつつ、この問題に向き合い続ける茂木には敬意を表したい。そして安易な解決の道を探るよりも、この問題の根源性を根源性 として明らかにする方向で探求していってほしい。 (05/04/30 追加)


◆『バイブレーショナル・メディスン―いのちを癒す「エネルギー医学」の全体像 』 リチャード・ガーバー (日本教文社、2000年)

実に読み応えのある本だ。600頁を超える大著だが、読み始めてすぐ夢中にな った。分厚い本の頁をめくるごとに視野が開かれていくようで、読書することの醍醐味をたっぷり味わった。きわめて雄大なスケールで波動と人体、波動と病や癒しとの関係を明らかにしている。  

本書のテーマは、従来の医学から無視されがちな様々な癒しの技法を統一的に説明することだ。いわゆる代替医療として一括される様々な分野を、「波動医学」と いう視点からの統一的な理論と実証的な研究によって基礎付けようとする。 「波動医学」とは、物質的身体の背後に存在する根源的な微細エネルギー場に直接 はたらきかけることで治癒を促そうとする試みの総称である。本書は、人体の微細 エネルギー的な構造を理解するための包括的なモデルを提示している。  

人間は、「多次元的存在」をなす生命体である。ひとりの人間のなかには意識の 多様な周波数帯が共存している。人間は、目にみえる物質的身体と眼にみえない高次エネルギー身体が複雑に結合したものである。本書は、これまでの実証的な研究を総動員してきわめて用意周到に、しかも大胆に、エネルギーの「多次元的組織体」 としての人間を描き出し、それに基づいて病と治癒の仕組みを明らかにしている。 「多次元的存在」としての人間の階層的な区分そのものは、神智学や人智学からの 援用であり、よく知られた枠組みである。すなわち「物質的身体」「エーテル体」 「アストラル体」「メンタル体」「コーザル体」という多次元が織り成す全体として人間を捉える。  

本書が優れているひとつの理由は、医学の潮流をニュートン医学(物質医学)から アインシュタイン医学(波動医学/微細エネルギー医学)へと捉え、「波動医学」をア インシュタイン物理学によって基礎付ける試みがなされている点だろう。物質的身体や微細エネルギー身体を含む普遍的エネルギーは、その振動率、すなわち周波数 が、基質としての発現の仕方と密度を決定している。ひじょうに低い周波数で振動 する基質は、いわゆる「物質」として発現し、超光速で振動するものは「微細質」 となる。「物質」も「微細質」も、周波数(波動)という観点から統一的に理解さ せる。「波動医学」とは、微細エネルギー場に直接はたらきかけることで物質的身 体に変化をもたらそうとする試みである。  

本書が優れているもう一つの理由は、豊富な実証的なデータに基礎付けられた細部の精緻な理論化だろう。それがもっとも成功しているのは、ホメオパシーの波動 医学的な解明の部分だと感じた。ホメオパシーでは、薬物の濃度を水で希釈すればするほど、その効果が増大する。これは、通常の医学では全く説明のつかないことだ。しかし、必要な周波数の微細エネルギーを患者に供給し、からだを刺激するこ とで、共鳴によるエネルギー移動がおこって、バランスが回復すると考えれば、ホ メオパシーによる治癒はひじょうにうまく説明できる。分子レベルでの粗大な性質が希釈によって切り離され、微細エネルギーとして純粋になればなるほど、微細エ ネルギー場からの治癒効果は増大するのだ。私は、フラワーレメディの何たるかは ほとんど全く知らなかったが、花のもつ微細エネルギーが水に転写され効果を発揮するという波動医学的な意味を知ることができた。  

第8章のサイキック・ヒーリングの分野でも、きわめて実証的で妥当性の高い、様々な実験が行われているのに驚嘆した。具体的に挙げるのは止めるが、拙論「気・ ものからこころへ」で触れたグラッドが、大麦を使った実験だけでなく人間を対象 とした実験でも、ヒーリングの効果を実証しており、またそれに関連する他の研究者の実験とその結果についても、驚くべき成果があがっている。  

またこの本がカバーする領域は非常に広範囲で、たんに波動医学、代替医療を基 礎付けるだけではなく、臨死体験はもちろん、霊的な成長や輪廻転生までも、一貫 した多次元モデルの中で語っている。私自身が、気功や臨死体験、霊的な成長、輪廻転生を包括的に語りうるような理論モデル、しかも何らかの実証的な裏づけの可能な理論モデルを求めていたので、この本から吸収できるものは実に多い。  

本書の欠点を挙げるとすれば、実証的な研究による確認がほとんどできない領域 についても、「秘教的な文献によれば」という文句を多用して、かなり大胆に論を展開しているところだ。「肉体/エーテル体接触面」やエーテル体レベルを暗示する 実証的データの豊富さと、その理論の説得力は充分だと感じるが、それ以外につい ては科学的な探求とはいえない面も多い。また、なかにはデータとして信頼できな いという評価が一般的になった文献が不注意に使用されたりもしている。  

さらに、最近の脳科学や認知科学の驚くべき進展や、それらが提出する意識の根本問題に、このエネルギーの多次元モデルがどれだけ耐えうるのか、脳科学からの問いかけに答えるに足る考察はほとんどないといえよう。  

こうした若干の欠点はあるにせよ、この分野についてこれだけ実証的な考察と理論化が徹底的になされた意義ははかり知れない。以降、肯定的、否定的、どちらに せよ、この本を踏まえることなしに代替医療の分野を語ることはできないのではないか。それほどに重要な本だと思う。それにしても、日本ではこれに匹敵するよう な研究が出現しないのはなぜなのか。彼我の研究風土の違いを感じる。


◆『心を生みだす脳のシステム―「私」というミステリー (NHKブックス) 』 茂木健一郎 (NHKブックス、2001年)

その面白さに思わず夢中になった。これほどに刺激的な本だったとは!! 刺激的なのは、脳の科学から出発しながら、クオリア(質感)という概念をひき入れる ことで、心の主観性という問題に迫ろうとしているからだ。心という主観性の問題 をごまかさず正面から理解しつつ、なおかつそれを脳のシステムからどう説明でき るかを問うているのだ。  

著者は、脳の科学に足場を置きながら現象学的な問題に一歩足を踏み入れているように見える。フッサール、ハイデガー、メルロ・ポンティなどが探求した主観性と いう哲学的な問題に脳科学の成果を引っさげて果敢に挑戦しているところにこの本 の面白さがある。  

最新の脳科学や認知科学の動向や、そこで問題にされている点について、著者の強烈な問題意識から解説されていて、私自身、この分野への関心が一気に高まって しまった。   

著者は自信をもっていう、「心を生み出す脳のシステムは、単純な機能局在説で は理解できない」、「生化学的な知見や機能局在は、脳というシステムの、いわば 断面図に過ぎない。断面図をいくら集めても、私たちの心を生み出す生きた本質には迫れない」と。 そして、心を生み出すのは、「脳全体にまたがって、1000億のニューロンが作り 上げる、複雑で豊かな関係性」であり、「脳というシステムなのだ」として、脳が 心を生み出すとはっきりと断言する。  

しかし一方では、「ニューロンを一つ一集め、ある関係性を持たせるとなぜそこ に心が宿るのか、その第一原理さえ皆目検討がつかない」と正直に告白し、それは、心がない状態から心を合成する「錬心術」(錬金術のもじり)だとさえ言う。これ だけ脳のニューロンの働きと意識との関係がはっきりしてきていても、では意識は どのようにして成立するのかとう根本的な問題になると、脳科学はハタと行き詰っ てしまうのだ。  

にもかかわらず、あくまでも心はニューロンのシステムから解き明かせるという立場を崩さない。「錬心術」の状態から抜けだすため、地道に脳のシステムと心の要素の対応関係についての探求を続け、一方で新しい発想による心脳問題の展開を待つほかないと言う。  

私に言わせれば、ニューロンのシステムをいくら解明したところで、そこに心が宿るのは不可能だということを原理的に明らかにする道をたどる方がはるかに生産的である。脳科学がここまで発達し、様々な知見が蓄積されている以上、精神世界 に関心を持つものも、その成果を積極的に学びとって、その成果から何が言えるの か、何が言えないのかをはっきりさせるべきだと思った。脳科学の成果を謙虚に学 び、受止めつつ、なお脳科学のどこに原理的な限界や問題があるのかを、真剣に考 え、明らかにしていかなければ、精神世界の探求もある意味で知的怠慢のそしりを まぬかれない。たぶん茂木健一郎の考え方に充分に反論できなければ、魂や輪廻転生の問題について、少なくとも私自身は、納得のいく論は展開できないと感じる。


◆『魂の記憶・宇宙はあなたのすべてを覚えている』 喰代栄一  (日本教文社、2003年)

本書の中心は、ゲリー・シュワルツ(現、米国アリゾナ州立大学の心理学、神経学、精神医学教授)という人の「シュワルツの仮説」である。興味深い具体例を散りばめながら面白くこの仮説を紹介する科学読み物だ。「シュワルツの仮説」とは 以下のようなものである。

 「私たちの住むこの世界は様々なシステムにより構成されており、それらすべてのシステムは、なんらかの情報を発したり受け取ったりしている。その情報のやり取りのなかで、システムに記憶が宿る」  

この仮説そのものは、その前半の基本的な部分はそれほど目新しいものではないはずだ。上に取り上げた茂木健一郎の「脳のシステム」論も基本的にこのような仮説に立つと言えるだろう。「システムに記憶が宿る」というところが独自な点なの かも知れない。『魂の記憶』の面白さは、「シュワルツの仮説」を傍証する興味深く分かりやす い事例を次々にとりあげて展開されていく点だ。とくにホメオパシーの事例と、心臓移植患者にその提供者(ドナー)の人生の記憶が入り込む「心臓の記憶」の事例 とが興味深かった。  

ヨーロッパの代表的な代替医療であるホメオパシーを取り上げ、その治癒原理を 「シュワルツの仮説」から考察している。ホメオパシーとは何か、ホメオパシーで なぜ治るのかを知るための読み物としても面白い。  

心臓移植患者に、そのドナーの記憶が甦るという事例は、テレビ番組で知ってい たが、これほどに事例が多く、無視できない事実として研究され、こうした問題に ついての複数の出版物があることまでは知らなかった。  

こうした豊富な事例をもとにしながら「シュワルツの仮説」がどれほど妥当性が あるのか、気功そのほかの代替医療や、身近な人間関係に至るまで、じっくり検討 してみるのはとても興味深いことだと思った。


■『意識は科学で解き明かせるか』天外伺朗、茂木健一郎(講談社、2000年)

 量子力学やボームの「量子ポテンシャル」理論などに触れながら、脳科学の最先端 でどのようなことが問題にされているかを対話のなかで明らかにしていく。

 一例を挙げよう。ニューロンは脳の中に140億個もある。一個のニューロンが1万個 ぐらいの他のニューロンと結合して、その活動電位が次々と伝わっていくことで情報 が伝わるという。ところがニューロンの相互作用による発火の記述をいくら積み重ねても、私たちの心がどのように生じるかは説明できず、それが大きな問題になる。

 この問題についての通説は「随伴現象」説で、対応関係は分からないにせよ、とも あれ心は脳のニューロンの活動に随伴するとする。ニューロンが発火している状態に 応じて心の中の表彰は決まってしまうという。しかし、この説では心の積極的、能動的な働きを説明できず、結局心はあってもなくてもよいということになる。

 これに対立するのが「二元論」で、心は脳と独立して存在し、ある程度能動的な役割も持つというが、こちらは少数派とのこと。  面白かったのは、ニューロンの発火を基礎とし前提とするいまの神経科学では、夢 すらもまだまともに説明できないこと。夢とは、レム催眠におけるニューロンのラン ダムな発火だと説明されるが、この説だと夢のストーリー性が説明できない。

  ところでブラックモアは、臨死体験におけるトンネル体験をまさしくニューロンの 発火のプロセスで説明しようとしたが、やはりこれは臨死体験のもつ豊かで全体的な意味を説明できなかった。それと似ている。

 つまり夢の説明も充分にできない「随伴現象」説では、まして人間の無意識の働き とか、無意識的なものが私たちの行動をいかに深く支配しているか、というような現代の常識になっている心理学的な現象については、説明の原理すらないという状態の ようだ。

  ニュートン以来の物質的な世界観では、心はあくまでも余計なものであり、脳科学者も物質としての脳を記述することに精一杯で、心と脳の関係を実証的に研究する科 学者は少ないというのが現状だろう。

 ともあれ、脳と現代物理学、脳と心の問題など、脳にまつわるさまざまな問題を知 ることが出来て有益だった。天外伺朗の柔軟な発想がこの対話を面白くしている。 (02/11)


■『水は答えを知っている』 江本勝 (サンマーク出版、2001年)

 気功師の気を入れた水が、電気抵抗率を下げる等々、水が波動情報を記憶することを示す 事例は、かなり多い。この本は、水を氷結させたときにできる結晶を写真にとって、水の不 思議をみごとに伝えている。

 水に音楽を聞かせて結晶写真をとると、それぞれの音楽の特徴に応じた素晴らしい結晶が できる。10数曲のそれぞれの特徴に応じた結晶の形や色の繊細な違いを見ることができる。

 さらに水を入れたビンに言葉を書いた紙を水に向けて貼りつけると「愛、感謝」「ありが とう」「しようね」「智恵」などでは美しい結晶ができ、「ばかやろう」「ムカツク、殺 す」「しなさい」などでは、結晶が砕け散ったり、出来なかったりする。それが写真ではっ きり示される。

 常識的な発想からはにわかに信じられないかもしれないが、江本氏の研究所では、可能な かぎり厳密な科学的手法を駆使してこの実験にとりくんでいるようだ。  実験方法は、こうだ。精製水など同一条件の水を、それぞれ音楽を聞かせたり、言葉を見 せたりしたうえで50個のシャーレに落とす。これを冷凍庫で3時間ほど凍らせる。直径1 ミリほどの氷の粒の突起部分に光をあて顕微鏡でのぞくと結晶が現れる。

 50個すべてに結晶が現れるわけではないが、それらを「美結晶」「六角形」「不定形」 「結晶なし」などのパターンに分類してグラフに表すと、たとえば「ありがとう」の言葉を 貼った水と「ばかやろう」を貼った水とでは、明らかな違いがでる。一方は美結晶が多く、 他方は結晶がほとんど現れないなど。

 実験は、どの水が「ありがとう」でどの水が「ばかやろう」か分からないように、A・Bの ラベルを貼って観察してもらうブラインド法を採用するなど、できるかぎり科学的な方法に そって行なっている。

 問題点は、水滴の落とし方や、落とす人の意識や波動によって結晶に違いが生じるらしい ということ。その他、さまざまな条件が微妙に作用し、厳密な科学的な「条件の同一性」を 得ることが難しいこと。以上は、江本氏自身が認めている。

  さらに挙げれば、これと同じ結果が別の研究機関などで追認されたとう報告はまだという こと。また選ばれた一枚の写真が、どのような基準で50の氷の粒を代表するのか、はっき りとした説明はなかった。たとえば、「ありがとう」の言葉による結晶写真は、どれもみな 似たような形になるのか。一種の傾向性があるのか。何度やっても同じような形が現れるの か。また、「ばかやろう」の中にも数は少なくとも美しい結晶があるのか、あるいは何度や ってもそういう結晶はできないのかなど。

 水が言葉や音楽に反応するなど、近代科学の世界観からは全く認められない上に、実験も なかなか充分な厳密性は得られないから、結果を否定する人も多いだろう。

  しかし、東京、ロンドン、パリなど大都市の水道水は、いずれもきれいな結晶が見られな いという。水の結晶写真は、私たちに何か大切なメッセージを発しているのかも知れない。 それに真剣に耳を傾けてみる必要があるのではないか。

 水の結晶の写真集は、本書に先駆け1999年に『水からの伝言』がベストセラーになり、 海外にも紹介された。以来、江本氏は、スイスを中心にオランダ、イギリス、フランス、ド イツ、イタリア、オーストリア、韓国、カナダ、アメリカなどに招かれ講演を行っている。 海外でも水の結晶を研究しようとする機運が高まっているという。             (読 0208)


◆『地球は心をもっている』喰代栄一(日本教文社) 2000年

 ラブロック博士のガイア仮説をさらに発展させ、生命の進化を「惑星心場」の概念から説明する。 ガイア仮説は、地球全体がひとつの恒常性を保つ生命体であると考えるが、ウィーラー博士はそれと一歩すすめて、ガイアは惑星心場といわれる一種の心的な場をもっており、地球の生物にはっきりとした物理的影響、とくに進化への影響を与え、進化の原動力となる。
 地球の営みや進化が、近代科学的な機械論的な因果関係で説明することがいかに難しいかを説明する具体例がたくさん出てくる。0009


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