いばら美喜 資料館

 

 『センスとアイデア』。これは東考社の新書単行本の巻末において、いばら美喜作品の紹介文としてつけられていたキャッチですが、見事にいばら美喜の作風を言い表しています。

 いばら美喜はもともと漫画家志望ではなく、昭和30年代に起きた劇画ブームの時流に乗って似顔絵描きから転身した作家です。それ故か、マンガの基本である起承転結(笑)をあまり意識していないようで、たった一つのアイデアで話を落す、一風変わったストーリーを数多く産み出しました。また、その作中では人死にが扱われる事が大半なのですが、かなり残虐な描写もアッサリと描かれており、さらには登場人物さえ死をクールに受け流すという、登場人物への感情移入を拒絶するものです。氏は人間嫌いなのでは?という考えが浮かんでくるキャラクターへの愛情の無さなんですが、それによりかえって読者が客観的にストーリーを追える事となり、アイデアそのものを光らせる要因となっているから不思議なもんです。

 そして、その作風は昭和40年代前半に青年雑誌を中心に発表された10ページ程度の短編において最大の魅力を発揮しています。例を挙げると

 ある日、突然人差し指が見えない力で引っ張られるようになり困っていた主婦は、幼い頃、車に轢かれそうになった自分を母が助けようとして、人差し指を失くしたうえ命を落としてしまった記憶が蘇る。数日後、子どもが強盗にさらわれるが、人差し指が千切れて飛んで行き、強盗の眉間を打ち抜いた。母親と同じく、自分も我が子を救う為に、この人差し指があったのだ(『人差し指』)

 チビのため馬鹿にされ続けた男が、殺人を犯してまで手に入れた研究中の身長が伸びる薬は、毛と歯と爪しか伸びないものだったが、それを見た発明者は「毛生え、歯生え、爪生え薬として売り出そう」とほくそえむ(『ああ伸びる』)

 など、たった一つのアイデアに一捻り加えたオチをつけ読者を唖然とさせる、名人芸とも言うべき珠玉の作品を多数残しているのです。

 しかしながら、ネット検索してみると、いばら美喜の代表作として『悪魔の招待状』や『死神が来る!』等、立風書房レモンコミックスの書き下ろし単行本作品が挙げられている事が多く、ちょっと僕的には遺憾です。いばら美喜晩年の作品であるレモンコミックスのラインナップからは、氏の持ち味である<センスとアイデア>は薄れて、単なるスプラッタマンガになっている感が否めないからです。やはり、30年にも渡り奇抜なアイデアを出し続けるのは困難だったのでしょう。また、もともと漫画家を目指していた訳ではないため、マンガへの執着が希薄だったのではないでしょうか。

 さて、いばら美喜は個人的にかなり思い入れのある作家さんです。ここでは氏の魅力が詰まった作品のデータを掲載しておりますが、思い入れ故に、その中身についてはそれなりの紹介したく想い、今は触れていません。暇をみてゆっくりとやっていきたいと思っていますので、時々のぞきに来て頂ければ幸いです。

『黄金』

昭和43年1月7日発行/¥240

『黄金』「人差し指』他 

11編収録

 『恐怖の手術台』

昭和43年12月15日発行/¥240

『ああ伸びる』『旧街道』他

10編収録

  東考社 

ホームランコミックス(全10作品)

 『背徳のミステリー』

発行年不明/¥240

連作 女の魔性シリーズ

収録

 

 

 

 

 

 『くノ一忍び』

昭和43年2月15日発行/¥240

『くノ一忍び』『散りぬ』収録

 

 『忍法血まつり』

昭和43年10月20日発行/¥240

『くノ一忍法上の空』『悲運』他

5編収録

 

 

 

 

 

 

 『妖刀一代』

発行年不明/¥240

『愛妾無残』「姉を斬る!」他

6編収録

 

『帰ってきた忍者』

発行年不明/¥240

『女と色と慾』「不幸な星』他

9編収録

 

 

 

 『罠へ また一歩』

発行年不明/¥240

『遭難』「呪われた眼』他

11編収録

 

 『殺さないで』

発行年不明/¥250

『聖者の昇天』「焦熱地獄』他

6編収録

  

『兇状旅』

発行年不明/¥250

連作

 

 

 

 

 

 

 

2007年9月6日作成