第9話:ござ?

こは、市長の家(アジト?)の地下牢獄。
牢屋の壁にひとつずつ燭台がかかっていて、その燭台に乗せられたロウソクが、薄汚れたベッドを、灰色のコンクリートを、怪しく照らしだしている。

いくつもある牢屋の中のひとつで、Rの介は寝ていた。
「いててて・・あのオッサンめ、気持ちよくチョップ入れてくれるじゃんよ・・って、ココどこだー暗ェー!」
Rの介が飛び起きた。牢獄の中で、叫び声が響いている。
立ち上がり、自分についているホコリを払いながらその部屋の中を歩き回った。
「牢屋・・か」
黒光りする鉄格子をノックするようにコンコン、と叩きながらRの介はつぶやき、はぁっとためいきをついてドン、と勢いよくベッドに座り込んだ。

「おきていたでござるか」
Rの介がベッドに座り込んだ瞬間、鉄格子の向こうがわから男の声がした。
「おはようでござる」
Rの介は声のするほうへ鉄格子の向こうへ目を向けた。
その男が、暗くて顔はよく見えないが、シルクハットを浅くかぶり、羽織袴を着て、腰に刀。というおかしな格好であることだけはわかった。
そして、Rの介はまず、苦笑いを浮かべながら、
「そのカッコ、はやってるのか?」
と聞いた。
「これから流行らせる予定でござ」
いや無理だろ
Rの介は男が言い切る前にしっかりとツッコミを入れた。

「で」
「ござ?」
(ござ・・)あんたは誰だ?」
「モアイでござる。魔法使いをやっているでござる。」
(魔法使いなんだこれ・・・)で、その魔法使いがここに何の用だ?」
「ごはんを持ってきたでござる」
モアイはそう言うと、そっぽを向いて鞘ごと刀を抜き、力強くコンクリートの床に突き立てた。
すると、キュイインという音とともにコンクリートに傾斜ができた。そして、その坂の上からワゴンがゆっくりと降りてきた。
「いっぱい食べるでござるよ」
モアイはワゴンからお盆にのった食事を取って、鉄柵の下のわずかな隙間から牢屋の中に入れた。
「さんきゅー」
Rの介はしばしの間あっけにとられていたが、その間にすでにワゴンを持って帰ろうとしているモアイに向かって小さな声でお礼を言った。
振り返らずにモアイは出口に向かい、牢獄の重そうな鉄のドアを勢いよく閉めた。
その後Rの介はモアイが階段をコツコツと上っていく音をぼーっと聞いていたが、その音が止んで、そこで初めて床に置かれた食事を見た。
そして、つぶやいた。
「コンビーフか・・悪くない」
Rの介は皿の上にどーんと置かれたコンビーフをむしゃむしゃと食べてその日の食事を終えた。

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