第8話:じゃまいか。

 んさんと照りつける太陽が、校庭の中央で対峙する生徒達の武器を鈍く光らせている。


「おらぁぁぁッ!!」
怒カサにトランスしたTOカサは銃を片手で強く握りなおし銃を振り下ろした。
死神はスッと左側にかわす。
そこへTOカサは無理な体勢で左腕でストレートを放った。

「ぐっ」
そのストレートに虚をつかれる死神。衝撃であとずさりしてしまうが、そこにふたたびTOカサは左足での後ろ回し蹴りをかました。
死神は無抵抗にその蹴りを腹に受けふっとび、倒れてしまった。

「どりゃぁぁぁぁッ!!」
倒れた死神にさらにTOカサが突っ込んで銃を振り下ろしてくる。
しかし、死神はTOカサが自分の足の方向から突っ込んできたのを見逃さず、タイミングを見計らってTOカサの足をあおむけの体勢のままひっかけた。
飛び込んできた勢いでTOカサが倒れ掛かってくるのを、死神は左手でTOカサの顔をつかみ自分の体の横へ押し付けた。

そして、右手で大剣を握り上体のみを起こして横に居るTOカサめがけて大剣を振り下ろした。
大剣が砂をドォンと打ち付け、砂煙が舞い上がる。TOカサはするりとかわしているようだった。
「外れたか・・・」
死神は大剣を拾い上げて、砂煙が舞い上がっている方向に構えた。

何秒か経って、砂煙が少し収まってくる。
「おーよしよし。かわいいなーお前ら」
中からは、怒りのまるでない声、つまり正気のTOカサの声が聞こえた。

死神が、「は?」という顔をして砂煙の中で動く影を見つめる。
砂煙が完全に止むと、2匹のイヌと戯れるTOカサの姿があった。
死神はもちろん、少し離れた位置で戦っていたユウとマイ、それから他の生徒達もその姿を見た。
ほとんどの生徒が、「誰もケガせずにすんだ・・」と安堵し、また「イヌでいいんすか・・」と脱力した。

しかしそこで皆がホッとため息をついていると、パンッパンッと手を叩く声が聞こえた。
何人かの生徒は、和丸先生が授業再開を促しているのだと思いビクッとして和丸先生の方を見たが、
そのころ和丸先生は木陰で月刊コロ●ロコミックを読んでケラケラ笑っていた。
(コロ●ロ・・なつかしいな)
TOカサが和丸先生を見ながらそんなことを考えていると、戯れていたイヌたちがすたたたっと音のした方向へ走っていった。
「あ・・・っと。ざんねん。」
TOカサは少し寂しそうな顔をした。

イヌが向かったその場所には、すらりと長身の男がいた。イヌたちは、男の両側に一匹ずつちょこんと座った。
その男の左ほほには、イヌの肉球のマークがついていて、一目で「愛犬家」とわかる。
上には半そでのシャツ。下はジーンズ。しかし、そのジーパンにはホルスターがついていて、そこには拳銃が差してあった。
「はじめまして」
その男はにこやかに、戦っている生徒全体を眺め、不特定多数に話しかけた。
「お前何者だよっ!?」
ユウが聞くと、その男は一瞬困った顔をして、
「・・こっちの茶色い子がボブ。白い子がスーといいます」
「へぇ、ボブとスーか。」
「かわいい名前だなぁっ。って、そーじゃなくてっ!」
TOカサがボブー!スー!と呼びながら2匹のイヌを手招きしている。そして、ユウはノリツッコミをする。
「というと?」
「アンタの名前だよっ」
「あぁ、私は【ジャマイカ】といいます。よろしくおねがいします。」
よろしく、というと、ジャマイカは拳銃に手をかけた。
「おいおい・・ずいぶんなアイサツじゃねえか・・」
死神が、ごくっとツバを飲む。
ジャマイカは、まっすぐ拳銃を構える。
つられたように、死神も剣を構える。
ジャマイカはまっすぐ構え・・
そのまま、下に銃口を向け、引き金をひいた。
プシュッという音とともに霧状の物体が銃口から飛び出した。
「ボブは汗っかきだからねー?しっかりケアしないとねー。」
「イ、イヌ用制汗スプレー?」
マイがあっけにとられた様子でジャマイカを見ている。
が、ジャマイカは気にせずスプレーをし終えて、もう一度死神たちに向きなおした。
「それで、アナタたちに言いたいことがあるのですがね。ボブ、言ってあげて。」
ボブ(ちゃいろのほう)はジャマイカに指示を受け、死神たちに向かってしゃべりはじめた。

「わん!わんわんわん!わーんわん!」
「な、なにぃ!」

「わわんわんわん!わん!」
「な、なんだってェ!?」

・・・間。

「で、ジャマイカさん、こいつなんて言ったの?」
ユウは、ボブがなんと言っているのかわからないが律儀にしっかりびっくりしてからジャマイカに改めて聞いた。
「それはですねぇ・・」
《Rの介クンは私たちがいただいた。》
《今ごろ牢屋に閉じ込められているだろう。》
「という感じです」

「へぇ〜・・っておいっ、しにがみ、やべーぞっ!」
「だな」
「和丸先生もっ!」
「あぁ」
「マイ!冷子!」
「うん」
「だね」
・・・
ねーなんでオマエラそんな冷静なの?

第9話へ