第七話:殺陣。

 行されてすぐ、Rの介はずっと階段を下り続けていた。
「おいおい、どこまで続くんだ?」
腕をつかまれ長い長い階段をくだりながら、Rの介は右にいる屈強な男に聞いた。無視。
続いて左の屈強な男の方を見る。無視。
それでもRの介は無意味にしゃべっていた。人間ピンチになると、平常心ではいれないものだ。
「まだ歩くのか?足疲れたぞ。」
「今年のワールドカップ楽しみだよな。」
「どの国優勝すると思う?」
「やっぱりブラジル?」
「それともイタリア?」
そんなことを言っている間にいつの間にか階段が終わって、細い廊下のような場所を通っていた。
Rの介はそんなことも気にせず、「やっぱりジーコはすごい」だとか、「久保の落選ざんねんだ」とか、ひたすらしゃべっていた。
Rの介が、
「てーか眠いから寝ていい?」
と言ったところで、男達が歩くのをやめピタッと止まった。
そして、Rの介の腕を離した。
「おっ・・」
Rの介はずっと男達に支えられていたので、がくっと力が抜けてひざから倒れてしまった。
そこを右に居た男がぐいとRの介の服をつかんで首の裏に手刀を入れた。
Rの介は「ぐぇっ」と間抜けな声を出して気絶してしまった。
男達はRの介が気を失ったのを確認し、2人でRの介を担ぎなおして運んでいった。

 Rの介が人質にされてしまっていたころ、紫砂津中では週に一度の「殺陣(殺し合い」の授業が始まろうとしていた。
「Rの介は欠席か・・。まぁいい、殺陣をはじめる。」
和丸先生もRの介がいないことを少し気にしているようだ。
「こんなことしてていいのか・・?」
死神達はRの介のことが気になってしょうがないのだが、和丸先生に逆らうわけにもいかず、それぞれ自分の武器(一部の生徒のものはレプリカ。たとえば死神の刀などは斬れない物)を持って校庭に出た。

昨日戦場になったばかりの校庭。
清掃業者が殺陣の授業のある前の日は清掃をしに来るのだが、血痕があちらこちらに残っている。
だが、血痕どころか鮮血を見るのすら慣れてしまった生徒達にはさほど問題はない。

「よし、今日の授業の説明を始めるぞ。みんな武器は持ってるな。」
「「「「はい」」」」
「うむ。今日の授業は、チーム戦で行うぞ。2チームに分かれてもらうが・・あれ、人数が足りないようだが。」
「生徒Aくんがいません」
「あぁ、そういえば。あいつ紫砂津病院に居るらしいから放課後死神あたり見舞いに行ってやれ。」
「あ、はい。(この男は自分のクラスの生徒すら・・」
「よし、じゃあチーム分けを発表するぞ・・・」
クラス全員の軽蔑のまなざしが和丸先生に注がれる中、和丸先生はメンバー表を読み上げている。
「・・以上だ。」
精鋭団は、死神、ユウがAチーム。マイ、TOカサがBチームというふうに分かれた。
「よし、では2分後に合図をして開始だ。2分以内にAチームはA地点側、BチームはB地点側に30メートルほど下がれ。」
全員2分と言わず2,3秒ほどで30m下がった。時間いっぱいまで作戦タイムにしたいからだ。
Aチームは自然と死神が指揮をとり、Bチームは全員で考えを出し合っている。
1分30秒したところで和丸先生が、
「みんなー。今日の罰は演習場20周だからなーw」
ドS和丸は満面の笑顔だ。
それとは対照的に生徒達の顔は一気にひきつり、あわてて作戦の確認をしはじめた。
ちなみに、この広い広い演習場を20周すると、30km弱くらいになる。
 そして2分。
ピィィィィッっというホイッスルの合図で、殺陣がはじまった。

「よしいくぜぇっ!」
ユウはひとりで飛び込んでいく。
「とらぁ!」
ユウはBチームの生徒のひとりの腹にとび蹴りをかまし、そのままBチームに切り込んだ。周りは敵だらけだ。

「くらえユウ!」
近くにいたTOカサが銃を振り下ろす。
ユウはバック転で華麗にかわす。
何人かの生徒とTOカサがその着地を狙おうとそれを追った。

しかし、その瞬間、後ろにいた死神が刀を抜いて猛ダッシュし、。
「ふんっ」
低くうなり片手で半円を描くように左から右に振り回し、ユウの着地を狙っていた生徒達をなぎはらった。

TOカサを含め4、5名の生徒達はふっとんでしまった。しかしTOカサだけはしっかりと死神の剣を銃で受けていたので、ケガはなかった。

「・・」
TOカサは何も言わずに立ち上がった。
そして、Aチームの面々をにらみつけている。その目はかなりつりあがっていた。
そのとき、Bチームの生徒がさけんだ。
「やべぇ!怒カサだ!」
怒カサとは、多重人格者であるTOカサの中のひとつの人格である。普段の性格とはまるで正反対で、かなり凶暴になる。
ちなみに、このTOカサの多重人格の一番厄介なところは、本人に自覚がないところである。怒りが少し収まればTOカサに戻るものの、怒カサであった記憶がまるでないのである。
だが、クラスメイトたちが、それを本人に教えることはない。TOカサが傷ついてはいけないと考えているのだろう。

「TOカサくんが怒カサになっちゃったら、作戦なんてできないよぉ・・マイ、どうする?」
マイの友達である女子生徒がマイに聞いた。
「うーん・・とりあえず、冷子に怒られないように戦おうよ。」
「そうだね・・。」
マイたちは、なるべく怒カサから遠い位置で戦いはじめた。

怒カサはまだにらみを続けていた。
だが、そのにらみはいつの間にか死神にだけ向けられていた。
「まずはお前だ」
「やってみな。」
死神は人差し指でクイクイと挑発するポーズをとった。

こうして、自然と死神vsTOカサ、ユウ達vsマイ達という戦闘の構図ができていた。

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