(連載)短編小説 byみやこ
3本足のリコさん人形
 リコさんは、大手和菓子屋チェーン店「いずみ屋」のマスコット人形だ。 背の高さは1メートル位。 子供らしい愛らしい顔立ちの、おかっぱ頭のお人形で、 布地の着物を着せられている。 着物は季節ごとに着せ替えた。 春は、桜の花。夏は、朝顔。秋は、すすきに月。冬は、雪の結晶柄。 それに何より、リコさん人形は「いずみ屋」の店先に必ず置いてあって、 チェーン店のあるどの街でも人々に愛されてきた。

 ある時なんて、親に叱られて泣いて家を飛び出してきた子供が、 リコさんの頭を撫でて家に帰ったし、 またある時は、成長した娘が遠くの街で一人暮らしをはじめ、 気落ちしていた母親が、 リコさん人形を見て、娘の子供だった頃を思い出し、一瞬わらった。

 妖怪・あずき磨ぎが、シャカシャカと桶であずきを洗う音が聞こえる、 そんな夜――――。 全国のいずみ屋の店舗前に設置されていたリコさん人形が、 トラックの荷台に次々積み込まれていった。それは秘密裏に。

 実は、和菓子チェーン店いずみ屋は、 最近台頭してきた他の和菓子チェーン店に押され、 多額の負債を抱え倒産することになったのだ。 リコさんのキャラクター人気にあぐらをかいたワンマン経営が祟ったせいだった。
 そのうえ多額の借金をしてまで店を開店営業した店主たちに、 倒産の情報をギリギリまで知らせなかった。 いずみ屋倒産の情報はマスコミが先にかぎつけ、 新聞やテレビのニュースではじめて店主たちはその事実を知った。 自分たちへの、この不誠実な本社の対応に、店主たちはいきどおった。
 しかし店主たちになす術は何もない。 いずみ屋のチェーン店のシステムは、 本社の大工場から配達されてくる和菓子を、 チェーン店で販売するシステムになっているのだ。 商品が届かなくなると店は営業できなくなり、立ち行かなくなる。 後はもう、出来るだけ早く店を閉めるしかない。

 そんな騒ぎの中、 とあるいずみ屋系列の大工場の工場長が、全国のリコさん人形を工場に集めるよう 部下たちに指示を出した。

(つづく)
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