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すみれ色の帽子
 

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サンタさんの弟子にはなれないわ!

200*年11月29日

 
 午後、ママとデパ地下へ行き、クリスマスのケーキを注文しました。 

「瞳の好きなものを、えらぶといいわ」と、ずるいママはいいました。 

 ママは、たくさんのケーキのなかから、1個だけをえらべないんです。それで、えらぶ仕事を、わたしにおしつけようってわけなの!

 わたしだって、ママとおなじで、どれか1個だけをえらぶなんて、むずかしいわ。だって、どれも、きれいに飾りつけられていて、どれも、おいしそうに見えるんですもの。 

 そうだ、サンタさんで決めよう、と思いました。 

  1. ソリのうえに立ち、ラッパをふいているサンタさん
  2. 記念さつえいしているみたいに、1頭のトナカイとならんで、「チーズ!」しているサンタさん
  3. まじめな顔つきで、バンザイしているサンタさん
  4. かた手をあげて、ウインクしているサンタさん
  5. 「メリークリスマス」と書かれたリボンを、両手でひろげているサンタさん
  6. 重そうに、ふくらんだ袋を、かついでいるサンタさん
  7. ひとりじめでもするみたいに、おくりものの箱をだいて、すわりこんでいるサンタさん
  8. とほうにくれたように、ぼんやりとつっ立っているサンタさん
  9. 白いひげがふんわりと長い、こちらを見ているサンタさん 

 わたしは、9番めのサンタさんを、えらびました。 

 白いひげがふんわりと長いサンタさんは、わたしのほうをしっかりと見て、「わしの弟子におなり」といっているように見えました。 

 サンタさんの弟子になって、トナカイのひくソリにのってみるのも、悪くないでしょうね。でも、わたしはすみれ色の帽子をかぶって、すみれ色の服を着るの。もちろん、服のデザインは、サンタさんと同じものよ。 

 人間たちへのおくりものは、サンタさんにまかせて、わたしは動物たちを担当しましょう。 

 動物たちの好きそうな食べものを、たくさん、ソリに積んでいかなくては。ウサギは、きっと、ニンジンを夢みているわ。ウシは、ほし草ね。シカは、せんべいかしら。ハムスターは、なんなの? 

 家でかっていたハムスターは、好物がそれぞれ違っていたんです。ヒマワリの種が好きなハムスター、サクランボが好きなハムスター、クリが好きなハムスター、ビスケットが好きなハムスターと、いろいろでした。 

 だとすると、ウサギによって、ウシによって、シカによって、好きなものが、あれこれ違っているのかもしれません。

 あっ、白フクロウ。白フクロウがハムスターを、キツネがウサギを、ライオンやトラがウシやシカを、夢みていたら、どうすればいいの? 

 わたしには、夢をかなえてあげる自信がありません。 

 そう、ときには、願いごとがかなわないこともあり、ってことよ! でも、それは、願いごとが届かなかったってこととは、違うわ。 

 願いごとが届いたとしても、かなうこともあれば、かなわないこともある、ってことではないかしら。 

                                 by 瞳

  

 はつもうで

200*年1月1日


「瞳、起きなさい。はつもうでに行くわよ」と、ママがいうので、わたしは起きて顔をあらいました。

 まだ夜中でした。寒いのは嫌だけれど、暗いなかを出かけるのはわくわくします。

 パパとママとわたしは、家から一番近い神社へ行きました。

 神社の入り口のところで、手をあらいましたが、「口もゆすぎなさい」と、ママがいいました。

 柄杓に口をつけたくなかったので、柄杓の水を手にうけようとしたけれど、うまくいきませんでした。ゆすいだつもりになって、ポケットにいれてきた2番めに好きなハンカチで、手と口をふきました。

 古いおふだを出すところには、人形やぬいぐるみもいて、焼かれるのを待っています。そんな人形やぬいぐるみを、わたしは見たくないので、ママがおふだを出しに行っているあいだ、離れたところで待ちました。

 賽銭箱に、お金をなげるときは、きんちょうするわ。賽銭箱になるべく近づいてから、ねらいを定めて力いっぱい放らないと、お金がへんなところに落ちたり、人にあたったりしてしまうんです。

 だからって、神さまは、ねがいごとをきいてくださらないってことは、ないと思うけれど。

 太いつなをゆすって、鐘を鳴らすのが、またむずかしいの。パパが、鐘を鳴らすのを手伝ってくれたので、助かりました。

 ねがいごとをするときに、奥のほうが、あかあかと金色にかがやいているのが見えました。

 そこには、なにがあるのかしら? 

 紘平くんは、鏡があるっていうんです。とくべつな鏡なんでしょうね、白雪姫に出てくる鏡みたいな……。

 パパが、おみくじをひきました。

 ところが、おみくじをひらいて見たとたん、「あっ!」といって、パパは、それをくしゃくしゃにしてしまったんです。

 ママもわたしも驚きましたが、ママは「まあ、あなたったら!」というと、パパの手から、おみくじをひったくりました。

 パパは、「かまわんよ。それは紙さ。ただの紙」といいましたが、きっと、おみくじには、パパのおもしろくないことが書いてあったんでしょうね。

 おみくじをくしゃくしゃにしたパパは、ルール違反をおかした人に見えました。でも、おみくじのしわを、一生懸命にのばしているママは、なんだか、あわれに見えたんです。

 ママとわたしは、パパのおみくじをむすぶ場所をさがしました。針金も、木の枝も、白い鳥がとまっているみたいに、いっぱい。

 ようやく見つけた小枝に、パパのおみくじをむすびました。

 by 瞳


 ひな祭り
                                                                 

200*年2月12日


「ああ嫌だ。また、ひな祭りの季節がめぐってきたわ。めんどうったら、ありゃしない。あなた、お願いね。では、では」

 そういって、ママはどこかへ出かけてしまいました。 

「めんどうだなんて、ひな人形に失礼だよ。なにしろ、高貴なかたがたなんだから」

 パパは押し入れの天袋から、おひなさまを出してくれました。 

「しかし、あれだな。この人形たちの心ここにあらず、といった顔を見ていると、はっきりしてくることがあるね」と、パパはいいました。 

 人形たちは、かりそめにここにいるだけで、真のすがたは、人形の世界にあるに違いないとパパは考えているんです。 

 もし、そうだとしたら、人形の世界では、わたしたち人間が人形ということになるのかしら? 

 わたしは、たぶん、三人官女のなかの一人ではないかと思います。 人形になった心のなかで、「どうか、マミちゃん官女がまんなかではありませんように」と願うんでしょうね。 

 マミちゃんは、意地悪というわけではありませんが、まんなかになると、片方の子とばかり、おしゃべりするんです。 

 ママは、ひな祭りが子供のころから嫌いだったんですって。 ママが持っていたのは古いおひなさまで、一人でおひなさまのある部屋にいると、怖かったんだそうです。 

「瞳のおひなさまより、小さなおひなさまだったけれど、こまごましたものがあれこれあって、なにがなんだか、わかりゃしない。それでも、おひなさまを出してあげないと、箱のなかで踊り出すっていうから、もう必死でかざったものよ」と、ママはいいました。 

 わたしは、人形たちが箱のなかで踊り出すところを見てみたいわ。 こういうのを、怖いもの見たがり、っていうんでしょ? 

 そうそう、ママのおひなさまのなかに、ネズミに鼻をかじられたのがあったんですって! 

「とても上品な、きれいな顔のおひなさまの鼻を、ネズミはどう思ってかじったのかしら。よほど腹ぺこだったのか、子供のネズミが遊びでかじったのか……」

 ママは、気の毒そうにいいました。 

 ママのおひなさまは、いつのまにか、箱ごとなくなったんだそうです。 すっかり、人形の世界に帰ってしまったんでしょうね。 その世界では、かじられた鼻も元通りになったにちがいありません。  

 by 瞳


  牛の夢

200*年6月14日

 
 ママが知り合いの人から、布で作った動物のお人形をもらいました。牛が1頭とフクロウが2羽です。 

 「生地の模様が、よくいかされているわねえ。まあ、この牛の鼻ったら! ちゃんとあなまであるわ。フクロウのアンヨの可愛らしいこと!」
と、ママはしきりに感心していました。 

 お人形たちは、てのひらでつつめるくらいの大きさで、かるいんです。牛は、白い水玉模様のある黒い布で作られています。フクロウたちは、縦じまのある布です。 

 そのお人形たちを見ていたせいかしら。夢を見たんです。 

 牛の夢でした。フクロウたちも出てきたわ。 

「ホーホー」というフクロウのなき声で、牧場にいることに気がついたんです。暗い夜でした。牧場の外灯がなければ、真っ暗だったでしょう。 

「ホーホー」と、またフクロウがなきました。外灯の近くにある木の枝に、フクロウが2羽、ちょこんととまっていたんです。 

 そう、1羽はたしかにフクロウだったわ。でも、もう1羽はどうだったかしら。もしかしたら、オウムだったかもしれません。すがたはフクロウだったけれど、しゃべったんですもの。 

 金色の目をした小さなフクロウが、「ホーホー」というと、黄色い目をした大きなフクロウが「乳しぼりの時間、乳しぼりの時間」って、いうんです。 

 わたしは「ああ、そうだった」と思い、バケツをもって、牛のところへ行きました。それは、たしかに牛だったわ。牛のすがたをしたオウムなんて、あんまりですもの。でも、その牛もしゃべったんです。

 「嬉しいわ、来てくれて。さっそく、しぼってくださる? お乳がはって、痛いから」
 牛は、つらそうにいいました。 

 牛のお乳は、空気をいれすぎたボールみたいになっていました。 

 お乳をしぼれば、しぼるほど、牛はどんどん大きくなっていきました。どんな原理がはたらけばこうなるのかしら、とわたしは不思議に思いました。 

 大きくなっていくだけではなくて、輝きながら、すき通っていくんです。 

「ああ、ありがとう。気持ちがいいわ」と、木のてっぺん辺りから牛がいうと、牛の体全体が、やわらかに光りました。牛の体は、もうすっかり、すき通っていて、むこうにある牛舎やなんかが、体を通して見えました。 

 それでも、牛のちぶさだけは、もとの大きさでした。どんどんお乳をしぼっていたので、お乳はとっくにバケツからあふれていました。それは、牧場の小川となっていきました。 

 夜でしたが、牛乳の小川に、動物たちが来ていました。ママをなくした動物の子供たちや、傷ついた動物たちでした。その牛乳の小川に、うつむいて、じっと折れたつばさをひたしていたツバメが、癒(い)えたつばさを使い、宙返りをしてみせました。 

「わたしのお乳には、生きとし生けるものを、うるおす力があります。お嬢さん、また、お乳をしぼりにきてくれますか」と、空から、鈴の音のようにきこえる声で、牛がいいました。 

「よろこんで!」と、わたしはさけびました。「まあ、ほほほ……」と、牛は嬉しそうに笑いましたが、そうすると、あたり一面が、光に照らし出されたように輝きました。そして、牛のすがたは、すっかり消えてしまいました。 

「あのかたは、神秘の牝(ひん)。しんぴ・の・ひん」と、大きなフクロウがいいました。 

 そうだ、翔太くんに、このバケツのお乳をコップにとって、持っていってあげよう――と、わたしは思いました。翔太くんは、いくらか牛乳アレルギーで、用心しながらでないと、牛乳がのめないんです。

 翔太くんは、幼稚園生になってから、牛乳をのむ訓練をはじめました。それまでは、牛乳のかわりに、豆乳をのんでいました。 

 その話をママにすると、「ヤギのお乳だったら、翔太くんにも、のめるかもしれないわ。人間のお乳に近いっていうから。といっても、今はヤギは、あんまりいないわね。昔だったら、田舎ではね、けっこうヤギを飼っていたものよ」と、ママはいいました。 

 でも、消えた、あのすてきな牛のお乳だったら、翔太くんにものめるんじゃないかしら。 

 そのとき、大きなフクロウが、「起きる時間、起きる時間」といいました。 

起きる時間ですって? 起きているのに、もっと起きろっていうの? そのうえ、小さなフクロウはホーホーとなかずに、「ジリリリリ……」と、けたたましい声を出しました。 

 それは、目ざまし時計の音だったの。

 by 瞳

 


 
 

 

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