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                       セレクション     2006年 | 2007年 | 2008年
                       
セレクション


梨とピノッキオ   
        

 

 今夜の食後のデザートは、日田産の梨でした。日田市にいた頃は、日田産の美味しい梨を、それが普通の梨だと思って食べていました。汁気が多くてとても甘い日田産の梨が有名であることは、こちらに来て知りました。 

 梨といえば、連想するのが、『ピノッキオの冒険』です。木切れから人形になって間もないピノッキオが空腹を訴えて、作り主のジェッペットから彼の朝飯用だった3個の梨を差し出され、最初は皮と芯は食べないといいながら、あとになって全部食べてしまう場面は、忘れられません。 

 忘れられない場面は、『ピノッキオの冒険』には沢山あります。気ままで、無責任で、率直で、変に素直で、無鉄砲なピノッキオは子供がその子供らしさで大人を惹きつける類の特徴を悉く備えています。 

 自分が子供だったときに読んだ『ピノッキオの冒険』は、何か恐ろしい物語として印象づけられました。死んだ少女であるかのような仙女の初登場の仕方は異様だし、ピノッキオをペテンにかけるネコとキツネは嫌らしいし、ロバになったまま死んでしまうトウシンはあまりにも悲惨、フカの腹の中でジェッペットと再会するピノッキオの運命は数奇すぎる……。 

 最近のファンタジーものが何か抽象的で、社会背景もおぼろげな中で、主人公が正体のはっきりしない敵を相手にむやみに戦うのに比べ、『ピノッキオの冒険』は具体的です。社会背景も、大人や子供が抱える困難もくっきりと描かれていて、ピノッキオの行動が招く神秘や奇怪や美の場面を背後からがっちりと支えています。 

 ピノッキオの場合、闘う相手は、相手が反映させる自分そのものです。
 ファンタジーもので特徴的なのは、主人公は特別の能力を秘めた無垢な人間で、相手は強大でしかも内面的にはうつろというところです。そして魔法や神器などによる力(暴力)の行使で相手をやっつけます。暴力的場面だけが嫌にリアルです。
 

 趣味の悪い悪夢のようなファンタジーものからピノッキオに戻ると、わたしはほっとします。