サンプルマガジン

■ うなぎスーパーデラックス ■


電車に乗っていると、
つり革にうなぎをぶら下げて焼いているおじさんを見かけた。

思わず、

「かば焼き?」

と聞くと、

「このうなぎはなぁ・・・
  ・・オレが小さい頃から寝起きを共にしてきたカワイイ奴なんだ。
  それなのにオトナになんかになりやがって・・・ちくしょう」

そんな事は聞いてねえ。

「ヘビ二郎・・・お前のギセイは忘れないよ」

うなぎだろ、それ。

「お前のおっかさんのトコロへ行かせてやるからな」

ヨダレ出して、親うなぎまで食ったのかよ。

「なんて、いいニオイを出すんだ・・・ヘビ二郎や・・」

う、うまそうだ・・・。


  ピピピピー!

「コラコラコラ!!」

そりゃ、車掌もくるよな・・・。

「あなた何やってるんですか!」

「え? あ・・・うなぎを少々・・・」

「ここをどこだと思ってるんです!」

「え、あ、ハイ・・・」

「こんなにも大勢のヒトが見てるんですよ! もっと丁寧に焼きなさい!」

アンタもグルなんかい・・・。


「ハイ! 丁寧に焼かせていただきます!」

  ジュウウー パタパタパタ

結局、焼きつづけるのかよ。

「ああ、美しい姿になって・・・ヘビ次郎や・・」

  ピピピピー!「もっとウチワであおぎなさい!」

やっかいな奴が一人増えたな・・。

「もうすぐ、もうすぐオマエを食べなきゃいけないなんてな・・・グスッ」

  ピピピピー!「もっとタレをかけなさい!」

もういいよ、勝手にやってくれ・・・。


「ちょいとアンタたち、いいかげんにしておくれ」

一人のおばさんが立ち上がった。

「かば焼き?ふざけるのもたいがいにしなさいよ!」

おお、はじめてまともな人があらわれたぞ。

「電車の中でタレをつけてうなぎを焼く?それが常識人のする事?」

 「うっ」 ピッ「ええと・・・」

「常識人なら、こんな大勢のヒトの見ている前では・・・」

 「ハイ」 ピッ「あの・・」

「白焼きに限るのよ! タレをつけて焼くなんて邪道だわ!」

・・・・またか。

「ハイッ もう一匹は白焼きで焼かせていただきます!」

 ピーピピッ「こんどはもっと丁寧に焼きなさい!」

ほかの乗客は、白い目でかば焼きと白焼きのほうを見ている。

そりゃそうだよな。


しばらくすると、かば焼きと白焼きがこんがりできあがったようだ。

「食べるぞ、ヘビ次郎や」 ピッ「丁寧な焼き上がりです」 「塩をつけて食べましょう」

おいおい、ホントにここで食べる気だよ。

・・・しかし、この匂いにはたまらないものがある。

思わず、

「あのー、僕にもかば焼きのほうを・・」

言ってしまった。

 ジロッ

おじさんとおばさんと車掌の視線が僕につきささる。

「いいよ、こっちに座りな」

「あ、ありがとう」

僕の前に、かば焼きのヘビ次郎が置かれた。

「ささ、食べて食べて」

おじさんは目に涙を浮かべている。

「いただきます」

 はむっ

「う、うまいよコレ・・・」

「そのはんずだ。毎晩ヘビ次郎の背中をさすってやったから・・・」

「ヘビ次郎・・・」

ふと横をみると、おばさんと車掌が白焼きにかぷついていた。

 ピッ「丁寧な味がします!」 「常識人には白焼きがおいしいのよ」

 はむはむ はむはむ はむはむ はむはむ

僕たち4人は、温かいうなぎを心ゆくまで味わった。

 

『まもなく〜 渋谷、渋谷』

 キイイイー

 プシュー

 スタッ

「こら、おまえら!」

ふと見ると、自動ドア近くに警官が立っていた。

「うなぎを電車内で焼いているとの通報があった。おまえらで間違いないな?」

「・・・」 ピッ「は、はい」 「食べていただけです」 「あ・・・・」

「こんなことをしていては迷惑だから、4人ともついてきなさい」

僕ら4人は、なぜか駅の外の交番につれていかれた。


「ここだ、座りなさい」

僕らが座ると、警官はおもむろに白い発泡スチロールの箱を取り出した。

「きみらの罪にたいする処罰が、この中に入っている」

「・・・」 ピッ 「はい」 「常識的な判断を・・」 「???」

  パカッ

警官は箱をあけた。

「ここに、うなぎが20匹ある。これを焼いてもらおうか」

おいおい、アンタもグルになる気なんかい・・・・。

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