<世界航空機年鑑2013>

アグスタウェストランドAW609
ティルトローター機

 

 アグスタウェストランド社が開発中の民間向けティルトローター機。発端は1996年、ティルトローターの開発実験を重ねてきたベル・ヘリコプター社がその経験にもとづき、ボーイング社と組んで開発に乗り出したもの。しかし、まもなくボーイングが手を引き、代わって1998年アグスタ社が参加することになった。このためベル・アグスタ・エアロスペース社(BAAC)と呼ぶ合弁会社が設立された。

 原型1号機は2003年3月7日ベル社で初飛行した。14時間の試験飛行をしたのち、長期の地上試験を続けて2004年秋に飛行を再開、2006年1月ヘリコプターから飛行機モードへの遷移飛行に成功した。さらに高度4、500mで472km/hの飛行速度を達成している。イタリアで試作された原型2号機も2006年11月9日初飛行した。

 しかし開発日程は徐々に遅れ、作業が進まなくなってきた。米軍向けオスプレイの不具合が続発したため、ベル社技術陣の手がそちらの方に取られたのと、経営陣のティルトローター民間機の将来に関する見方が悲観的になったものと思われる。結果として、ベル社はBA609から手を引くことになり、2011年夏のパリ航空ショーでBAACの株式と製造販売権の全てをアグスタ社が買い取り、単独で開発を続けると発表された。ただしベル社は、今後も技術面、製造面で協力し、将来は1機売れるごとにライセンス料を受け取ることになっている。

 こうしてBA609の呼称はAW609に変わり、原型機はこれまで、アメリカとイタリアで1機ずつ飛んでいたのに加えて2機が追加され、4機で試験飛行をおこなうことになった。そのうち2機はテキサス州に設けられたアグスタ社の開発拠点で飛行を続ける。また、FAAの型式証明も全てアグスタウェストランド社が取得する。この型式証明のためにFAAは「パワードリフト」という新しいカテゴリーを設定する予定で、飛行機とヘリコプターの既存の安全基準に遷移飛行の基準を加えたものになる。

 機体構造はアルミ合金のほか複合材を多用し、主翼とローターブレードは全複合材製。尾部はT型尾翼。垂直尾翼には後退角が付いている。胴体断面は円形で、キャビンは与圧されているため乗り心地が良く、騒音も少ない。

 操縦席は最新のグラス・コクピット。操縦系統は三重のフライ・バイ・ワイアを採用、離着陸時に片発が停止しても安全な飛行が維持できるし、氷結気象状態でも飛行可能。計器飛行もできる。これまでに前進飛行で617q/h、後進・横進飛行で65q/hを記録している。

 型式証明の取得目標は2015年、引渡し開始は2016年の予定である。最近までの受注数は70〜80機といわれる。

[データ]ローター直径7.9m、全長14.1m、全高(垂直尾翼先端)4.5m、全備重量7、630kg、有効搭載量2,500kg、発動機P&WC PT6C-67A(1,940shp)×2、最大巡航速度509km/h、ホバリング高度限界3,048m (地面効果内)、1,524m(地面効果外)、運用限界高度7,620m、航続距離1,290km、乗員/乗客1―2/6-9、初飛行2003.3.7.     

 (西川 渉、世界航空機年鑑2013年版所載)

【関連頁】

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ファーンボロ航空ショーで急旋回を見せるAW609ティルトローター機


AW609の前身、ベルXV-15実験機の見取り図

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