阪神大震災とヘリコプター

――5年前の報道記事を再読する――

 

 今から5年前、阪神大震災に驚愕した新聞雑誌はさまざまな記事を書いた。ここに私の目に留まった当時の記事の中から「ヘリコプター」という言葉の入ったものを、著作権も何も無視して、私なりに要約し再録しておきたい。

 これらの記事にはさまざまな問題が提起されており、5年を経て解決に向かったものもあれば、手つかずのまま放置された問題もある。とりわけ、なぜ空中消火をしないのかという問題は、当時の議会や政府の答弁が無為無策の弁解と単なる言い逃れに過ぎなかったことは明らかだが、今なお実行のための方策は明確でなく、むしろ後退のきざしすら見える。

 今われわれは、これらの記事を読み返して何を想起し、何を考えるか。これからどうすればいいのか。ここでもう一度、阪神大震災というわが国の災害に関する歴史の一部を省みて、今後の災害対策のよすがとなれば幸いである。

 

◎ 阪神大震災と政府の対応
 1月17日05:46大震災発生、06:30陸自中部方面総監部が全員を非常呼集、07:58陸自部隊48人、阪急伊丹駅で救助活動、08:12海自ヘリコプターが淡路島周辺を偵察飛行。(サンデー毎日、95.2.19) 

◎ ドキュメント60時間
 1月17日5時46分、近畿地方で強い地震。火災、建物倒壊、電車の脱線など大災害が起こる。10時、消防庁が災害ヘリコプター5機の派遣を決定。12時すぎ、近畿管区機動隊など県外の警察官2,418人とヘリコプター7機が出動。15時40分、小沢国土庁長官らが自衛隊機で伊丹空港に到着。ヘリコプターで災害地域を上空から視察。
 19日9時すぎ、スイス災害救助隊員25人が捜索犬12頭を連れて関西空港に到着、自衛隊ヘリコプターで直ちに神戸入りした。11時40分頃、羽田空港を自衛隊機で出発した村山首相が被災地視察のため大阪空港に到着、土井たか子衆議院議長とともに政府専用ヘリコプターで上空から視察。(アサヒ・グラフ、95.2.1) 

◎ 空から見たビルも橋も崩れている
 1月17日午前8時25分、朝日新聞社のヘリコプターで空から被災地を見た。電車が高架から約5辰睛邁爾靴堂たわっている。木造の建物数棟が全壊し、大きな炎のかたまりを噴き上げる。西宮付近で高速道路上に緑のシートが見えた。シートにはけが人がいるという白い文字。ヘリコプターに救援を求めている。
 5〜6階建てのビルが斜めに傾いて赤い炎を上げている。煙が立ちこめ、朝なのに暗くなっている。焦げ臭いが上空約 500辰鯣瑤屮悒螢灰廛拭爾涼罎砲眛ってきて息苦しい。(週刊朝日緊急増刊号、95.2.5) 

◎ 消防庁のヘリコプター6機が現地へ
 1月17日午前、消防庁は兵庫県南部地震の被災地の救助活動のため、東京消防庁、千葉、川崎、横浜、名古屋、京都各市消防局に対し防災ヘリコプターの派遣を要請。計6機が現地に向かった。着陸地は兵庫県消防本部消防学校。(共同通信、95.1.17) 

◎ ヘリコプターや救援隊を続々派遣
 1月17日、兵庫県南部地震で被災した神戸市に全国各地の自治体が相次いで救援のためのヘリコプターや消防隊員らを派遣した。このうち横浜、川崎、京都の各市や香川県などは防災ヘリコプターを現地に飛ばした。(時事通信、95.1.17) 

◎ ヘリコプターをチャーターして日用品確保
 幹線道路の寸断は、スーパーやコンビニエンス・ストアの商品配送に影響を与えているが、ヘリコプターをチャーターしている企業もある。セブンイレブン・ジャパンでは、ヘリコプター7機をチャーターした。滋賀県米原町など2か所の工場から弁当やサンドイッチ類などを積んで、18日午前、京都市内の配送センターに送る。センターからは、約150台のバイクで、商品を店に送る。
 セブンイレブンでは通常、トラックを使って商品を一日に2〜3回の割合で店に送っている。しかし、地震などの災害が起こり、陸上輸送が出来なくなることを想定し、1988年からヘリコプターや船を使った商品輸送などの実験を繰り返してきた。そのノウハウが今回の地震にも生かされ、「スムーズに対応出来た」としている。(朝日、95.1.17) 

◎ スーパー店も物資確保に必死
 兵庫県南部地震から一夜明けた18日、人の交通や物流に多大なダメージが残った神戸市では、スーパー、銀行などが市民生活の確保に必死。スーパーでは、ダイエー・グループがフェリーを使って海上輸送を実施すれば、セブンイレブンは東京からヘリコプターで弁当類の空輸を計画。ダイエーでは開店を聞きつけた客が集まり始め、飲料水などを買い求めていた。(共同通信、95.1.18) 

◎ 札幌市のヘリコプターが救援へ
 1月18日午前、兵庫県南部地震の被災民救援のため札幌市の消防ヘリコプターが神戸市に向け出発した。自治省の要請を受けたもので、救急患者の搬送や物資の輸送に使われる。(共同、95.1.18) 

◎ ヘリコプターの消火活動阻む熱気流
 兵庫県の地震で18日朝までに、神戸市で約170件、大阪府で約30件の火災が起き、一部はまだ燃え続けている。消防庁や東京消防庁には、「なぜ空からヘリコプターで水をまいて消火活動をしないのか」など、市民からの電話が殺到している。
 神戸市消防本部は、今回の地震に伴う火災が広範囲に広がったことについて、「断水のため消火栓が役に立たず、水が使えなかった。さらに同時多発的に火災が起ったため、人員が手いっぱいで、初期の対応が難しかった。火勢が衰えてきたのは、燃え尽くして燃えるものがなくなったということだろう」と話している。
 また上空では、火災による熱気流が強く、ヘリコプターが近づくのは危険なため、空からの消火は難しいという。(朝日、95.1.18) 

◎ 経団連、救援ヘリコプターの提供要請
 1月18日、経団連は地震災害に対する支援策を決めた。まず、被災地への救援物資輸送を円滑に進めるため、業界団体や企業に対しトラックやヘリコプターの提供を要請する。(毎日、95.1.18) 

◎ 物流に大きな被害
 阪神大震災で経済活動に欠かせない物流が大きな被害を受けている。陸路輸送が難しいため、緊急物資の輸送で企業から要請が出ているのがヘリコプター輸送。朝日航洋では東京に駐機しているヘリコプター12機を急きょ大阪の八尾空港に送り込んだ。
 現在、品不足で頭を抱えるスーパー数社の物資輸送や、各省庁の調査用として依頼が来ているものの、神戸市内の被災地近くにヘリコプターが着陸できるところがないため候補地を探している。(毎日、95.1.18) 

◎ 非常食をヘリコプターで空輸
 時間の経過とともに被害が拡大している兵庫県南部地震に対する企業の援助活動が本格化してきた。おにぎりやや飲料水を届けたり、電機メーカーが業務用無線機を無償で貸与する例もある。
 大手スーパーのイトーヨーカ堂は18日、兵庫県対策本部に、おにぎり22,000個、ミネラルウォーター4,320本、ウーロン茶25,000本をヘリコプター5機による空輸と緊急車両による陸上輸送で届けた。19日も継続する。ニチイやジャスコも非常食や飲料水を送った。(時事通信、95.1.18) 

◎ 人体への影響で空中消火を断念
 1月18日、政府首脳は、阪神大震災により神戸市内で大規模な火災が続いたことに関連し、ヘリコプターによる消火剤散布を村山首相らが一時本格的に検討したが、散布した際の人体への悪影響への考慮などから断念したことを明らかにした。
 火災については、国民から「なぜ、ヘリコプター消火をしないのか」との問い合わせ電話が首相官邸にも殺到、五十嵐広三官房長官らもヘリコプター消火の可能性を探った。首相側近の一人は断念した理由について、〇害仍と違い、消火剤を市街地に散布した場合、人体に悪影響が出る、▲悒蠑嘆个寮騎寮への疑問、水を散布すると水蒸気爆発の恐れがある、の3点を挙げた。今後、都市火災の消火技術が検討課題となろう。(毎日、95.1.18) 

◎ 海や空からも救援物資
 1月18日、神戸市には交通マヒ状態に陥っている陸路を避けて、海や空から救援物資が届いた。空からは、神戸市消防局と他都市のヘリコプター6機が、吹田市のパン工場から菓子パン3万個と飲料水を同日夕までに、神戸市中央区の東遊園地などにピストン輸送した。(毎日、95.1.18) 

◎ 厚生省、医薬品を被災地に空輸
 1月18日、厚生省は地震の被災地で不足している抗生物質など医薬品、衛生材料、オムツ、ミルクなどをヘリコプターを使って空輸することを決めた。第一陣は19日午前に大阪・八尾空港から神戸市内に届けられる。同省によると、大阪から神戸までの陸路は交通渋滞のため5時間以上かかっており、ヘリコプターで輸送することにした。(時事通信速報、95.1.18) 

◎ 自衛隊6,000人が救援作業
 1月18日、防衛庁からは陸上自衛隊約6,000人が人命救助や給水などの救援作業にあたった。同日夜までに態勢は1万人以上となり、19日中には13,000人の作業態勢が整う見通し。このほか全国22の普通科連隊約16,000人に準備指示を出しており、最終的には29,000人態勢も可能となる。
 一方、海上自衛隊が18日昼までに徳島基地からヘリコプターで届ける予定だった非常用食料1万食は、着陸地の変更などで昼までに2,500食だけが西宮市に届けられ、残りの輸送は夕方となった。また、航空自衛隊はパン2万個、おにぎり5千個、毛布1万枚を大型輸送機などで被災地に空輸した。(毎日、95.1.18) 

◎ 自衛隊ヘリコプターによる輸送を検討中
 1月18日夜、地震対策関係閣僚会議で示された政府の主な対策の中で、ライフラインのひとつ、水対策としては海上保安庁による海上輸送(40トン)、給水車(70トン)で対応すると共に、自衛隊によるヘリコプター輸送を検討中。(毎日新聞、95.1.18) 

◎ ダイエー、自衛隊ヘリコプターで物資輸送
 ダイエーは19日午前、自衛隊のヘリコプターを使って被災地にある店舗へ物資を緊急輸送した。これは兵庫県地震対策本部が要請した自衛隊ヘリコプターで、兵庫県伊丹市から神戸市北区にある消防学校に水や食料品を空輸。そこから同社の配送車で各店に届けた。午前中に3便で計十数トンの物資を輸送した。同社はこれとは別に、フェリーによる輸送も引き続き実施している。(共同通信、95.1.19) 

◎ ダイエー、配送トラックを海上輸送
 1月19日、ダイエーは被災地への物資輸送のため、関西汽船のフェリー船(約1万トン)をチャーター、食料品などを積んだトラック48台を大阪・南港から兵庫県の東播磨港まで海上輸送し、兵庫県下の21店舗に配送した。大阪方面からの陸送が、交通渋滞で困難になっているための措置。一方ヘリコプターでも同日午前中に計2回、伊丹空港から神戸市北区の学校まで水や食料品などを空輸し、ダイエーやローソンの店舗に配送した。 (時事通信、95.1.19) 

◎ ヘリコプターを無償提供
 1月19日、川崎重工業は大型ヘリコプター、バートルKV-107(30人乗り)を含むヘリコプター4機を兵庫県と神戸市にパイロットつきで無償提供、物資輸送に利用されているという。(時事通信、95.1.19) 

◎ 陸・海・空路で救援物資を輸送
 神戸市民生局のまとめでは、救援物資が全国の自治体などから続々と到着。物資輸送の申し出は19日午後6時現在で約450件。市内への搬送はトラック、消防ヘリコプター、海上保安部の巡視艇など、陸・海・空路を利用している。(毎日新聞、95.1.19) 

◎ トヨタ、自社ヘリコプターで救援物資
 1月19日、トヨタ自動車は地震被災者救済のため、粉ミルクや食料、救急セットなどの救援物資2,000万円相当を自社保有のヘリコプター2機とトラック6台で輸送した。ヘリコプター2機は同日、豊田市の元町工場ヘリポートから救援物資を積みこみ、神戸市役所に隣接する公園に向けて飛び立った。(日本工業、95.1.20) 

◎ ダイエー、海空から輸送
 ダイエーは被災地の店舗へ空路による輸送を強化するため、南茨木店の駐車場に臨時ヘリポートを設けた。東京からヘリコプターをチャーターし、おにぎりや弁当などの物資を空輸、18日には八尾空港、同社茨木食品センターから神戸市中央区のポートアイランドに降ろした。また関西汽船の1万トン・フェリーもチャーターし、商品供給に努めている。(日刊工業、95.1.20) 

◎ 外国人記者の見た震災
 地震大国、日本で起きた歴史的な地震は海外にも衝撃波となって伝わり、各国の日本駐在特派員は次々と被災地に入り、母国へ向けて精力的な報道を続けている。近代都市が一瞬にして崩壊した現場に目を見張り、被災民への同情を抱く各国特派員に、防災体制、救助、復旧活動はどう映ったか。
 神戸市長田区の火災現場で取材したフランス人記者は「4時間も燃え続けているのにだれも消火に来ない。大地震への備えはどうなっているのか」と驚きを隠さない。米国の経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の記者も「救助、復旧作業は神戸市に負担が掛かりすぎているようだ」と対応の欠如を批判する。
 英ロイター通信の記者は、1年前に取材したロサンゼルス地震と比較しながら「ヘリポートが少ないなど問題点は多い。しかし想像をはるかに超える地震に見舞われたことを考えると最善を尽くしていると思う」と冷静な見方を示した。(共同通信、95.1.20) 

◎ ヘリコプターでの物資輸送を強化
 政府は19日夜、首相官邸で村山首相を本部長とする緊急対策本部の初会合を開き、.悒螢灰廛拭爾砲茲詈資輸送の強化、∪府の出先機関を中心に現地対策本部の設置、6杁洌緡殿崟の整備、た糧、飲料水の供給体制強化を決めた。
 また陸上交通の復旧のめどが立たない状況を重視し、支援物資を空路で集中輸送するため、全国からヘリコプターを大量投入することになった。亀井運輸相を中心に具体案を検討する。(共同通信、95.1.20) 

◎ 企業の支援活動広がる
 行政の対応の遅れが批判されている中で、企業側の積極的な姿勢が目立つ。関西で多くの店舗を展開しているスーパー最大手のダイエーは、地震が起きた17日からヘリコプターで現地に物資の供給を始めるとともに、18日以降、西宮店などの店頭で被災者に飲料水を提供。イトーヨーカ堂もヘリコプターやトラックなどで水やおにぎりを避難所に運び無償で配った。(共同通信、95.1.20) 

◎ 救援物資の輸送にヘリコプターを動員
 1月20日、運輸省は民間ヘリコプター数十機を借り上げ、空から救援物資を運ぶ体勢づくりを始めた。被災地内に臨時ヘリポート数か所以上を設けて、関西、伊丹、八尾空港に集めた救援物資をヘリコプターで運ぶ。自衛隊ヘリコプターはそれ以前から被災地3か所の臨時ヘリポートに物資を輸送しているが、これに民間ヘリコプターが加わり輸送力が強化される。(朝日新聞、95.1.20) 

◎ 民間ヘリ、大阪〜西宮間で救援輸送開始
 運輸省は民間ヘリコプターを借り上げ、20日午後5時すぎから地震被災地へ緊急物資輸送と人員輸送を始めた。第1便は大阪空港から被災地側のヘリポートに決まった西宮市民運動場へ、朝日航洋の小型機で物資を輸送した。
 運輸省の計画では、今後、大阪、八尾両空港に運び込まれ集積されている救援物資を同運動場まで1時間に1往復の割合でシャトル輸送する。
 使用機材は朝日航洋のヘリコプター7機で、機種により各2〜0.5トンの物資を輸送。災害対策本部から要請があれば日没後も飛行する。
 人員輸送は同運動場から大阪市役所までの間を、東邦航空のヘリコプター2機(最大18人乗り)を使い1時間に1往復。輸送対象者は緊急に他地域へ移動する必要がある被災者が中心。運輸省の協力要請を受けて両社以外にも2社がヘリコプターの提供を申し出ており、被災地にヘリポートが確保でき次第、輸送ルートの拡大、運航回数の増強を進める方針。
 一方、自衛隊ヘリコプターによる物資輸送はヘリポート設置場所の関係で神戸市内の被災地向けになっており、運輸省は民間ヘリコプターによる輸送を自衛隊と重複しない被災地に充て、きめ細かい輸送網を構築していくとしている。
 海上保安庁は同日までに急病患者を緊急輸送するため神戸港に接岸中のヘリコプター搭載型巡視船から大阪、八尾両空港までヘリコプターを運航させる態勢を整えた。要請があれば西宮市民運動場から両空港までの輸送もする。(共同、95.1.20) 

◎ 民間ヘリコプターで救援物資の輸送開始
 運輸省は20日午後、借り上げた民間ヘリコプターで被災地に対する救援物資のピストン輸送を開始した。前線基地となる伊丹、八尾両空港と西宮市民運動場を往復する。被災地からの移動を望む人の輸送も同時に始めた。
 救援物資輸送には7機を導入、夜間も輸送する。人員輸送には2機を導入、安全を考慮して輸送は日中のみとする。輸送は兵庫県対策本部の要請に応じて実施、間隔はともに1時間1往復程度。輸送にかかる時間は10分から20分程度という。輸送に協力するのは大手の朝日航洋と東邦航空。
 同省は今後、輸送ルートや投入機材、輸送頻度を増やすとともに被災地内のヘリポート確保に努めるとしている。(時事通信、95.1.20) 

◎ 電力復旧の支援体制
 関西電力は、ピーク時100万軒の停電復旧のために、他電力会社からの応援も得ているが、電気事業連合会によると、関電を除く8電力会社を合せてヘリコプター21機、要員2,940人という規模の支援が可能。(日刊工業新聞、95.1.20) 

◎ ヘリコプターの利用急増
 地震の影響で、ヘリコプターの利用が急増している。救援物資の輸送や報道取材のほか、安否を気遣うプライベート飛行や損害保険会社の空撮もある。阪急航空ではヘリコプターのチャーター依頼に追われ、向こう1週間分がいっぱい。中日本航空でも神戸ヘリポートまで報道関係者を運んだほか、被災者の安否を気遣う個人客を運んでいる。(日刊工業新聞、95.1.21) 

◎ 企業ヘリコプターによる支援
 経団連の呼びかけに応えて、企業が提供を申し出たヘリコプターは1月19日現在、10機に達した。だが、経団連によると、兵庫県側は感謝しながらも、すでに自衛隊のヘリコプターが60機余り稼働しており、当面使用の予定はないとの意向を示した。(読売、95.1.21) 

◎ 法規を緩和してヘリコプターの活用を
 1月19日夜の緊急対策本部の初会合で、民間機も含めてヘリコプターによる物資輸送の強化が決まった。もっと早くヘリコプターが活用されていれば、物資輸送も迅速におこなわれ、被災者があれほどの空腹と渇きと寒さの中に放置されることもなかったであろう。非常時には、支援物資を搭載したヘリコプターが適当な場所に許可なしでも離着陸できるよう法規を緩和し、活用することが大切だ。(読売、95.1.21) 

◎ 自衛隊の出動
 地震から5日後の1月22日、現場では16,000人の自衛官が活動していた。5日間で200人をガレキの下から救い出した。しかし当初は「出動が遅すぎる」「ヘリコプターから水を撒いて火事を消せないのか」等々の怒りや苦情が防衛庁に殺到した。しかし自衛隊側にも反論がある。伊丹の中部方面総監部が非常呼集をかけたのは午前6時30分。7時58分には50人が阪急伊丹駅に出動、倒れた駅舎で人命救助に当たった。いわゆる「近傍災害派遣」である。ほかにも出動し、偵察機を飛ばして被害を調査したというが、どれもテレビには映らず、印象は薄かった。(FOCUS、95.2.1) 

◎ 三重へ透析患者をヘリコプター輸送
 1月23日、神戸市の六甲アイランド病院から津市の三重大付属病院に阪神大震災で人工透析が困難になっている腎臓疾患の女性1人がヘリコプターで運ばれた。この日、同病院からヘリコプターで三重大のグラウンドに直接搬送され、待機していた救急車で集中治療室に運ばれた。同大では20人の患者受け入れが可能としており、要請に応じて受け入れていく方針。(共同通信、95.1.23) 

◎ 関西空港に米から救援物資
 1月23日、阪神大震災むけ救援物資約90トンが米国から関西国際空港に到着した。貨物専用のジャンボ機がほぼ満杯となる分量で、送り主は米国の非政府組織アメリケアーズ(NGO)。内容は医薬品、テント、毛布、寝袋など。日本国際救援行動委員会を通じ、神戸の災害対策本部に送られる。医薬品の一部は同日中にヘリコプターで空輸された。(共同通信、95.1.23) 

◎ 自衛隊ヘリコプターで政府首脳らを召集
 1月23日、政府は、首都圏で阪神大震災と同規模の地震が発生した場合、政府首脳や各省庁、自治体幹部の非常招集用に自衛隊ヘリコプターを使って緊急輸送する方針を固めた。災害対策基本法にもとづいた首都圏防災計画に盛りこむ。
 阪神大震災では、神戸市や兵庫県の幹部、防災担当者自身が被災者であったうえ、道路や鉄道が破壊されたため、職員の役所出勤が遅れ、被害状況の把握や対応に手間取った。
 首都圏でも関東大震災クラスの地震が発生した場合は、自治体機能に加え、政府機能のマヒも予想され、災害への対応が今回以上に遅れることは必至。自治体や警察でもヘリコプターを所有しているが、機数に限りがあるうえ、パイロットらの当直体制も十分でなく、大規模地震が早朝や夜間、休日に発生した場合に備えて、自衛隊ヘリコプターによる非常招集が不可欠と判断した。
 防衛庁によると、首都圏を管轄する陸上自衛隊東部方面隊には、輸送など多目的に使用できるヘリコプターとして、10人乗りから55人乗りまで3機種77機が宇都宮、立川、木更津、土浦などの陸自駐屯地に配備されており、被害の少ないところから直ちに飛び立たつことが可能。同庁では、災害対策に当たる自治体や政府機関の幹部について居住地域ごとに集合場所を決め、震災の発生直後から都内や各自治体所在地などに緊急輸送するとしている。
 災害時に首都圏でヘリコプターが着陸できる用地についての調査はすでに終わっており、陸・海・空自衛隊では地割れなどで着陸不能なときは上空から吊り上げる訓練などもしている。(読売新聞、95.1.24) 

◎ 消防車もヘリコプターも役に立たなかった
 消防車は全く役に立たなかった。道路は走れないし、現場に水はない。といってヘリコプターは大火のそばに近づけない。近づいてもローターの台風のような風で却って火をあおるし、高いところから水を撒いても霧雨状になる。(NTVニュース、95.1.25) 

◎ 被災地の児童らヘリコプターで国内留学
 1月26日、阪神大震災で被災した神戸市の小、中学生9人が京都市へ向けヘリコプターで飛び立った。京都市教委が募集した「一時留学」の第一陣で、家族らと避難所住まいをしている児童がほとんど。京都市内の高校内にある宿泊施設に入居し、近くの小、中学校に編入、3月末まで通学する。中に風邪をこじらせた児童もおり、車などでは長時間かかるため、ヘリコプターの「特別サービス」となった。同市教委ではこれら児童を含め130人を受け入れる。宿泊施設には京都市の教師らが常駐、24四時間体制で面倒を見る。(時事通信、95.1.26) 

◎ 遅れたヘリコプター輸送の見直しを
 1月26日、陸上自衛隊は、ヘリコプターを利用した物資輸送などが遅れたことをめぐり、震災時のヘリコプターの運用態勢見直しを自治体に働きかける方針を固めた。兵庫県などがヘリポートの決定に時間がかかったことを踏まえ、地震発生直後ヘリコプターの運航をどう確保するかを地域防災計画で明確にしてもらうのが狙いで、防衛庁は自治体に対し、自衛隊との連携強化を働きかける方針。
 17日に偵察機を飛ばした航空自衛隊によると、神戸市内の公園などは避難住民であふれ、ヘリコプターが着陸できる場所は見つからなかった。陸上幕僚監部によると、自治体側がヘリポートからの物資輸送路の確保など調整に時間がかかり、自衛隊機が公園や野球場など市内9カ所を利用できるようになったのは19日になってから。
 防衛庁によると、中部方面隊が持つヘリコプター約70機のうち、17日に29機を投入、海自と空自の計12機も加わり、偵察と物資の輸送を行った。陸幕長は「静岡県のように、自衛隊のヘリコプターが着陸できる場所が決まっていると、容易に多くのヘリコプターを投入できる」として、ヘリポートの確保など自治体と協議していきたい意向を明らかにした。
 東海大地震を想定した静岡県の地域防災計画では、市町村の約8割が避難地とは区別したヘリポート専用地として約150か所を選定。公共施設の屋上のヘリポートには、番号をふって上空から分かるように表示し、どこを使うか自衛隊とも協議している。(朝日、95.1.27) 

◎ 患者搬送ヘリコプター出遅れ
 地震によるけが人や重病人を搬送するため、厚生省と自治省はヘリコプターを待機させたが、これを利用した患者搬送は36件にとどまっている。兵庫県がヘリコプターを断り、被災地の病院に連絡しなかったため。病院側は「もっと早く知っていれば、重傷患者を搬送できたはず」と批判している。ヘリコプターは19日からで4機が神戸市北区の市民防災センターで待機したが、出動回数は20日までに1件、26日までに36件、42人の搬送にとどまる。それも公立病院など一部の中核病院にとどまり、現場の病院は重傷患者をかかえながら手術もできず、ヘリコプターのことは知らなかった。(朝日、95.1.28) 

◎ 市街地のヘリコプター消防は有効か
 火災の広がった阪神大震災では「なぜ空から消さないのか」という抗議が首相官邸や防衛庁などに多数寄せられたが、自治省消防研究所は28日までに「現状では市街地火災に対してヘリコプターによる空中消火の効果は小さく、今後研究が必要」との見解をまとめた。同研究所によると、現在の機材では消防ヘリコプター1機が一度に投下する水量は最大1.5トン。住宅火災の場合、1か所の消火に毎分1トンの水を20分間かける必要があり「阪神大震災では、多数のヘリコプターを投入しなければ効果は期待できなかった」としている。
 また民家の屋根の上に落ちた水は流れてしまい、消火効果が落ちる。高度80m程度から投下するため、狭い範囲に水量を集中させるのは困難だが、高度を下げるとヘリコプターの回転翼が起こす風で逆に火勢を強める恐れがあるという。
 防衛庁などは山林火災に使う消火剤は「人体に有害」と説明した。しかし同研究所は「消火剤は肥料と成分が同じで、有害ではない」と否定している。
 同研究所の専門家は「空からの消火は林野火災の延焼防止を想定している。これまで市街地の火災に使用されたケースは日本でも海外でも聞いていない。今回の震災を教訓に、一度にもっと大量の水を運べる機材の開発や大型ヘリコプターの導入など、空中消火を市街地火災にも応用する研究が必要になるだろう」と話している。(共同通信、95.1.28) 

◎ 防災ヘリポートの使用は1か所だけ
 神戸市内の防災用ヘリポート12か所のうち、阪神大震災当日に物資輸送のため自衛隊が使用できたのはわずか1か所だけだったことが、30日までに明らかになった。ヘリポートが被害を受けていたり、指定地域に住民が避難していたことに加え、市街地に防災用ヘリポートが指定されていなかったことが主な原因で、避難住民に対する非常用食料の輸送が遅れたケースもあった。
 兵庫県は1991年に策定した地域防災計画で、災害時にヘリコプターが発着できる地点として神戸市内に12か所を選定、防災用ヘリポートに指定していた。しかし地震発生後、神戸ヘリポートなど海岸部の3か所は橋の損壊などで使用不能となり、六甲山など周辺部の5か所は空輸後の陸上輸送に時間がかかるため使用を断念。また長田区の神戸市民グラウンドは避難住民が詰めかけ、他の2か所も用地の被害状況が把握できず、結局17日は、海上自衛隊阪神基地(東灘区)の1か所しか使えなかった。
 自衛隊では地震発生3日目の19日までに、王子公園や県庁ヘリポートなど市街地を中心に7か所のヘリポートを確保したが、18日朝の段階では、海上自衛隊ヘリコプターが予定していた消防学校グラウンドへの着陸もできず、被災民のために緊急輸送した非常用食料1万食の到着が6時間も遅れた。
 これについて、陸上自衛隊の幹部は「神戸市とは防災訓練を実施しておらず、日ごろからヘリコプター活用の機会が少なかったので、適地選定に時間がかかった」としている。
 一方「緊急用として想定していた学校の校庭などは、避難住民で膨れ上がり、全く使用できないことも今回の地震で明らかになった」との指摘もあり、防衛庁では全国の自衛隊に対し、地元自治体の防災担当者を交え、災害時に使用できるヘリポート適地の再調査を指示することにした。(読売新聞、95.1.30) 

◎ 政府の初動に問題
 1月30日、五十嵐官房長官は、記者会見で政府の緊急初動体制に問題があったことを認め、「警察や自衛隊がすばやくヘリコプターなどで上空から被害状況を把握し、直ちに情報が官邸に伝わり、すぐ指示ができるようなシステムが必要」と述べた。(朝日、95.1.31) 

◎ 災害時のヘリコプター自動出動態勢を検討
 1月31日、政府筋は災害時の初動態勢について「震度があるレベル以上の時は、警察、消防、自衛隊のヘリコプターが自動的に飛べるようにすればいい」と述べ、一定規模を超える災害発生時には、状況把握や救助活動などのためヘリコプター自動的に出動できるシステムを検討していることを明らかにした。(時事通信、95.1.31) 

◎ ヘリコプターで消火できないか
 地震直後、おさまる気配を見せない火勢に、被災者からは「山火事のときのように、空から消火してほしい」という苛立ちの声も出た。6機のヘリコプターをもつ東京消防庁の説明は「あれだけ燃えていると、上空には強い上昇気流が起きている。ヘリコプターは危なくて飛べない。かといって安全な高さまで上がると、水が霧状に散ってしまい、効果がない」
 一度に1トンもの水を撒くことになるから、倒壊した家屋の下にいる人への影響も心配だという。(AERA、95.1.30) 

◎ ヘリコプターの出動要請ができたら
 都市防災研究所の平井邦彦事務局長は「水の配給も最悪でした。道路が使えないし、給水車が非難所にたどりつけても飲み水用の容器がない。だったらペットボトルをヘリコプターで運んで、学校の校庭に山ほど積み上げればよかった。自衛隊や米軍のヘリコプターの出動が要請できたら、水だけでなく、何でも運ぶことができたでしょう」と語った。(FOCUS、95.2.1) 

◎ ヘリコプターで初期消火
 東京都立大学都市研究所の望月利男教授は神戸の被災地を視察して「首都圏ではかなりのビルに受水槽があるし、兵庫よりずっとましですが、交通渋滞が心配です。ヘリコプターを活用した初期消火を積極的に推し進めるべきだと思います」と語った。(週刊朝日、95.2.3) 

◎ 投書――必要な情報は何か(女子学生)
 火災、ガス漏れ、余震の恐怖におののく神戸の上空をゆうゆうと飛び交うヘリコプターに、町の人たちは「あのヘリは何しとんや。行ったり来たりするなら海から水くんででもまかんかいな。けが人のせて大阪まで運んだれや。用もないのにうろうろすな!」恐怖をあおるだけの情報は要らないと思いました。(朝日、95.2.1) 

◎ ヘリコプターによる画像情報
 1月31日、政府の災害緊急事態即応体制検討プロジェクト・チームの初会合が首相官邸で開かれた。当面の対策としては24時間態勢で情報収集に当たっている内閣情報調査室を活用、災害発生の場合は直ちに官邸に連絡する体制を整える。その際、ヘリコプターによる上空からの画像情報も提供し、情報の質的改善もはかる方針。(朝日、95.2.1) 

◎ 社説――再び大火にしないために
「放水なき火事の焼け跡」というものを、初めて見た。鉄材、トタン板、れんが、かわらだけが残り、壁土が風に舞う乾き切った焦土が延々と広がっている。
 地震後火災で三千棟以上、約40万平方mが炎上した神戸市長田区。乾いた焼け跡は、市内全域の断水で消火栓が使えぬまま、燃えるに任せた痛恨の記録でもある。
 当時、消防・救急隊が直面した困難は「断水」「火災と生き埋めの同時多発」「交通、連絡の遮断」の三点に大別できる。特に断水は、全都市に重くのしかかる課題だろう。
 地震直後、10件を超える火災通報と無数の救出要請を受けた。能力の限界オーバーに加え、現場から届いた「断水」の悲鳴に消防司令はがく然とした。「水が使えぬ消火など考えもしなかった」。
 火災の多くは広い道路に至って鎮火した。消防が延焼防止にも無力だったのは残念極まる。普段の備えが不十分だった点は問われねばならない。
 今回、ヘリコプターによる空中消火や、建物を壊して火を食い止める破壊消防は「経験不足で危険」「補償問題へのためらい」などから実施されなかった。実際に役立つ手段となるよう消防庁を中心に研究と準備を急がねばならない。(毎日新聞、95.2.2) 

◎ 空中消火に飛行艇を検討
 2月2日、小里地震対策担当相は衆院予算委員会で、阪神大震災で防災上の不備と指摘された市街地火災の空中消火について「(救難飛行艇の利用は)有力な提案の一つだ」と述べ、海上自衛隊の救難飛行艇の利用を検討する姿勢を示した。
 新進党の山口那津男氏が「ヘリコプターによる消火は水の供給も追いつかず、技術的に困難だ。固定翼機なら火災の熱気にあおられないし、ホバリングで火勢を強める心配も少ない」と指摘、救難飛行艇を消火用に改造し利用するよう提案したのに答えた。(時事、95.2.2) 

◎ 国会ヘリポート建設で合意  
 2月3日、衆院議運委理事会で、国会にヘリポートを作ることで与野党がほぼ合意、具体的な計画を検討することになった。1〜2億円とみられる建設費は早ければ、1995年度の補正予算で要求することになるもよう。  
 国会にヘリポートを設置する案は、緊急時の閣僚や議員、外国要人の移動などのために1988年にも出たが、運輸省との調整が遅れ予算化まではいかなかった。(共同通信、95.2.3) 

◎ 国会敷地内にヘリポート整備
 2月3日、国会の敷地内にヘリポートをつくる計画が浮上した。衆院議員運営委員会で、閣僚や議員の緊急移動に必要ということで与野党が合意、新年度の補正予算案に盛りこみたいとしている。国会にヘリポートを設置する計画はこれまで何度か浮上したが、立ち消えになってきた。1988年には国会図書館バス駐車場の上につくる案が出たが、電波障害などを理由に実現しなかった。(朝日、95.2.4) 

◎ 国会内にヘリポートを設置      
 2月3日、衆院議運委理事会で「国会内にヘリポートを造ろう」という提案が出て、与野党が協議を始めることになった。災害など緊急事態が発生した際、閣僚や議員、外国の来賓らがヘリコプターで行き来できるようにしようという構想。 ヘリポート構想は1988年当時も検討されたが、立ち消えになっていた。当時の計画では、国会本館と憲政記念館、国会図書館にはさまれた国会参観バス駐車場にヘリコプター2機が駐機できる屋上ヘリポート(縦30m、横60m)を建設するなどの案があった。今回もこれを基に検討されるとみられる。
 なおヘリポート構想は首相官邸の改築計画にもあり、周辺施設との関係を考える必要がある。「本当に国会内にも必要かどうかを、よく検討すべきだ」(新進党議員)との声も出ている。(毎日新聞、95.2.3) 

◎ 消防・防災ヘリコプターは現在35機
 消防・防災ヘリコプターは現在、18都道府県に35機しかない。これを増やすには1機5〜6億円の導入費用がかかる。完全な防災対策を求めれば、予算は際限なくふくらみ、結局は国民の負担増になる。(日経、95.2.3) 

◎ 助かったはずの人が死亡
 東灘区の東神戸病院では17日、緊急に手術すれば助かったはずの患者が2人死亡した。患者を搬送するのはヘリコプターに頼るほかはなかったが、ヘリコプターの出動はどこに要請すればよかったのか。生存率の高い時間帯をゴールデンタイムと呼ぶが、それは地震発生から72時間以内。その間に高度な医療が可能な機関への患者搬送体制の確立が課題。(日経、95.2.4) 

◎ 積極的なアクションを――グレゴリー・クラーク(上智大学教授)
 地震の被害をテレビで見ていて、救援活動のおくれに怒りを覚えた。わたしの母国オーストラリアでは、遠く離れた山火事でもすぐに消防自動車やボランティアが出動する。ヘリコプターも火災現場に急行する。神戸では水がなかったというが、火災現場の近くには大阪湾があった。美しい海岸線に滅多にこない津波を防ぐためのコンクリートの壁ができているが、そのほんの一部の資金を使って緊急用のポンプを設置していたら、神戸の火災の大部分を防ぐことができたのではないか。

 日本が地震予知の設備に何十億ドルもかけていることは、アメリカではまったく非科学的だと笑われている。 日本人は予期せぬ事態に対処することは苦手だ。西欧では災害が起こると「アクション・コミティ」(行動委員会)がつくられるが、日本では「リアクション・コミティ」(対策委員会)がつくられる。(週刊東洋経済、95.2.4) 

◎ 防衛庁、ヘリコプター用消火装置も導入
 大災害への対応について見直しを進めている防衛庁は、2月4日までに新たに災害対策向けの装備も導入する方向で検討に着手した。具体的には、現地の状況を正確に把握するための映像伝送装置、ヘリコプター用消火装置、病院船の導入など。
 自衛隊は本来の任務が「防衛・治安出動」であることから、災害対策は現有装備の範囲内で対応することを原則としてきた。しかし、阪神大震災で自衛隊の救援能力向上を求める声が急速に高まったため、必ずしも防衛目的に合致しない装備も導入をはかる方針を固めた。
 これに関連し、玉沢防衛庁長官は偵察用ヘリコプターで撮影した映像をそのまま東京の司令部に中継する映像伝送装置を陸上自衛隊の各方面総監部に配備する方針を表明。七年度補正予算に盛り込みたい考えだ。(時事通信、95.2.4) 

◎ 「日本版」FEMAの設置検討
 2月5日、五十嵐官房長官はNHKの報道番組で、地震など大災害への即応体制の強化に関連して、「米国の連邦緊急管理庁(FEMA)のウィット長官と会って大変勉強になった。われわれとしても、そういうものを是非つくりたい」と述べ、FEMAを参考にした危機管理専門の常設機関の新設を前向きに検討する考えを示した。また五十嵐長官は気象庁に災害観測のヘリコプターが一機もないとの指摘に対し、「検討してみたい」とヘリ導入に前向きに取り組む姿勢を示した。(時事、95.2.5) 

◎ 車両からヘリコプター管制
 阪神大震災の被災地に派遣された陸上自衛隊が、活動内容を人命救助中心から、本格的な生活支援や復旧・復興作業に広げつつある。そのひとつ、陸自中部方面航空隊の管制気象隊は神戸市灘区の王子競技場内に車両搭載型の管制機器を持ちこみ、物資輸送などで神戸の上空を飛び交う1日約 110機のヘリコプターの交通整理をしている。(朝日、95.2.5) 

◎ ヘリコプターに関する議員提言
 国会では災害対策に関して連日論議が続いている。その中で、大規模火災に対してはヘリコプターで消火する体制を整備したらどうかという提言が出たが、野中自治相は、〕効に消火作業をおこなうためには相当数のヘリコプターが必要、▲悒螢灰廛拭爾砲茲詆で却って火災を広げる可能性がある、M邁爾靴真紊里燭瓩肪肋紊乃濬を求めている人が危険にさらされる、などの問題点を指摘した。
 また一定基準以上の地震が発生した場合、自衛隊ヘリコプターが緊急発進するスクランブル体制を取ったらどうかという提言に対して、五十嵐官房長官は「自衛隊だけでなく、警察、消防のヘリコプターも一斉に飛び立って情報収集に当たるシステムを検討したい」と答えた。ただ実際にスクランブル体制を取るにはパイロットや整備士を常時待機させる必要があり、相当の予算措置が必要になる。(朝日、95.2.5) 

◎ 官邸の災害即応体制づくり
 政府は首相官邸の災害情報収集体制の見直しを急いでいる。その中には、一定規模以上の災害が発生した場合、自衛隊、警察、消防が自動的にヘリコプターによる視察と警戒活動をする計画で、映像伝送装置を整えて災害の規模を即座に送るシステムも検討中。(日経、95.2.6) 

◎ ヘリコプター営業を強化
 阪神大震災の教訓から、自治体や企業の間で消火・救難用ヘリコプターに対する関心が急速に高まっている。川崎重工は営業体制の強化を予定し、仏ユーロコプター社もタンクを装備したヘリコプターの受注活動に力を入れている。また救急救命設備をそなえたヘリコプターなどを配備する動きも加速されそうだ。(日経産業、95.2.7) 

◎ 被災地のヘリコプター騒音
 2月7日、衆院地方行政委員会で、阪神大震災発生直後に殺到した行政機関や報道各社のヘリコプターの騒音で倒壊家屋の下敷きになった被災者の声が聞こえず、救助活動の妨げとなったとされる問題が取り上げられた。
 野中自治相は「被災者の声がかき消されて聞こえなかったと、現地の消防団員から耳にした」と述べるとともに、震災への初動対応を再検討する中で、(麁撒ヾ悗紡个垢觴荳猗行の自粛依頼、飛行規制も可能な法律の整備など、ヘリコプター騒音対策を考える必要性を認めた。
 災害対策の専門家によると、米連邦緊急事態管理局(FEMA)の場合、大震災直後は取材用ヘリコプターの飛行を禁止、行政機関のヘリコプターも被災状況把握に必要な最小限度に制限している。(共同通信、95.2.7) 

◎ 社説――柔軟に災害対策を考えよ
 阪神大震災への初動の遅れを指摘された防衛庁が、大規模災害に対する活動の在り方を検討することになった。
 現在の自衛隊法第83条には、‥堝刺楔知事らから要請があれば、部隊を派遣することができる、△箸に緊急を要し、要請を待ついとまがない時は、要請を待たないで派遣できる、B蘯砲覆匹龍疥戮悩匈欧発生した時も、部隊を派遣できる――と規定されている。
 今回の震災に対して「自衛隊は超法規的に出動すべきだった」などといった意見が出ているが、シビリアン・コントロールの観点からも「超法規的な出動」を求める意見は行き過ぎだ。現実に自衛隊法第83条には上記△竜定があるのだから、これを使っていれば、もっと迅速に出動できたはずで、このため防衛庁は現行の法制自体には問題はないとの考えから、法改正や新規立法はせず、自主的に出動する場合の判断基準を政・省令で明文化する方針という。
「緊急時」という一時の興奮から、自衛隊の大規模部隊を無制限に出動させるべきだったと短絡的にいうのは避けるべきだろう。その意味で防衛庁が「現行の法律の枠内で」との姿勢をとっていることは支持できる。
 このほか防衛庁は、情報収集体制の強化、自治体との防災訓練の充実、救難・救援に必要な装備についても研究するという。今回、初期情報の伝達という面で防衛庁・自衛隊が万全の体制だったかというと首をかしげざるを得ない。震災当日の午前7時14分、陸上自衛隊のヘリコプターが神戸市や淡路島を偵察して8時50分に帰還、「相当程度の被害が出ている」と中部方面総監部に報告している。ところが、この情報がその段階でストップしてしまい、首相官邸はもちろん防衛庁長官、国土庁防災局にも届かなかった。
 自衛隊側は、災害対策基本法など現行マニュアルに従ったというが、人命の救助、被害の拡大防止のため、こうした情報を東京に伝えるべきだったのではないか。(毎日、95.2.7) 

◎ 八尾空港整備などを緊急要望
 2月8日、大阪府市長会は、小里地震対策担当相に八尾空港を西日本の広域防災基地とすることなどを求める緊急要望を行うことを決めた。(時事通信、95.2.8) 

◎ 災害に強い自衛隊にするには
 防衛庁は阪神大震災での自衛隊の活動を検証し、大規模災害に備える態勢を再検討する方針を決めた。教訓を生かして態勢を整えることは、防衛庁ばかりでなく、地震国の政府全体として取り組むべき重要課題である。
 その際、何より大事なことは、ありのままの事実を調査し、公表することだ。そして、明らかになった問題の原因や背景を、官僚組織の利害や責任問題を離れ、自衛隊の機能を災害に有効に活用する立場から、冷静に分析する必要がある。
 自衛隊側の態勢にも反省が要る。被災地周辺の駐屯地が直ちに動き始めたにもかかわらず、陸上自衛隊の中部方面総監部をはじめ、部隊指揮の中枢による被害の規模や救援の出動についての正確な判断が遅れた。情報の分析や伝達もうまくゆかなかった。偵察ヘリコプターが上空から被害を目のあたりにしたが、その程度を正確に見積もることができなかった。ヘリコプターからの映像を直接首相官邸に送る機能を備えていればという指摘もあるが、それを分析する態勢が伴わなければ意味がない。
 自衛隊が自主的に出動できるように権限を強化すべしとか、災害派遣を自衛隊の主要任務とすべきだというような、自衛隊法改正を求める意見が出ている。だが、災害派遣は、すでに実質的な本務とされているし、派遣の根拠となっている自衛隊法83条は、自治体からの要請を受けてはじめて出動するという原則に立ちながらも、柔軟な運用が可能だ。
 災害に強い自衛隊にするには何が必要か。自衛隊の装備や配置、訓練、指揮通信を、災害対応型に転換する努力である。いま作業が進められている防衛計画の大綱の見直しのなかで、震災への対処を新たな柱のひとつにすることも考えられよう。とはいえ、自衛隊さえくればという考えは、法的にも実体的に無理がある。災害に対処する第一義的な責任は、自治体や消防、警察にある。(朝日、95.2.8) 

◎ 大災害時の統合的な指揮――佐々淳行
 災害行政は今、自衛隊を主軸とする抜本的な改善を迫られている。本質的には国土庁は経済官庁である。自衛隊、警察、消防、海上保安庁という系統を異にする実力部隊を指揮して、人命救助、消防、避難誘導などの災害措置ができるだろうか。阪神大震災の現場では、統括指揮にあたる総司令官不在の混乱が起きてしまった。
 自衛隊が自主出動すればよかったとの意見も聞かれるが、シビリアン・コントロールの大原則に反する誤った議論だ。問題は知事の要請が遅れたり、要請がなかった場合、いかにして合法的に出動させるかという方法論である。
 そのためには自衛隊法第3条に災害出動を明記し、83条2項に人命救助など初動措置に関し、期間を限って「総理の命令出動」を書き加える必要がある。ハードウェアとしても超高層ビル火災などに備えて、15トンの海水を空中散布する改造大型飛行艇の再整備、科学消火弾の保有、ヘリコプター搭載画像伝送装置、車載汚水浄化装置、統幕用陸海空共通電波の確保が望まれる。(朝日、95.2.9) 

◎ 始動遅れたヘリコプター搬送
 地震のあと長いあいだ建物の下敷きになっていた女性が、骨盤骨折その他の重傷で県立西宮病院に運びこまれた。しかし点滴用の輸液は底をつき、人工透析も断水でできない。「空から運ぶしかない」というので、医師は西宮市消防局にヘリコプターの手配を求めた。
 しかしヘリコプターが病院近くのグランドに到着したのは2時間後。患者は10分足らずで大阪へ搬送された。なぜヘリコプターの手配に手間取ったのか。西宮市消防局は「実際に要請や訓練をしたことはなかった」という。
 その後、自衛隊ヘリコプターは兵庫県、消防ヘリコプターは神戸市が窓口となって、半月間にそれぞれ79人、77人の患者を搬送した。しかし地震発生の初日にヘリコプターで運ばれた患者は上の女性1人だけだった。(読売、95.2.9) 

◎ 飛ぶのにハンコが要る
 浜松市の聖霊三方原病院には全国でただ1機、救急専用ヘリコプターがある。1984年に導入されたもので、岡田真人副院長は地震後、兵庫県にヘリコプター利用の協力を申し出た。しかし返事がないため、1月20日自らの判断で被災地へ飛び、このヘリコプターによって7人の患者を岡山、三重の大学病院などに搬送した。
「民間ヘリコプターの飛行には事前に着陸場所の許可が要るなど制約が多く、県の災害対策本部に救援の依頼書を書いて貰った。しかし、飛ぶのにハンコが要るのでは救急とはいえない。救急車のように電話1本で動かせなくては」(読売、95.2.9) 

◎ 震災対策にさまざまなヘリコプター活用論
 2月9日、参院地方行政委員会で、国松警察庁長官は災害状況を早期に把握するため、ヘリコプターからのテレビ画像送信や衛星通信設備の拡充を検討していることを明らかにした。救助体制についても、レスキュー部隊の広域援助や大型ヘリコプターの大量輸送方式を導入する考えを示した。
 また野中自治相は政府内にヘリコプターの共同保有機構をつくる考えを表明した。
 一方、連立与党の「災害時の危機管理プロジェクト・チーム」は9日の会合で「震災時の取材ヘリコプターの騒音がうるさく、救援を求める人の声が聞こえなかった」との指摘を受けて、取材ヘリコプターの飛行規制と報道の自由との関係について検討していくことになった。(読売、95.2.10)

 ◎ 防衛庁が災害活動体制強化へ改善素案
 防衛庁は10日までに、阪神大震災での教訓を踏まえ、自衛隊の災害活動体制強化に向けた検討・改善素案をまとめた。報告書は‐霾鵑亮集・伝達・処理体制、⊆主派遣と自治体の派遣要請、7盈の充実など12項目。
 情報伝達では、発生当初のヘリコプターでの偵察情報について「大規模災害ではより高度な判断が要求されることも予想され、防衛庁や首相官邸に伝達するシステム構築が必要」と指摘。ヘリからの現地映像を即時に伝える「映像伝送装置」の各方面組織への配備検討を挙げている。
 自主派遣では「自治体の要請が原則」だが、一方で「自治体が体制を整えるまでに一定の時間がかかる」との経験から、計画策定までの間の出動について「自主派遣の実施基準の検討も必要」とした。都市部での消火については、空中消火が可能なヘリコプター約150機を保有しているものの、「安全面の配慮が必要」として、消防当局の判断にゆだねる考えを示した。(毎日、95.2.10) 

◎ 災害時の緊急措置を決定 
 2月11日、村山首相らは危機管理問題プロジェクトチームの会合を開き、当面の緊急措置として‥豕で震度5、ほかの地方で震度6の地震が発生した場合、自動的に自衛隊のヘリコプターが被害現場に飛ぶ、⊆衛隊機からの被災地の映像を直接受信する画像システムを首相官邸に設置する、情報を分析する災害専門官を内閣情報調査室に常駐させるとを決めた。(毎日、95.2.11) 

◎ 民間情報活用やヘリ緊急出動も−政府原案
 2月11日、村山首相は地震など大災害が発生した際の「災害緊急事態即応体制検討プロジェクトチーム」がとりまとめた最終原案を基本的に了承した。この中には一定震度以上の地震の場合、自衛隊を含めた各省庁のヘリコプターが緊急出動することなどが盛り込まれている。(時事通信、95.2.11) 

◎ 陸自大型ヘリコプター着陸できず
 兵庫県地域防災計画で災害時のヘリコプター着陸適地と指定されていた場所が被災地から離れ過ぎていたり、狭かったため、陸上自衛隊の大型ヘリコプターが使用できず、負傷者搬送が始まったのは翌18日からとなった。
 同計画の震災対策計画編(平成5年修正)によると、災害用ヘリポートとしてリストアップされている神戸市内の用地は新明和工業ヘリポートなど9か所で、災害発生直後から運用できるはずだった。しかし17日中にCH−47大型ヘリコプターが着陸できたのは須磨公園だけ。残りの4か所は地震による陥没、液状化現象などで使用不能となり、後の4か所は被災地から遠過ぎたり、用地が狭いなどの理由で対象外とされた。また、神戸ヘリポートも神戸大橋が通行止めとなって使えなかった。
 このため、陸自は独自に臨時ヘリポートを調査。神戸市内で25か所をピックアップしたが、自治体側との連絡などを終えて本格的運用を始めたのは18日以降だった。陸自幹部は「災害時の臨時ヘリポート選定が実情に合っていないのに加えて、通常時の自衛隊、自治体、住民間の意思疎通、訓練が遅れていた。こうした点が行き届いていれば、もっと迅速に救援活動できた」としている。
 神戸市消防局の定岡正隆航空隊長は「臨時ヘリポートを数多く指定し、訓練するといっても、航空法上の制約や騒音問題などがあって難しい。今後の復興に当たってオープンスペースを持つ防災公園を増やすことが必要」と話している。(共同通信、95.2.13) 

◎ 官邸の情報収集能力を強化
 政府は阪神大震災での初動の遅れを深刻に受け止め、首相官邸を軸に危機管理体制の再構築を急いでいる。当面、官邸の情報収集能力の向上を至上命題として‖莪貅‐霾鵑鯒聴するための通信・連絡網の確立、官邸の態勢整備、F盂嫋霾鹹敢瑳爾龍化が柱。
 今回の地震に際し、政府は対応の鈍さを批判された経緯があるため、村山首相の主導力を印象づける狙いで危機管理体制の見直しに躍起となっている側面もある。各種方策の中には応急的な部分も目立ち、政府部内には実効性を疑問視する声もある。
 このほかの対応策としては、防衛、警察両庁が保有する画像送信システム搭載のヘリコプターを緊急出動させ、官邸で被災状況を把握することになった。しかしヘリコプターからの画像は実際より被災程度が軽く見える場合があるとの指摘もあり、地震の規模によっては航空自衛隊のRF4ファントム偵察機を緊急発進させ、上空から赤外線写真撮影を行うことも検討している。ただ、偵察機からの航空写真は現像に時間がかかる上、解析に専門知識を要するという難点がある。(共同通信、95.2.14) 

◎ 自衛隊はそのとき
 阪神大震災で自衛隊のヘリコプターはどう動いたか。1月17日7時14分、中部方面航空隊のヘリコプターが八尾から離陸、8時半まで淡路島と神戸市を偵察。10時25分、姫路の第3特科連隊の幹部2人がヘリコプターで県庁に到着、県災害対策本部の会議に参加。また同日、八尾基地では患者の緊急輸送が必要になると見てヘリコプター数機を待機させ、千葉県木更津基地からはCH−47が8機投入された。なお、NHKは午前8時14分からヘリコプターによる現場中継を始めた。(朝日、95.2.16) 

◎ 震災マニュアルは企業主義から地域主義へ
 阪神大震災から1か月、企業は阪神大震災の教訓を生かした防災マニュアルの見直しを急いでいるが、これまでの生産性重視、操業確保といった企業中心のマニュアルづくりから、いかに地域に貢献するか、社員が市民としてどう行動するかというテーマが共通の課題として浮かび上がってきた。
 大手スーパーのイトーヨーカ堂では「通信手段の確保」などとともに、新たに「地域人、家族としての責任」という視点が浮かんでいる。同社では地震発生の場合、「家族を残し、出社するのが最善の措置なのか」「地域住民として被災地復興に尽力すべきでは」などの意見が出ているという。
 素早い対応が目立ったダイエーの中内功社長も、「今回の地震は想定以上だったが、ヘリコプターのチャーターなどマニュアル通りの行動に過ぎない」と、日ごろからの危機意識の重要性を強調する。
 また、新たに「企業の地域貢献」をマニュアルに加える企業が出ている。ある大手ビール会社では現在、「被災者に素早く飲料水を配るには」など、救援システムを検討している。(毎日、95.2.16) 

◎ 中国、「地震応急条令」を公布
 2月16日、中国政府は大規模な地震が発生した際の政府各部門の緊急措置を定めた「破壊的な地震に対する応急条令」をまとめ、公布した。迅速な救助活動によって被害の拡大を防止するため、各部門、マスコミなどが取るべき対応が明記されており、阪神大震災発生に伴う日本政府の対応のもたつきが内外で批判されたことなどを踏まえたものと見られる。
 この条令は全文37条。国、地方政府に対し、大規模被害をもたらす地震発生を想定した緊急対策計画の策定を義務づけたほか、発生時の対策本部の設置や交通、通信、衛生、産業、救助など部門別に対応措置を定めた。中でも「人民解放軍、武装警察部隊が応急作業の主力となる」と規定し、軍の役割を前面に打ち出したことが目立っている。(時事通信、95.2.16) 

◎ 八尾空港を広域防災基地へ
 2月16日、中川大阪府知事は阪神大震災の復興対策で亀井運輸相に会い、八尾空港を広域防災基地として整備したいと説明、国の支援を要請した。これに対し亀井運輸相は全面的協力を約束した。
 中川知事によると、首都圏には大地震が起きた場合、政府の対策本部となる施設や飲料水、食料の貯蔵庫などを備えた広域防災基地があるが、関西には同様の施設はない。そのため阪神大震災後、大阪府は八尾空港を広域防災基地として整備する検討を始めた。
 八尾空港は滑走路が1,190mと1,200mの2本。陸上自衛隊、海上保安庁、大阪府警、消防関係の各航空隊が常駐しているほか、報道機関など民間のヘリコプター、飛行機の基地にも使用されている。中川知事は広域防災基地に整備する際は、民間機の常駐を大阪空港に移転させる必要があるとの考えを運輸相に示した。(共同通信、95.2.16) 

◎ ヘリコプター救急は3日間で17人
 阪神大震災の被災地域の病院や非難所からヘリコプターで他地域の病院へ搬送された傷病者は、2月10日までの25日間に180人となった。使用されたヘリコプターは自衛隊や消防局のヘリコプターで、そのために一命を取り留めた人も少なくないが、地震発生後3日間の搬送は17人に過ぎず、残された教訓も多い。(読売、95.2.17) 

◎ 震度5でヘリコプターが緊急出動
 2月17日、政府は災害緊急即応体制検討プロジェクトームを開き、震度5(強震)以上の地震が発生した場合、自衛隊などのヘリコプターを緊急発進させ、上空から被害状況を偵察することなど「当面の改善策」を決めた。
「改善策」は、国土庁と並んで内閣情報調査室(内調)が首相への情報伝達の窓口となることを定め、気象庁、消防庁などの関係機関や、NTT、JR、電力会社など民間公共機関からの情報も入るよう改めた。(時事通信、95.2.17) 

◎ 災害時の情報ルート確立を正式決定
 2月17日、政府は阪神大震災の反省から、地震などの大災害発生時の初動態勢を確立するため、情報収集と首相官邸への連絡体制に関する緊急整備計画を正式決定した。全国で震度5以上の地震が発生した場合には、直ちに防衛、警察、海上保安庁などのヘリコプターや偵察機を現地に飛ばして被害状況を調査するなど、空からの情報収集に力を入れ早期に被害把握を図る。また、情報伝達のオンライン化、関係省庁の担当官で作る災害情報班の設置などにより、災害発生時の危機管理体制を強化する方針である。
 計画によると、内閣情報調査室に災害情報班(7人)を設置するほか、同室と首相官邸を国土庁、気象庁、消防庁、警察庁、防衛庁とオンラインで直結し、24時間体制で災害情報の収集、連絡に当る。自衛隊などのヘリコプターから映像伝送システムで被災直後の状況を受信する装置も内閣情報調査室に設置する。(読売、95.2.17) 

◎ 神戸市消防局、空からの情報収集態勢を強化 
 阪神大震災では道路網の寸断で空からの情報収集だけが頼りだったが、神戸市消防局のパイロットは4人で通常の日勤体制を組んでいたため、消防ヘリコプターが活動を始めたのは発生から3時間以上も経ってからだった。消防ヘリコプターは東京都と政令指定都市が備えているが、パイロットが24時間態勢の自治体はほとんどなく、大規模災害時の情報収集力が共通の課題となりそうだ。
 同市消防局の消防機動隊が備えるヘリコプターは2機。大規模火災時の調査や山林火災の消火、救助などに従事している。夜間飛行ができないため、4人のパイロットは通常の日勤体制を取っている。
 地震が発生した1月17日午前5時46分は、パイロット不在の時間帯。発生後、パイロットはそれぞれ車や単車でポートアイランドのヘリポートに向かったが、行く手を液状化の泥などにはばまれ、最初に到着したのは、午前8時半。格納庫からヘリコプターを引き出し、実際に飛び立ったのは、午前9時24分だった。
 この間、神戸市は午前7時に災害対策本部を設置。情報収集を始めたが、車による収集は、道路の寸断で思うにまかぜず、ヘリコプターからの無線による連絡で、初めて鉄道や高速道路崩壊などの全容をつかんだ。
 火の手が上がらない家屋倒壊などの被害規模も、ヘリコプターからの報告があるまで実態がつかめず、市消防局も「結果的に、大阪などへの救助活動の応援要請にも時間がかかった」としている。
 同市消防局は、夜間飛行はできないにしても、「空白の時間」をなくすためパイロットの24時間待機態勢の検討を始めている。そのためには少なくとも2倍の8人のパイロットが必要で、同局は「情報収集の強化は必要だが、ベテラン・パイロットがすぐに確保できるか探ってみたい」としている。(神戸新聞、95.2.18) 

◎ 阪神大震災――緊急取材報告会で意見続出
 毎日新聞が開いた阪神大震災の緊急取材報告会に参加した約300人のうち100人が政府や自治体などの対応、報道のあり方について意見を寄せた。
 救助の遅れや援助受け入れをめぐる混乱への不満が相次ぐ一方、「日本人のボランティア精神はすごい」など、市民の自発的活動をたたえる人が目立った。
 初期の国や自治体の対応の遅れについては大半の人が厳しく批判した。「政府の無能ぶりは情けないやら、あきれるやら。そのくせ、政党関係者が我先に被災地に行き、やれ、どの党が来るのが遅いなどと国会で言い合っているのを見て悲しくなった」と東京都世田谷区の女子学生(25)。
 衣類や食料などを兵庫県西宮市の被災地に届けたという文京区の男性(46)は「行政は人に冷たい。平時も非常時も同じマニュアルで動く自治体に激しい怒りを覚える」と書いた。神戸市出身の東京都日野市の主婦(51)は「激震の瓦礫(がれき)に埋もれ 救助待つ その身の上に人災地獄」と短歌を詠んだ。
 しかし、「いつまで政府、自治体を責めるより、これからどうするか前向きに考えなければ」「行政システムの実情を知らなかった国民にも責任がある」などの冷静な意見もある。
 自衛隊については「出動が遅れたことは許せない」「『国家』を守る軍隊から『生命』を守る救助隊につくりかえるべきだ」などの批判の一方、「活動はもっと評価していい。自治体は自衛隊を批判するより感謝すべきだ」と評価が分かれた。
「実体のない『安全神話』で世間をあざむいてきたゼネコン(総合建設会社)、建設省の責任を追及すべきだ」「ロサンゼルスの地震のとき、日本は絶対大丈夫だと言っていた学者や関係者は高速道路、新幹線の壊れ方をどう説明するのか」など防災対策への批判も強く、マスコミに対しても「ヘリコプターの音で救いを求める人の声が消され、救助が遅れた可能性もあるのではないか」「共同取材はできなかったのか」と、取材のあり方への疑問が出された。(毎日、95.2.18) 

◎ 非常対応徹底研究――佐々淳行・小川和久
 八尾空港からは7時すぎに自衛隊のヘリコプターが飛んで偵察をしている。が、ヘリコプターから撮ったビデオは振動が激しくてほとんど役に立たない。真上から撮った写真でないと作戦計画上の基本地図にはならない。その意味でRFファントムを茨城県百里基地から発進させる。これは戦闘機を改造した偵察機で、阪神上空まで30分しかかからないうえ、正確な航空写真を高度1万辰濃1討任る。
 災害現場では観測ヘリコプターを飛ばして継続的な監視をする必要がある。また青森県三沢基地のE2C早期警戒機を飛ばして、神戸上空に殺到する救援や取材のヘリコプターをコントロールする。
 E2Cが到着するまで、監視ヘリコプターを中心に初期消火に努める。自治体が持っているヘリコプターからの消火装備を使えるようにする。パイロットたちは、17日午前7〜8時の段階で、水のうを使った初期消火は可能だったといっている。
 ただ現実には、自衛隊側の出動打診を神戸市側が断ったという。というのは消防関係者は、ヘリコプターが移動しながら水を撒いていく「散布消防」だから、相当の水を撒かないと駄目だと思っている。しかし自衛隊パイロットの頭にあるのは「破壊消防」で、大量の水や消火剤を一点に落とし水圧で火を消す発想だ。
 次に空挺レンジャーをヘリコプターで拾って、オノやツルハシを持たせて現場に降ろしてゆく。最初の段階で指示していれば午前7時や8時台で行けたはず。最初からヘリコプターの情報でコントロールしていれば、京都・大久保の施設隊を急行させて被災者を助ける可能性もあった。(サンデー毎日、95.2.19) 

◎ FEMA調査団が訪米     
 政府は21日、阪神大震災を契機とした国の危機管理体制見直しのため、米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)に調査団を派遣する。初動態勢の遅れを指摘された政府が、災害状況を瞬時に把握するFEMAのシステムを学ぶため。
 今月初めFEMAのジェームズ・ウィット長官らが来日した際、FEMAの「地理情報システム」(GIS)に日本側の関心が集中した。GISは地形や地質、人口集積度や建造物などの情報を集めたデータベースに、端末の地震計などから得た震度などの災害データを入れると、コンピュータで被害状況などを即座に弾き出すというもの。政府は「今後の危機管理体制の全体的な再検討の中で加えたい」考えで、今回の調査団派遣につながった。(読売、95.2.19) 

◎ ヘリコプターの臨時離着陸場のリスト削除
 2月18日、東京都地域防災計画の1992年の修正で、震災時の自衛隊ヘリコプター臨時離着陸場の適地リストが「新たな選定調査ができなかった」などの理由で削除されていたことが明らかになった。この結果、地震発生後に都と自衛隊が全くの白紙状態から離着陸場を決める方式に後退していた。阪神大震災ではヘリ離着陸場に関する調査不足が救援の遅れの一因になった。
 同計画は都、区市町村、国の行政機関などの責任者らで構成する東京都防災会議(会長・鈴木俊一都知事)が策定、数年ごとに修正している。自衛隊は、会議に陸自第一師団(練馬区)師団長らが参加。災害時には都内で最高6機のヘリコプターを救助などに使うことになっている。
 リストは、適地の所在地、管理者、広さなどをまとめた資料。63年の計画策定時から盛り込み、86年修正では千代田区の外濠公園運動場など野球場、小・中・高校、公園を中心に23区32市の123か所を指定していた。しかし92年修正では避難場所や区・市役所と近いなど、選定基準だけを残してリストを削除した。代わりにヘリコプターの各機種ごとに必要な広さなどをまとめた一覧表を加えた。
 都防災計画課と陸自第一師団の説明によると、適地の周辺にビルなどが建設されるなど環境が大きく変化、再調査が必要になったが、92年修正の作業に間に合わず、「リストに不適当な場所があるとかえって混乱を招く」と削除したという。しかしその後も調査や選定作業は行っていない。
 東京都の災害対策部長は「リストの削除は、選定作業時間の不足など技術的な問題。現在計画の見直しを行っており、臨時離着陸場の選定は重要な検討課題」と言う。また、陸上自衛隊は「細かい調査は自衛隊だけではできない。都と十分調整していきたい」と話している。(毎日、95.2.20) 

◎ 災害時の初動体制確立        
 政府は2月21日午前の閣議で、災害時の初動態勢を確立するため、危機管理に関する緊急整備計画を正式決定した。内閣情報調査室を窓口として24時間体制で災害発生時の被害状況などの情報収集にあたる、ヘリコプターや航空機を利用して空からの情報収集に努めるなどが柱で、同日から新体制をスタートさせる。
 計画では、全国一律で震度5以上の地震が発生した場合には、「航空機、船舶等を活用した活動を展開するなど情報収集活動を効果的かつ迅速に推進する」ため、防衛、警察、海上保安庁などのヘリコプターや偵察機を現地に飛ばして被害状況を調査するとしている。また、首相官邸への情報収集能力の強化では、内閣情報調査室が「民間公共移管等の一時情報の収集に努める」と強調。同室と首相官邸を、国土庁、気象庁、消防庁、警察庁、防衛庁とそれぞれオンラインで結び、24時間体制で災害情報の収集、連絡にあたるほか、東京で震度5以上、それ以外では震度6以上の場合、関係各省庁の局長クラスを直ちに首相官邸に招集する。 また、情報ルートの多元化、多重化を図るため、民間からも被害状況の情報提供を受ける。(読売、95.2.21) 

◎ 消防ヘリコプターにカメラ搭載 
 北九州市消防局は、消防ヘリコプターに搭載したテレビカメラで撮影した映像を、撮影と同時に地上のモニターへ映し出すテレビ電送システムを、4月に導入する。上空からのカメラ映像は消防指令センターへ電送され、3面あるモニターで同時に静止画像や資料映像も見ることができる。地上を走る情報処理車にも映像を送ることが可能で、災害現場での指揮などに役立つ。同市は、大規模震災への対応や台風の被害状況調査、山岳事故での救助活動などに活用したいとしている。(共同通信、95.2.23) 

◎ 阪神大震災のヘリコプター活動状況
 全航連の調査によると、阪神大震災で政府にチャーターされたヘリコプターは45機。物資輸送や人員輸送に稼働したのは94回であった。また震災現地でのヘリコプターの場外離着陸につき、申請手続きの簡略化を要請したところ、電話通報で処理することが認められたという。(日刊航空通信、95.2.24) 

◎ 埼玉県、ヘリコプター会社と防災協定へ
 埼玉県川越市は市内に基地を置くヘリコプター会社2社と災害出動に関する協定を結ぶ。災害が起こったときには、上空からの被災地状況調査と救援物資の空輸を担当してもらうのが目的で、協定の相手は朝日航洋とエース・ヘリコプター。これで災害発生直後でも、被害の実態を迅速に把握できるようになると期待されている。なお自治体が災害出動のために民間ヘリコプター会社と協定を結ぶのは全国で初めて。(毎日、95.2.24) 

◎ 自治省消防庁、緊急消防救助隊を創設
 2月25日、自治省消防庁はレスキュー隊や救急専門医、看護婦らをあらかじめ選定、登録し、大災害の初期救助活動に当たらせる千人規模の「緊急消防救助隊」を7年度中に創設する方針を決めた。阪神大震災で、初期の消火・救助活動が迅速に行われなかった反省から考え出したもので、来年度補正予算に経費を計上する。
 緊急消防救助隊は指揮本部要員、救助チーム、医療チームで構成され、うち指揮本部要員は現地の状況を把握の上、県や市町村の災害対策本部と広域応援の要請について連絡を取ったり、自衛隊、警察など応援部隊との調整に当たる。災害発生場所に応じて、近隣の大都市の消防本部2か所から、ヘリコプターで現地に飛んでもらう。(時事通信、95.2.25) 

◎ 社説――防災臨調で大胆な改善を
 阪神大震災への初期対応が遅れたことなどを教訓にした危機管理体制の見直し作業が政府・与野党内で進んでいる。その一つが2月21日の閣議で決まった「大規模災害発生時の第一次情報収集体制の強化と首相らへの情報連絡体制の整備に関する当面の措置」である。
 震度5(強震)以上の地震や火山の大噴火などが起きた場合、内閣情報調査室が気象、警察、防衛、海上保安、消防各庁からの情報を集約し、迅速に首相官邸に報告するというもの。また内閣官房副長官が、関係省庁の局長らを集め、さらには警察、防衛、消防、海上保安庁出身の専門職員による「災害情報班」が、ヘリコプターからのテレビ画像も含めた情報を分析・評価に当たるという。
 危機管理で最も優先すべきことは、事件や災害の全容を早期に、かつ適確につかむことだ。ところが阪神大震災では一番重要な情報収集が遅れ、自衛隊の初動問題に代表されるように首相官邸だけでなく政府全体の対応が後手に回った。
 現在のシステムでは、自然災害情報は、地元自治体などから国土庁防災局に集中し、さらに首相官邸に届けられる仕組みになっている。しかし今回は、地元自治体自体が被害にあったことや、縦割り行政の弊害などから、このシステムが機能せず、首相官邸が“情報過疎地”になった。「当面の措置」は、その反省からまとめたもので、いずれも、やって当たり前の措置ばかりである。
 ただ中身を詳細に見ると、どうも間に合わせの策であり、急場しのぎの感はまぬがれない。官僚による内部点検に終わっているのも不十分なところだ。肝心の縦割り行政の弊害も完全には解決されていない。逆に、この程度のシステムが、なぜこれまで作られていなかったのか、その方が不思議である。責任体制や緊張感の欠如、怠慢があったと批判されても仕方がないだろう。
 自然災害に対する危機管理を万全なものにするには、各省庁間の垣根を越えた横断的機能を確保するとともに、国、自治体、住民が一体になって取り組むという視点が重要だ。(毎日、95.2.26) 

◎ 災害時の危機管理中間取りまとめ要旨
 2月28日、与党の「災害時の危機管理プロジェクトチーム」は「災害時の危機管理についての中間取りまとめ」を発表した。その中にはバックアップ体制を強化するため、立川のような広域防災基地を関西などにも設置する。またヘリコプターなどの取材飛行が救助活動に支障をきたす場合は、代表取材など自主規制を要請することが含まれる。(毎日、95.2.28) 

◎ ヘリ偵察部隊の編成は急務――柳田邦男
 初動態勢確立のための情報収集するには、ヘリコプターによる偵察部隊の活動が必要。しかもヘリコプターに乗る隊員は災害について専門的な知識が必要。また空から見るだけでなく、ヘリコプターをどこかに着陸させて偵察隊員を何人か地上に降ろす。そして被災地の状況を無線で報告させる。(諸君!、95.3) 

◎ 首相官邸は情報の孤島――麻生幾
 1月17日、首相官邸は事実上、情報がくるのをただ漫然と待っていた。八尾から淡路島と神戸市の偵察をしたOH−6ヘリコプター2機は、被災地の状況を手持ちビデオで撮影したが、そのテープは長く放置され、東京に届いたのは午後3時過ぎであった。徳島県小松島の海上自衛隊からも午前8時11分、S−61ヘリコプターが被災地に飛んだが、この情報も当日は東京に上がっていない。
 さらに大阪府警、兵庫県警、徳島県警からもヘリコプターが飛んだが、それらが撮影したビデオテープも17日中には警察庁に届けられなかった。消防庁は地震発生から4時間半後の10時15分になって初めて、他府県からヘリコプターを出動させた。
 かくて日本の優秀な官僚システムは、未曾有の大震災という事実をつかむのに、まる1日以上を要した。国民の最大の不幸は、欠陥が露呈した行政機構の上に、リーダーシップのかけらもない首相を戴いていることだ。(文芸春秋、95.3) 

◎ 自衛隊アレルギーの結末
 中曽根元首相は産経新聞への寄稿で、昭和46年に防衛庁が策定した「東京大震災」のための対策を紹介している。道路の使用が望めないとして、予め都内の公園、校庭などに約 200か所の臨時ヘリポートを指定しておき、ここに救援物資の貯蔵所や診療所を設け、指令・連絡の拠点とする。この計画を、防衛庁は江東区で実施しようと提案したが、革新都政の美濃部知事から拒否された。
 もし神戸市が自衛隊と協議して、ヘリコプター重視作戦を採用していたら、生き埋めになった人びとの早期救出にどれだけ威力を発揮したか。今回の大震災を機に、日本には危機管理の法整備が全くないという異常さが露呈された。(文芸春秋、95.3) 

◎ なぜ救援ヘリコプターの出動は遅れたか――中野不二男
 地震発生直後、なぜ救助のヘリコプターは飛ばなかったのだろうか。上空を飛んでいたのは、なぜマスメディアのヘリコプターだけだったのだろう。公的機関がヘリコプターの動員を開始したのは20日になってからだが、なぜこんなに遅かったのか。
 最大の理由は法による規制である。法律がヘリコプターの足を引っ張っていたのではないか。
 しかし民間の動きはすばやかった。代表的なのがマスメディアである。またスーパーマーケットもすぐに駐車場をヘリポート代わりにして物資輸送をはじめた。
 公的機関のヘリコプター出動が遅れたのは、事前の準備がなかったからとしかいいようがない。そして今後も地方自治体の長や幹部に、ヘリコプターの活用という発想が浸透するかどうか。果たして、ヘリコプター活用の体制と、それをとりまく法は追いつくだろうか。(中央公論、95.3) 

◎ 防衛庁、災害時の自衛隊活動権限を拡大
 3月1日、防衛庁は阪神大震災の教訓を踏まえ、災害時の自衛隊の活動権限を拡大する方針を固め、災害対策基本法や自衛隊法など関係法の改正作業に着手した。自衛隊の救援活動を機動的にするため、‘始の障害物除去や通行制限、▲悒螢灰廛拭爾覆票衛隊機の安全確保のための飛行規制−−などの権限を盛り込む方針。与党の「災害時の危機管理プロジェクトチーム」も災害対策基本法改正による自衛隊の災害派遣時の権限強化を打ち出しており、防衛庁は国土庁などと調整のうえ、早ければ今国会にも改正案を提出する。
 自衛隊の災害派遣時の権限は、自衛隊法94条で警察官の職務を準用する形で危険地帯での警告や避難措置や人命救助のための土地や建物への立ち入りを認めている。しかし、この規定は「警察官がその場にいない場合」に限定されており、この条件を削除、より柔軟に活動できるよう改正する方針。
 また今回の大震災では、派遣部隊が交通渋滞に巻き込まれて現場到着が遅れたり、運輸省が自衛隊ヘリコプターの運航を優先させる航空情報を出すのが2日後になるなど、初動対応が思うようにいかなかった。ただ、阪神大震災で焦点となった自衛隊の自主派遣の明確な位置付けや、災害派遣を主任務とする自衛隊法改正については、「運用面での改善で対応できる」として見送る方向。(毎日、95.3.1) 

◎ ヘリコプター利用の中継方式――五嶋一彦
 通信ネットワークが破壊されたのは、NTTのネットワーク構築を担当してきた者の一人として痛恨の思いがある。これまで余りにも有線(光ファイバー)に頼ったからであろう。これからは無線系(マイクロウェーブ)や通信衛星の充実も必要だが、今回のような場合はヘリコプターによる中継方式を提案したい。必要な設備をヘリコプターにのせ、被災地の上空でホバリングさせる。地上の人は、この空中基地局を通じて、携帯電話で通話ができる。(週刊東洋経済、95.3.1) 

◎ 機敏だったダイエーの震災対応
 1月17日午前7時、東京浜松町のオフィスセンターに災害対策本部を設置、午前8時ヘリコプター、フェリー、タンクローリー、トラックを手配。午前11時ヘリコプターで対策本部員が現地へ出発、13時45分ポートアイランド到着、「現地対策本部」を設けて、復旧に向け活動開始。
 1月18日23時ヘリコプター3機の手配完了、1月19日ヘリコプターで伊丹空港から神戸市北区消防学校へ商品配送。
 ダイエーは緊急事態に対応するマニュアルを随時見直しており、現在のマニュアルは93年7月の北海道南西沖地震の経験にもとづいてつくられたもの。(週刊東洋経済、95.3.1) 

◎ ヘリポートのある官邸を
 今回の震災でつくづく恐いと感じたのは、東京の一極集中だ。首相官邸がやられたらどうなるか。今のままでは一番先につぶれる。ヘリコプターが縦横に離着陸できる、しっかりした官邸をつくるべきだ。(週刊東洋経済、95.3.1) 

◎ 大企業の危機管理対策
 イトーヨーカ堂は社会的責任として早期営業再開が使命。そのため物流にヘリコプターの活用などが求められるが、現行法規では無理な環境である。(週刊東洋経済、95.3.1) 

◎ 防災臨調委員に佐々氏らの起用固まる
 政府は国の防災体制の抜本的な見直しを検討するため「臨時防災調査会」(防災臨調)を発足させる。委員には佐々淳行・元内閣安全保障室長氏を初め、関本忠弘日本電気会長、飯田亮セコム会長らを起用する方針を固めた。防災臨調は村山首相の私的諮問機関となる見通しで、4月初めに発足、災害対策基本法見直しや危機管理などの協議に入る予定。(読売、95.3.4) 

◎ ヘリコプター事業会社の飛行状況
 3月8日、全日本航空事業連合会は、阪神大震災に伴うヘリコプター事業会社の活動状況を、1月17日〜2月15日について集計した。それによると、政府チャーター分を除いて、約1か月間の飛行時間は2,610時間、うち有償は2,280時間、無償飛行は330時間だったという。目的別の内訳は次表の通りだが、取材飛行が半分近くを占め、次いで視察飛行となっている。 

任 務

有  償

無 償

合  計

構成比

視察調査

397時間

81時間

478時間

18.3%

報道取材

1,140

5

1,145

43.9

人員輸送

179

24

203

7.8

物資輸送

246

136

382

14.6

写真撮影

187

1

188

7.2

そ の 他

131

83

214

8.2

合  計

2,280時間

330時間

2,610時間

100.0%

        (日刊航空通信、95.3.9)

 

◎ 横浜港に海上防災基地
 東京湾と関東一円の海上災害対策の拠点となる海上保安庁の防災基地が横浜の新港ふ頭に完成した。全国初の施設で、災害時に指揮を執る災害対策室やヘリポートを備える。この基地は敷地が約20,700屬如鉄筋コンクリート地下1階地上4階の陸上庁舎は震度7の激震にも耐えられる。総工費は約155億円。(毎日、95.3.15) 

◎ 全国各地の震災対策
 阪神大震災を受け、39道府県と9政令市が来年度予算案に新たな震災対策を盛り込んでいる。主な項目だけで総額 280億円に上る。ガレキに埋まった人を捜索するファイバースコープや、簡易トイレ、公共施設の耐震強化など、阪神大震災で浮かび上がった実戦配備型が目立つ。また防災ヘリコプターも人気。富山、滋賀、高知県が購入するほか、埼玉県は新たに1機増やし、和歌山県は購入予定を2年繰り上げて予算化した。北海道は補正予算に計上する予定で、広島県も導入に向け検討を進めている。(毎日、95.3.15) 

◎ 自衛隊偵察ヘリを自主出動へ
 政府は阪神大震災の教訓から、大地震の直後に、自衛隊機などを用いて被災情報を官邸に集めることを決めたが、現状では自衛隊機の航空偵察は災害派遣の一環とは認められておらず、航空法の規制で低空飛行ができないため、被災の状況がつかみにくい。このため、陸上自衛隊は偵察ヘリコプターに限り、都道府県知事の要請が必要ない「自主出動」をさせ、低空からの偵察ができるように検討を始めた。
 防衛庁は、2月21日の閣議決定を受け、震度5以上の地震では被災状況を確認するため偵察ヘリコプターを飛ばすことを決めた。ところが、実際に飛ばすとなると、航空法との調整が難かしい。というのは、航空法が通常の飛行では市街地上空 300m以下に高度を下げることを禁じているためである。捜索・救助を目的とする災害派遣では高度規制も外されるが、知事の要請を待たないで発進する偵察ヘリコプターは、法的には災害派遣とは認められない。(朝日、95.3.15) 

◎ 韓国で初の地震防災訓練
 3月15日、韓国当局は阪神大震災の教訓にかんがみ、8万人が参加する初の全国地震防災訓練を実施した。内務省によると、マグニチュード5以上の地震が発生したとの想定の下、全国393か所で、倒壊した建物に閉じ込められた人を救助犬を使って救出する訓練や高層ビル火災の消火訓練が行われ、ヘリコプター14機、消防車570台などが参加した。(時事通信、95.3.15) 

◎ 防災ヘリコプターの導入意向が増加
 阪神大震災に照らして、全国の都道府県で防災ヘリコプターの導入機運が高まっている。そのための費用が来年度予算に組みこまれている自治体は埼玉、富山、滋賀、和歌山、高知の各県だが、ほかに北海道、広島なども補正予算や調査の実施を考えている。(毎日、95.3.16) 

◎ ヘリコプターの取材規制、成文化に反対
 中央防災会議の専門委員会で被災地上空のヘリコプター取材規制について論議された。ある委員はメキシコ地震の人命救助に際してヘリコプターの上空飛行が一切禁止された。ヘリコプターの騒音は救出活動の妨げになるという意見を述べた。この問題は今後、マスコミと話を詰めていく必要があるが、防災基本計画の中で取材規制を成文化するのは反対というのが専門委員会の座長の見解である。(朝日、95.3.20) 

◎ 災害緊急極秘マニュアル
 政府は2月17日、「大災害における政府緊急対応マニュアル」を発表した。各省庁の局長クラスから成るプロジェクト・チームが1か月にわたって検討してきたものだが、詳細は極秘とされ、記者団に配られたのは1枚のペーパーのみ。その“極秘”マニュアルを入手したところ、第1次情報をいかに早く掴むかに狙いをしぼっている。そのため専用のマイクロ回線を確保することになっているが、報告を上げるべき現場の警察官は救出作業にすべてを割かねばならない。また被害地域の映像をリアルタイムで見るための「ヘリTV衛星通信システム」を整備することとし、すでに全国の警察ヘリコプター64機のうち26機がTVカメラを搭載している。また全国の消防ヘリコプター25機中11機と防災ヘリコプター2機もヘリTVの装備をしているが、今後さらに増やす予定。だがシステムをいくらととのえても、最後にはそれを扱う人の資質の問題に行き着く。宝の持ち腐れにならないか。(週刊文春、95.3.23) 

◎ 災害時の消防ヘリで応援協定
 東京消防庁と横浜、川崎、千葉の3市は4月1日付で消防用ヘリコプターの相互応援協定を締結する。これで知事や消防庁長官経由で応援を要請する手続きにくらべて、迅速で柔軟な対応が可能となる。同様の協定は大阪、京都、神戸、名古屋の4都市が結んでいる。新協定は消防組織法第21条の規定に基づき、火災や地震などが発生し、ヘリコプターによる消防活動が必要な場合、被災地の市長や消防長が他都市に応援を要請できる。応援経費のうち、人件費と燃料費、公務災害補償費などは応援側が負担する。(時事通信、95.3.23) 

◎ 震災3日間のヘリコプター
<1月17日>
05:46 地震発生。
05:55 陸上自衛隊八尾駐屯地、格納庫からヘリコプターを出す作業を開始。
07:14 八尾空港から陸上自衛隊OH−6観測用ヘリコプターが離陸、被災地を上空視察。「高速道路が倒壊している」と無線連絡し、ハンディ・ビデオで被害状況を撮影。出動要請がないため訓練名目。
08:00 ダイエーが地震対策会議。中内社長、販売統括本部長にヘリコプターで神戸へ飛ぶよう指示。おにぎり、弁当など1,000食分と簡易衛星通信装置を搭載。
08:11 海上自衛隊の救難ヘリコプター、S−61Aが徳島県松茂基地を離陸、淡路島の被害状況を撮影。しかし電送装置がないため、基地に戻って現像したのち岩国基地へ空輸、東京へ電送。午後2時頃、防衛庁へ届く。また厚木基地に空輸した写真は、そこから車で午後4時半防衛庁に到着。
09:30 神戸ヘリポートから神戸消防のヘリコプターが離陸。神戸大橋が損壊して車が通れないため、パイロットは徒歩でたどり着いた。
09:40 神戸消防のヘリコプターが上空から市長に「火災発生は20件以上。市の西部は火災がひどく、東部は家屋倒壊が目立つ」と報告。市長は直ちに県知事に自衛隊派遣を検討するよう電話で要請。
10:00 貝原兵庫県知事、自衛隊の派遣要請。
10:00 自治省消防庁は大阪、東京、名古屋、広島の消防局に応援を要請、5機の防災ヘリコプターの派遣を決定。
11:10 陸上自衛隊木更津基地から大型ヘリコプター2機が八尾空港へ向かう。
12:00 東京警視庁のレスキュー部隊など 150名がヘリコプター6機で出発。
12:06 千葉市消防局のヘリコプターが救助隊員5人をのせて出発。
12:45 東京消防庁のレスキュー部隊がヘリコプターで被災地へ出発。
午 後 防衛庁がヘリコプターによる航空消火の許可と消防当局が保有する消火剤の引渡しを自治省消防庁に求めたが、空からの消火断念の回答が翌18日午前8時にくる。
16:20 国土庁長官ら、ヘリコプターで被災地を上空から視察。

<1月18日>
07:02 大阪府和泉市から、陸自第37普通科連隊の293 名が大型ヘリコプター4機で王子競技場に着陸、東灘区のビル倒壊現場に向かう。
13:00 自衛隊員5,200名と陸自ヘリコプター65機が救援活動、物資輸送を開始。

<1月19日>
12:30 海自の応援部隊が呉基地からヘリコプターで神戸市へ向け出発。
12:59 村山首相がヘリコプターで現地を視察。「想像を絶する」と発言。
21:00 亀井運輸相が幹部職員を召集して、ヘリコプターを使った緊急輸送体制の整備を指示。(長谷川慶太郎『危機管理の鉄則』、95.3.27) 

◎ ヘリ取材規制に反対  
 3月29日、日本新聞協会の航空取材問題に関する小委員会は中央防災会議専門委員会に対し、防災基本計画の基本方針案に、災害時のマスコミによるヘリコプター取材を規制する内容が盛り込まれたことに反対する申し入れ書を提出した。基本方針案には、取材のヘリコプターの音などで救助活動に支障が起きるとの指摘を受けて、「発生後72時間程度は被災地上空からの取材の禁止、自粛を求める」という事項が盛り込まれていた。(読売、95.3.29) 

◎ 災害時ヘリ取材規制に否定的
 3月29日、国の防災基本計画の見直しを進めている中央防災会議専門委員会の末広座長は、災害発生時のヘリ取材規制が盛り込まれた問題で、規制に否定的な見解を明らかにした。日本新聞協会の「航空問題に関する小委員会」委員長が、規制反対の申し入れ書を渡したのに対し、末広座長は「状況に応じて報道機関と相談すべきで、あらかじめ規制を計画に盛り込んでおく必要はない」と回答した。(毎日、95.3.30) 

◎ 大災害時の相互支援で協定
 3月31日、近畿管内6府県警は、大規模災害の発生時などに、警察のヘリコプターを活用した府県間の相互支援体制を整備するため「近畿エア・ネットワーク協定」を締結した。被災府県からの要請がなくても支援ヘリコプターを飛ばし、情報収集活動などに従事させる。同管内には大阪府警の5機をはじめ、兵庫県警の2機など計12機のヘリコプターが配備されている。協定は、府県警ごとの輪番制による24時間の待機体制を規定。大地震などの災害発生時や航空機墜落などの際、府県境を越えてヘリコプターを飛ばし、被災状況を搭載テレビで各府県や管区警察局に伝送するなどの支援活動をする。(時事通信、95.3.31) 

◎ 近畿6府県警、ヘリコプター応援協定結ぶ
 3月31日、近畿管区警察局と大阪、兵庫、京都などの6府県警は、大災害、大事故などが発生した際の迅速なヘリコプター応援態勢の確立を柱とする「近畿エア・ネットワーク協定」を締結した。この種の協定は全国でも初めてで、4月1日から実施する。これまでは、災害が発生した府県警の要請を受けてから出動するシステムだったが、阪神大震災では混乱の中で兵庫県警の要請が遅れ、早い段階での上空からの被害状況把握などが進まなかった。協定では、1日ごとに当番の府県警を指定し、24時間態勢でヘリコプターを待機させ、災害発生の際には要請なしに出動、状況把握などに努める。応援ヘリコプターの増強が必要な時や、当番府県警管内で災害などが発生した時には、警察局が調整して別の府県警から迅速に応援出動する。(共同通信、95.3.31) 

◎ ヘリコプター着陸反対があった――渡部昇一
 自衛隊の動きが遅かったというが、非常事態で戒厳令的になることを恐れた社会党らの意見のために、自治体の要請がなければ動けないという、他国では例を見ないようなものになっていた。非常事態に動けるのは自衛隊だけである。軍隊は自己完結的に動けるのだが、その号令をかけることができるのは首相しかいない。しかし首相は社会党左派であった。そして号令をかけなかった。また、自衛隊のヘリコプターが学校の校庭に降りるのに反対する人もいたと聞く。(Voice、95.4) 

◎ 首相官邸は情報の孤島――田原総一朗
 地震発生後、当然のことながら、警察も自衛隊もただちにヘリコプターを飛ばして被災地の実態を把握していたはずである。プロたちならば、被害がテレビ報道よりもはるかにひどいことをつかんでいたはずだが、そうした情報が首相にはまるで伝わっていない。なんと首相官邸は、緊急時には情報の「孤島」になるという構造が今回の地震で露呈された。(Voice、95.4) 

◎ ヘリコプターによる患者搬送が不可欠
 4月8日、名古屋で開かれた日本医学会総会で「阪神大震災に学ぶ」と題する緊急シンポジウムがおこなわれた。多数の医師が地震のときの生々しい治療や検視の体験を発表したが、問題になったのはヘリコプターによる患者の搬送が十分できなかったこと。地震当日ヘリコプターで搬送された唯一の患者は、瀕死の状態から命を取り留めたが、「ヘリコプターがもっと使われていれば、もっと多くの人が救われたのではないか」という声が聞かれ、ヘリコプターによる患者の搬送が不可欠であることが確認された。なお兵庫県によると、1月末までのヘリコプター搬送は97件、患者数にして141人であったが、この間、延べ386機のヘリコプターが待機していた。(朝日、95.4.9) 

◎ 国会に緊急用ヘリポートを 
 4月14日、衆院運営委員会は緊急事態に備えるヘリポートを国会に建設するため、95年度補正予算案で調査設計費を要求する方針を決めた。素案によると、国会議事堂北側のバス駐車場の敷地に、大型ヘリコプター2機の発着が可能なヘリポートを建設するもので、災害調査のための緊急移動や外国からの賓客などを使用目的とする。建設費の概算は約13億 6,000万円で、97年度からの使用開始をめざす。(読売、95.4.14) 

◎ 建設省、全国1,700か所に防災拠点
 4月28日、建設省は阪神大震災の教訓を踏まえ、2010年頃を目標に全国 500か所を防災安全街区として整備するなど「震災に強いまちづくり構想」を発表した。この中には今後3年間で約 1,700か所を防災拠点として整備、ヘリポートなどの設置計画を含んでいる。(読売、95.4.29) 

◎ 政府の危機管理手引書明らかに
 4月30日、政府が大災害や地下鉄サリン事件などのような突発事件に備えてつくった危機管理マニュアルの内容が明らかになった。マニュアルは初動を重視し、災害発生から三時間以内に緊急即応体制をとることを決めている。マニュアルは阪神大震災を教訓にまとめたもので、災害や事件が発生した後、ただちに官房副長官を中心に関係省庁の審議官、課長クラスが連絡を取り合う。さらに内容に精通している関係省庁の担当者が内閣安全保障室の一室に集まって情報を収集し対応を協議する。官房副長官は第1報から順次首相に連絡したうえで、首相の指示を各省庁に伝え、事件の規模によっては局長級や閣僚が集まり、同時並行的に各省庁が対応準備や実行作業に入る。また不安解消のため、避難方法などについて報道機関や広報車で放送、ヘリコプターでビラ配布などをして知らせることになっている。(毎日、95.5.1) 

◎ 簡略化される災害時のヘリコプター手続き
 運輸省航空局は、大災害時のヘリコプターの活動を容易にするため、具体的な検討をはじめた。たとえば場外離着陸場については電話による事前連絡でも認めるとか、地対空の無線周波数の確保などが含まれる。併せて平常時の申請手続きの簡素化についても検討している。(日刊航空通信、95.5.9) 

◎ 消防庁、大規模災害対策に80億円
 5月10日、消防庁の「大規模災害対策特別事業」(約80億円)の創設が本年度第1次補正予算案に盛り込まれた。この中には「緊急消防援助隊」を都道府県に発足させる。全国39機の消防・防災ヘリコプターをパソコンネットワークで結び、一体的に管理するシステムをつくるなどの計画が含まれる。(共同通信、95.5.10) 

◎ カナダから空中消火専用機を売り込み
 阪神大震災を教訓に、日本が地震火災対策を強化するとみたカナダが空中消火専用機の対日売り込みに動いている。「世界唯一の大火災向け航空機」と銘打って官民合同で政府、自治体に接触し始めた。この専用機はボンバルディエ社製のCL415双発ターボプロップ水陸両用機で、海水や湖水を吸い込み、泡消化剤と混合、一回で6,000リットルの散布が可能。価格は約17億円。同社は「CL415を全国6か所に配備すれば、一時間以内にどこにでも飛んでいって消火活動ができる」としている。(時事通信、95.5.16) 

◎ 東海地震対策で300項目の行動指針
 5月17日、静岡県は東海地震への備えとして、阪神大震災の教訓を踏まえた行動指針「地震対策300日アクションプログラム」を発表、食料備蓄の強化や最新救助機材の導入、へリポートの整備などを柱にした緊急対策を実施することを明らかにした。同プログラムは、既存の同県地域防災計画の内容をより具体化したもので、300項目からなる。
 主な内容は、被災者77万人が3日間過ごせるだけの非常食を市町村に備蓄する。警察、消防などに救助者探索用のファイバースコープなど最新救助機器を導入する。防災拠点専用ヘリポートを県内4地域ごとに整備するなど。(読売、95.5.17)

◎ 「ヘリコプター消火は可能だった」
 阪神大震災でのヘリコプターによる消火は可能だった――長年ヘリコプターの運用に携わってきた地域航空総合研究所の西川渉所長が災害時のヘリコプター活用のあり方について提言をまとめた著書を出版する。
 『なぜヘリコプターを使わないのか――危機管理の核心』(中央書院刊、1,600円)では、ヘリコプターが最も得意とする人命救助に利用されていない現状を批判、ヘリコプターを使った防災・救急システムの早急な確立を訴えている。1994年の米ノースリッジ地震でのヘリコプター消火を引き合いに出し「ヘリコプター消火は可能だった」と結論づけている。そのうえで、ヘリコプター消火がおこなわれなかった理由として「準備不足」と「失敗を恐れる官僚体質」を挙げ、直ちにヘリコプター消火の研究に着手するよう提案している。(神戸新聞、96.2.1)

◎ 「建物火災には困難」
 阪神大震災で指摘されたヘリコプター消火の必要性については、東京消防庁が研究をはじめただけ。自治省消防庁は「建物火災を経で消すのは困難」として否定的な姿勢を崩していない。(神戸新聞、96.2.1)

 これらの記事を読み直して、いま私の腸(はらわた)は煮えくり返るばかりである。ヘリコプターが何もしなかったばかりに、無駄な命を喪くした人も多いはず。

 阪神淡路大震災の犠牲となられた6,432人の方々のご冥福を祈ります。

(西川渉、阪神大震災から5年、2000.1.17)

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