十八歳の愛人

第二話

 男は名を美馬みま藤臣ふじおみといった。
 東武デパートの社長であり、日本有数の財閥、美馬グループの一員だ。落ち着いた容貌から、三十代後半に見られることもあるが、つい先日三十歳になったばかりである。
 独身主義で、複数の愛人を持つが恋人はいない。彼にとって女は仕事で利用するか、単純に性欲処理のためだけの存在だった。
 彼が女に与える快感は、思う様に操って蹂躙したいがための呼び水に過ぎないと割り切っている。組み伏せる女に人格がある、などと思ったこともない。美馬は女を憎み、復讐のための行為としてセックスをしてきただけであった。
 
 そんな男が、愛実とのキスで妙な感覚に陥っていた。これまでどんな女に対しても、必要最低限の愛撫しかしたことがない。それが、だ――ふと気付くと、美馬は彼女を感じさせようと夢中になっていた。頬や耳、首筋に唇を這わし、愛実の幼い官能に火を点けていく。
 愛実が気付かぬうちに、ブラウスのボタンを三つも外して、ブラジャーをずらしていた。露になった真っ白い胸を美馬の手が優しく撫で擦る。
 まるで新雪のようだ、と美馬は思った。汚れ一つない雪の上を初めて踏み荒らす快感……。美馬は夢中になって揉みしだいた。
「あっ……あぁ……」
 愛実は美馬にされるがままである。二人は一気にベッドに倒れこんだ。

 美馬の手が再びスカートの裾から太腿を割っていった。強く閉じようとするので、瞬時にお尻の下に手をやり、下着を引き下ろす。
「あっ! やっ」
 間髪入れず、美馬は再び唇で抗議を遮った。その間も、スルスルと下着は下ろされ、片足から剥ぎ取られた。直後、愛実は足首を掴まれ――大きく左右に開かされる。不意に、美馬の目に無防備な下半身を晒され、愛実は慌てて大事な場所を手で覆った。
 だが、両手で隠そうとする愛実の姿は、逆に美馬の劣情を誘うだけだった。美馬は両膝で愛実の脚を押さえ、ズボンのベルトを外してファスナーを引き下ろす。
「あ……あの……待って。お願い、待ってください。やっぱり私、あの……」
 無言でズボンと下着を下ろすと、いきり立った男性自身が現れたのだった。
 未経験の少女でも、父親とお風呂に入り、目にしたことくらいはあるはずだ。だが、こういった興奮状態の男性自身とはまるで別物だろう。愛実は怖くなったのか、必死で首を振りはじめた。
「い、いや……やめて……いや」
「力を抜け。痛い思いはしたくないだろう?」
「やめてください。お願い……たすけて」


 美馬は一旦体を起こし、愛実から離れた。
「――レイプは主義じゃない。止めてもいいが、金が必要なんじゃないのか?」
 落ち着いた美馬の声に、愛実は現実に引き戻された。闇金の取り立て屋が待っている。返せないなら連れて行く、と言われた愛実だ。どうせ同じことをする羽目になる。
 愛実は両手を身体の横に添え、抵抗を止めて目を閉じた。
 そんな愛実の姿に、美馬は満足そうに肯く。そして、さっきまで彼女が必死に隠そうとした場所を、指でやさしくなぞり始めた。キスと身体へのタッチで、その場所はしっとりと潤っている。美馬は指を一本押し込んだ。愛実は身体の中に、もぞもぞした感覚を覚えた。そして二本目が入って来た時、愛実は奥の方に裂かれるような痛みを感じたのである。
「い、痛いっ」
  すると、美馬は引き寄せられるように、愛実の脚の間に顔を埋めていた。
「え? ……あ、やだ、見ないで……やぁ」
 見るどころでない。なんと、美馬は愛実が想像したこともないようなコトをしたのだ。愛実の大事な場所を、舌と唇で愛撫し始めた。舌全体を使って丁寧に舐めあげ、吸い付く。初めての行為で、言葉にし難い感覚に囚われ、愛実は力いっぱいシーツを握り締めた。


 美馬は、舌をすぼめて愛実の中に挿入するが――特別抵抗は感じなかった。このときすでに、美馬の分身は何の愛撫も受けてないのに、下腹に張り付くほどの力強さを見せている。唇を離し、代わりに怒張をあてがう。充分に潤っていたため、わずかな力でスッと潜り込んだ。そのままスルスル進んだが、途中で引っ掛かったようになる。
 どうやら、純潔は事実だったようだ。異物の侵入を拒む障壁を破るため、美馬は下半身に力を込めた。
「あっ! い……やぁ」
 根元まで挿入されたことを確認すると、美馬は少しずつ動き始める。その瞬間、ギシッとやけに大きな音が部屋に広がり……ラブホテルのベッドがそれに相応しい音を出した。
「ん、んん……あぅ……んん」
 愛実の口から漏れるのは、悦びの声とは程遠いものだった。唇を噛み締め、それでも堪えきれずに苦痛の声がこぼれる。
 この時、不意に美馬の動きが止まった。
「……痛むか?」
 愛実の目尻から流れ出る涙に、さすがの美馬も律動を止めたのだ。
「だい、じょうぶで、す。私は……」

 その瞬間、美馬は胸の下で震える少女に、恐ろしいほどの独占欲を抱いたのだった。処女を相手にするのが初めてだったせいかも知れない。
 女の身体に唇を這わすなど、汚らしいと嫌悪していた。それが……。美馬が初めて口にした、少女の汗や尿の混じった甘酸っぱい味が、どうにも忘れられなくなりそうだ。

(この娘の全てを知ってるのは自分だけだ。この身体は自分のものだ)
 ――美馬の胸中にそんな思いが溢れ返った。

 身体を重ねたまま、再びキスを繰り返す。美馬は、愛実の身体を隅々まで優しく撫で上げた。胸元に唇を這わすと、その先端は固く尖り、震えながらも美馬に快感を伝えて来た。それを口に含み、舌先でそっと転がす。
 気付くと、愛実の肌はピンクに染まり、頬は上気して荒い息を繰り返した。胸の突起を優しくノックするのと同じリズムで、愛実も腰を動かし始める。
「あっ……ああっ!」
「大丈夫だ。それでいい……俺に身体を預けてくれ」
 美馬は自分でも驚くほど優しい声で囁いた。そして、一定のリズムで愛実の身体を揺らし続ける。繋がった部分が弧を描くように、ゆっくり、ゆっくりと廻される。徐々に……徐々に、その部分が熱を帯びて、愛実の中が熱く蠢き始めた。それは、美馬がこれまで味わったことのない、奇妙な感覚であった。
「ああ……そうだ。いい子だ。不思議な感覚だろう?」
「や、だ……漏れちゃいそう」
「ああ、それでいい。構わないよ。漏らしてごらん……心配しなくていい。君は、素晴らしい感度だ」
「あ……ああ……あ、あ、あ……やあっダメぇ……クッ!」
 その瞬間、一気に愛実の中が狭まった。スッポリと納まっている分身が、突如吸い上げられ、奥へと誘われる感覚に美馬は驚きを隠せない。それはこれまで味わったことのない悦びを伴い……。愛実が初めての経験で絶頂を迎えると同時に、美馬も彼女の中で歓喜の時を迎えていた。全身を貫く快感に、美馬は愛実の奥深くで大量の精を噴き上げる。それは最後の一滴を出し終えるまで愛実を抱き締め、美馬は恍惚として悦楽に波に身を委ねたのだった。



 ラブホテルの室内に饐えた匂いが広がった。いやでもセックスの後を連想させる、淫靡的な匂いであった。
 一瞬意識が飛んだらしい。こんなことは美馬にとって初めてである。しかも、美馬はまだ愛実の中にいた。愛実に覆い被さったまま、激しい鼓動が治まるのを待つ。
 だが美馬より先に、愛実のほうが我に返ったようだ。仕方なく体を起こし、若干硬度の弱まったソレを愛実の中から引き抜いた。栓が抜かれた瞬間、たちまち白に破瓜の血が混じり、ピンク色に染まった粘着質の液体がシーツを汚す。
 それを目にして、美馬はハッとした。
 処女の彼女に病気の心配はないだろう。だが、当然ピルも常用してないはずだ。夢中になって避妊を忘れたのは、十五歳の時以来だった。
 愛人にはピルを常用させている。だが信用できないので、ゴムを併用していた。というより、そのまま挿入するなど、汚らしくて出来るはずがない。
 だが、愛実には何の警戒もしなかった。
 愛実はよほどショックを受けてるのか、ベッドに横たわったままだ。避妊のことなど念頭にもないようである。美馬は立ち上がり、ジャケットの内ポケットから財布を取り出した。
「まずは五万……後金だ。それと……」
 立ち上がる美馬につられて、愛実もベッドに身を起こした。そんな彼女の横に五万と、続けて財布から数十枚の札束を引き抜き、投げ置いた。
「朝まで付き合うならそれを全額やろう。三十万以上あるはずだ……どうだ?」


 お金は咽から手が出るほど欲しい。
 だが今夜は、例の闇金業者がアパートまで取り立てに来ているはずだった。自分が戻らなければ、弟が酷い目に遭わされる。或いは、十三歳の妹を連れて行かれるかも知れない。中学一年生の真美に、ついさっき自分が味わったような思いはさせられない。
「朝までは……無理です。電車もなくなるし」
「私が送って行こう」
「幼い弟たちがいるんです。ですから、朝までは」
「親はどうした? いないのか? この金は何に使うんだ?」
 矢継ぎ早に美馬は質問をぶつけて来た。
「それは……」
「いや、私には関係のないことだったな。――終電までにはまだ一時間ある。もう一度くらいは楽しめそうだな」
「あ……あの……私」
「もう一時間、黙って私に脚を開け。そうしたら後十万だ。一晩の援交にしちゃ、いい稼ぎじゃないか?」

 それは、愛実の中にいたときの美馬とはまるで違う口調だった。強引に始めたものの、途中からは愛実を気遣い、恋人同士のように優しかった。
(まるで、愛し合ったみたい……)
 愛実がそんな錯覚に陥るほど……通過した一瞬は痛みを覚えたが、美馬の腰遣いは絶妙だった。多分、耳元で「愛してる」と囁かれたなら、無条件で身体を開いてしまっただろう。
 でも、目の前の美馬は違う。彼の声は明らかに愛実を軽蔑していた。朱色に汚れたシーツの横に並ぶ一万円札が、ことさら愛実を惨めにする。そんなシーツを美馬の視線から隠そうと、愛実はそっと身体を動かした。だが、美馬はそれを了解と受け取ったのか……。

「あっ! 待ってそこは……やぁっ」
 美馬は再び愛実の脚の間に顔を埋め、自らが放った汚れを丁寧に舐め始めたのだ。愛実は固く瞼を閉じた。そして、良心の呵責に苦しみながら、美馬から与えられる身体の悦楽に堕ちていく自分を感じていた。

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